個人で始めるM&Aとは?費用内訳や小規模案件の探し方、注意点まで解説

M&A・事業承継

個人で始めるM&Aとは?費用内訳や小規模案件の探し方、注意点まで解説

2023年12月21日

かつては企業対企業の取引というイメージが強かったM&Aですが、最近は個人でM&Aを通じて企業を買収し、経営者となるケースも増えています。

全国で経営者の高齢化により事業承継ニーズが増えているうえ、マッチングサービスや仲介サービスの普及により、以前より少ない負担でM&Aに取り組みやすくなったことが背景にあります。

今回の記事では、個人のM&Aが普及した背景や費用、進めるうえでの注意点などをまとめました。買収で事業を始めようと考えている方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

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個人M&Aとは

個人M&Aとは、文字どおり個人がM&Aを実行することを意味します。かつては企業と企業での取引が主流であったM&Aですが、最近では個人によるM&Aも少なくありません。

事業経営にチャレンジしたい方が中小企業を買収するケースや、個人事業主で営んでいたビジネスを法人に譲渡するケースがあります。

高齢化社会により、全国で後継者不足に悩む中小企業が増えているなかで、低リスクで事業経営を始める手法としてM&Aが注目されています。個人が企業を買収する場合は株式譲渡で実行できますが、個人事業を企業に譲渡する場合には、選択できるM&Aスキームが限られるため注意が必要です。

個人M&Aはなぜ増加しているのか

個人のM&Aが増加している理由は、大きく次の3点にあります。

  1. 後継者不足に悩む中小企業の増加
  2. 資産形成を積極化する個人の増加
  3. M&Aマッチングサイトの普及

全国の中小企業において、多くの経営者が後継者不足を課題としています。従来は、中小企業の多くは経営者が高齢化すれば、親族に継承するケースが多く見られました。

しかし少子高齢化により若い世代の親族がいないほか、価値観の多様化により後を継ぐ意志のない親族が増えたことなどにより、以前より後継者を見つけるのが難しくなっています。中小企業庁の2019年の調査によると、同族への継承割合はおよそ35%に留まっており、もはや少数派です。

そこで、M&Aを通じた第三者への譲渡を積極的に検討する高齢な経営者が増えています。なかには株式の価値が数百万円~数千万円程度の中小企業もあるため、個人がM&Aで事業経営に乗り出す機会は豊富にあります。

一方で、個人サイドの事情として、資産や投資の一環でM&Aを検討する方が増えたことがあります。今後年金の受給額は徐々に減少するおそれがあり、近年の社会人は積極的に資産形成を進める意識が強まっています。

投資信託や株式投資などの証券投資を積極化する一方で、資産形成の一環として企業を所有しようと考える方も少なくありません。買収した企業の事業を拡大させて、どこかのタイミングで引退できれば、まとまった老後資金を手に入れられるためです。

最後に、マッチングサービスやM&A仲介ビジネスの増加も、個人M&Aが増えた一因です。かつてはM&Aといえば、個人相手に事業をあまり行わないコンサルティングファームやM&Aブティックに相談が必要だったため、ハードルが高いものでした。

現在ではWeb上で手軽に案件を調べられるほか、専門家にも相談できます。そのため、以前よりM&Aは検討しやすく、個人にとって身近なものになっています。

企業によるM&Aとの違いとは

個人事業が売り手となる場合は、M&Aスキームの選択肢が限定されます。個人事業主は株式を発行していないため、株式譲渡ができず、事業譲渡を選択するほかありません。株式譲渡とは、株式を買い手に譲渡して経営権を明け渡す手法です。

一方で、事業譲渡は、金銭と引き換えに有形・無形の資産とともに対象事業の操業権を買い手に明け渡します。債務引き継ぎに別途契約が必要で、手続きが煩雑になりがちなうえ、売り手が所有していた許認可も引き継がれないなどの難点があります。

なお、個人が企業を買収する場合には、株式譲渡で実行可能です。金銭を対価に株式を譲渡する形式であれば、企業同士のM&Aと同じようなスキームで進められます。ただし、個人は株を発行できないため、株式交換など一部スキームは選択できません。

個人M&Aにかかる費用

個人がM&Aを実行するときには、大まかに次の費用が必要です。

  • 買収費用
  • 仲介手数料
  • 税金
  • 株券印刷代

買収費用以外にも、少なからずコストがかかります。M&Aの予算計画を立てるときには、付帯するコストを適切に見積もらなければなりません。

買収費用

買収費用は、買い手から売り手に企業や事業の対価として支払われるもので、M&Aにおける中心的なコストです。買収費用は、株式譲渡であれば売り手の企業価値、事業譲渡であれば事業関連の有形・無形の資産価値をもとに決定づけられます。

主に次の方法で、資産価値を算出します。

  1. マーケットアプローチ:株式市場などを参考にして企業価値を算出
  2. インカムアプローチ:将来的に獲得できる利益を評価して算出
  3. コストアプローチ:企業の資産・負債の価値から算出

