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起業のファイナンス-創業時の資金調達は融資が正解。借りれるだけ借りるべき?

2018年6月18日

資金調達を支援するファイナンスアイには、起業の夢を抱いて、ベンチャー・スタートアップや店舗等の独立・開業をしようと考えている方、これから創業される方、創業後間もない方からの相談が日々入ってきます。

その様な皆様から良く受ける質問に「創業時の資金は融資・借金をしてでも受けるべき?資金はあればあるほど良いものか?」というものがあります。これは質問をした方が、本質的に借入というものに恐怖感を抱いているケースが多いと感じます。

今回は、『経営者にとって融資・借金とは恐怖感を抱くべきものなのか』について、書かせて頂きます。これから起業を考えている方も、既に起業して経営者になられている方にとっても大切な事です。

前回の記事『起業のファイナンス-スポンサーの資金提供で起業するリスク』

 

1.融資・借金とは何か

融資・借金とは他人にお金を借りることです。当然ですが、決められた期日に返さないといけません。これは個人でも会社や経営者でも同じです。
では、『個人の借入(住宅や車等)』『企業や経営者の借入』は、同じ意味を持つのでしょうか。これは全く意味合いが全く異なります。

■個人の融資・借入について

個人の借入はその目的物が収益を生む事はありません。住宅、車、教育等々、自身の収入が増加することはありません。(収益物件への投資や資格取得等の自己投資は除きます)
そのため、個人の収入で返済が行えるか、つまり『(収入-生活費)>(返済)』を完済するまで維持出来るかがポイントになります。

当然、将来のことが今すべて分かるわけではありません。
会社の倒産や自身、家族のケガや病気等の理由で収入を維持できなくなるリスクがあります。個人の借入れが増加することは、将来の不安感となり恐怖感を抱くことになります。

■企業の融資・借入について

企業が行う事業の借入は収益を生むための投資を行うものになります。
『(事業の収入-事業経費=事業の利益)-(返済)』が行えるかがポイントとなります。

つまり、事業が成功する限り、言い換えれば事業の利益が返済を上回る限り、借入は何ら問題ないということになります。(※税金等は除いた議論とします)

このように個人の借入と企業の借入については、『収益を生むか生まないか』において、その性質が全く異なります。

2.事業における融資・借入の意味

事業で融資を受けて資金を借りるとはどのような意味を持つのでしょうか。
一番端的に説明すると「将来の利益を先取り」するという意味になります。これは借入の返済は将来の事業の収益から行われることになるためです。

「利益の先取り」を行う意味は、コツコツ資金を貯める時間を圧縮し、早期に事業を開始または拡大していくためです。

※また、実は企業経営において、個人家計の感覚でコツコツと資金を貯める事は、経営戦略上とても非合理的な場合もあります。

3.コツコツ資金を貯める事の非合理性

例えば、ある法人が新規事業を行うために年間1,000万円を5年かけて貯めようと考えた場合、毎年約30%が税金として持っていかれます。つまり、年間300万円が会社から資金流出することになります。

それと比べ、融資・借入の場合は、現在の一般的な事業融資の金利で考えると2%前後になります。(ざっくり計算すると、1,000万円の場合、利息は20万円です。)

■資金調達コストの比較

  1. 税金の場合 30%
  2. 融資の場合 金利2%

税金と金利の双方の資金調達のコストを比較した場合、融資・借入による資金調達の優位性は一目瞭然です。

また、事業自体にもリスクがあります。
現状のまま、投資を行わず5年間、計画通りに利益を出し続けられる企業は非常に稀です。経済環境の変化、趣味嗜好の変化、税制や政治の変化と企業自身が解決できる内部の問題以外にも経営環境を大きく変える要因が存在するためです。

もちろん、創業の自己資金を貯めるために、コツコツ貯める事は創業前においては最も重要です。

しかし、事業を開始した後に、コツコツ貯めていく調達方法は危険です。(※健全な財務状態を維持するための内部留保は必要です。)それは、安定した収益を計上し続けられる事が前提となっており、非常に不確実性がある資金調達方法になるからです。

4.資金は企業経営の万能薬

事業を開始した時点では、優秀な従業員や優良顧客に恵まれる事はまずありません。

創業して間もない会社の財産は、経営者の力量と熱意、そして資金のみです。
経営者がどんなに熱意があったとしても、24時間以上働く事は出来ません。経営者の努力には時間的な制約があります。これを解決するのが資金です。

資金を設備や給与、サービスへの対価等に変えることで、事業基盤を構築し利益を生み出す源泉としていきます。また売上が想定通りに伸びない等の不測の事態が起きた場合、事業を継続させるのも資金以外にありません。

このように経営者にとって資金は、設備や資産、人財、サービス、保全策等の何にでも変えれる万能薬となり得るものです。

5.資金は融資・借入してでもあればあるほど良いものか

最初の質問に戻りますが、答えははっきりしています。「YES」です。

但し、資金の「使い方」が最も大切になります。
資金の使い方には、綿密な計画と実行力が必要になってくるのです。これを誤ると事業自体が赤字や黒字であっても『(事業の収益)<(毎月の返済)』になります。この場合、主に以下の理由があります。

  1. サービスが周知されるまでの赤字
  2. 提供するサービス内容と価格やニーズの不一致
  3. 提供するサービス価格と販売件数の不一致

上記の場合、「1」を除いて「資金の使い方」に誤りがあるということになります。
「過大投資」や「マーケティング、出店用地選別の失敗」、また「少なすぎる資金による早期の事業縮小や撤退」等、事業の失敗と言われる原因に「資金調達を行い過ぎた」という理由はありません。

手元に資金が多くあることで、気持ちが大きくなって失敗する経営者もいます。それは資金調達に誤りがあるのではなく、そもそも経営者の資質を備えていなかったという事ではないでしょうか。

6.出資による資金調達について

資金調達の金額に関する重要性を説明してきましたが、では創業期において、返済の必要のない増資(直接金融)による調達は最も優れている方法なのでしょうか。
まず出資を受ける事とは、『会社を切り売りしている』という事です。ここを前提として十分理解する必要があります。

そして創業期は『最も事業価値の低いタイミング』になります。
この段階で会社の切り売りを行うということは、最も安く事業を叩き売っている事になります。

勿論、創業から数億円の投資を要する、また大手企業とのアライアンスが必須となる事業もありますので、一概に出資を受ける事の全てを否定する事はできません。
しかし、最近のスタートアップ等の起業ブームで、『創業期の増資=安全かつ評価されるべき資金調達』と安易に勘違いされている事は、非常に危険な話であると考えます。
事業会社、ベンチャーキャピタル、個人投資家等に経営権を取られている状態ならば、経営者と大手事業会社のサラリーマンとの間に実質的な差はないのではと私は考えます。

前回の記事『起業のファイナンス-スポンサーの資金提供で起業するリスク』

7.最後に

ファイナンスアイでは、一度ビジネスを失敗させた経営者が、再度起業してビジネスを立ち上げる際のサポートにも多数応じてきています。

再チャレンジする経営者は100%、「限界まで資金調達を行いたい。そのサポートをしてほしい」と言われます。
これは決して失敗した時の保険で資金調達を依頼しているのではなく、『資金がないと何も出来ない』という経営の本質が過去の経験から骨身にしみて理解できている為であり、私自身もそれが正しい方法であると考えております。

これから創業される方、または創業間もない方は、サラリーマンのように借金に対する恐怖感を持つことなく、自身の事業を信じ、その可能性を最大限広げるために積極的に資金を調達し投資を行い、確固たる事業を構築して頂きたいと思います。

■起業のファイナンス特集

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ファイナンスアイでは、これまで8,000社以上の個人事業主、株式会社、合同会社などの様々な事業形態に併せて融資や資金調達の相談に応じています。また、これから創業される起業家様に対しては設立支援などのアドバイスも可能です。経営者の皆様が創業融資などの資金調達を成功させられるように成功報酬でトータルサポートしています。企業再生を数多く手掛けてきたので、創業融資だけではなく、既に経営されている皆様の資金調達のお悩みにも対応できます。お気軽にご相談ください。

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記事・コンテンツの監修者

起業創業開業の資金調達コンサルタント

株式会社ファイナンスアイ(経済産業省M&A支援機関登録済)
代表取締役 田中 琢朗(たなか たくろう)

大手の金融機関・上場企業の財務部門責任者などを歴任し、2014年にファイナンスアイを創業。業界歴30年・創業10年のベテラン。中小企業・個人事業主・起業家と一緒に、現場で泥臭く汗をかいて靴をすり減らして財務を軸に経営者を支援し続け、のべ10,000人以上の圧倒的な実戦経験を持つ。ノウハウを「ファイナンスアイ式メソッド」として確立。中小にはびこる悪質なM&Aの被害をなくすために、M&A支援も本格化。売手・買手のいずれの立場からも真のM&Aを提供。現在も毎月150件以上の新規相談に対応し、毎週セミナーも開催中。日本経済のために今日も邁進しています。

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