実際には、これらの方法で算出した数値を総合的に勘案して資産価値を評価します。さらに、売り手・買い手および仲介会社を介した交渉のもと、最終的な買収費用が確定するのです。

個人M&Aの場合、買収予算が限られている方がほとんどのため、事業規模が小さく買収費用が小さい企業のなかから、将来性のあるものを適切に選別しましょう。

仲介手数料

M&A関連の支援企業や事務所へ、支援の対価として支払う手数料です。M&Aは税務や法務、金融関連の専門知識が要求されるため、仲介会社やコンサルタント、フィナンシャルアドバイザーの支援を得るのが一般的です。

仲介手数料は複数の項目で構成され、かつ会社や事務所によって費用体系が異なります。手数料体系を的確に理解して、不当な手数料を徴収されないよう注意しましょう。ここからは、多岐にわたる仲介手数料の内訳を紹介します。

相談料

相談料は、仲介会社や事務所に正式に支援を依頼する前段階の面談で発生する費用です。近年では無料となっているサービスが多いものの、数千円~1万円程度の相談料を取るケースもあります。

対面での面談の段階で発生するケースが多いため、電話やWeb上で連絡を取る時点で、相談料の有無を確認したうえで面談を設定するのがよいでしょう。

着手金

着手金は、M&Aに関する支援を開始する段階で支払うもので、一般には仲介手数料の一部を構成します。M&Aの、ノンネームシートをはじめとした各種資料の作成や、買い手・売り手探しなどを始める前の段階で発生するケースが多いです。

着手金は、その後M&Aの相手先が決まらず失敗に終わっても、返還されないのが一般的です。契約締結に至らずともM&A支援には少なからずコストと工数がかかるため、その対価の意味合いがあります。

一方で、近年は完全成功報酬制をアピールする仲介会社が増えています。その場合は着手金が無料か、もしくは成約に至らなかった場合に返還される形となります。完全成功報酬制の場合は、この後紹介する中間報酬や月次報酬も基本的には発生しません。

中間報酬

中間報酬は、ある程度M&Aの手続きが進捗した段階で支払う費用のことで、多くの場合はデューデリジェンス前に基本合意契約を締結するタイミングで発生します。基本合意契約には法的拘束力が乏しいものの、買い手が買収意志を示していることを意味しています。

売り手もしくは買い手との一定の調整を進めた対価として支払われるのが中間報酬です。そのため、デューデリジェンス以降で交渉が不調に終わり破談となっても、基本的に中間報酬は返還されません。

最低報酬

最低報酬は、仲介手数料で規模にかかわらず最低限発生する費用です。仲介手数料は、M&Aの成約金額に比例して発生するスキームになっています。

スモールM&Aや個人M&Aは規模が小さく、専門家の収益が小さくなってしまうため、最低報酬を設けているケースが多いです。最低報酬は、仲介会社や事務所がメインで手がけるM&Aの規模によってもことなりますが、1千万円以上の高額に設定されているケースも少なくありません。

そのため個人M&Aでは、最低報酬が低い専門家に相談するのが重要です。たとえば、中小企業の支援実績が8,000件超と豊富なフィナンシャルアイでは、報酬の下限が100万円~と低水準です。個人の予算の範囲内でも、丁寧にM&Aの実行を支援します。

月次報酬

M&Aの支援プロジェクトの期間を通じて、毎月発生する報酬です。M&Aは大型化すると支援期間も年単位など長期化するケースがあるため、その間の作業対価として発生します。

金額は数十万円~数百万円程度と幅があり、同じサービスでもM&Aの規模によって異なる場合もあります。また、どこからどこまで月次報酬が発生するかも専門家によるため、確認したうえで支援を依頼しましょう。

個人M&AやスモールM&Aに対応しているサービスは、短期間で完結するケースも多く、月次報酬がかからないものも少なくありません。ただし、その場合は成功報酬が高めに設定されている可能性もあるため、トータルコストを比較して合理的な水準の仲介会社や事務所へ依頼しましょう。

デューデリジェンス費用

デューデリジェンスは、基本合意契約を結んだ後に実行されるM&A対象企業への詳細な調査で、買い手が実行支援を依頼した先に費用を支払います。調査対象は、財務・法務・税務・人事などで、資産価値や経営における将来的なリスクを評価します。

デューデリジェンスは、最終的な買収価格を決めるうえでの重要なプロセスのひとつです。会計士や税理士、弁護士など複数の専門家を介して、時間を掛けて進めなければならないため、数十万円~数百万円の費用が発生します。

完全成功報酬制としている仲介会社を利用する場合、デューデリジェンスがその支援内容に含まれているか、しっかり確認しましょう。

含まれていない場合は、自分で専門家を探す必要があるため、デューデリジェンスについては別途コストがかかります。費用を抑えたい場合には、M&A仲介会社や専門家に相談して、リスク要因となりがちなポイントを重点的に調査するなど、やり方を工夫しましょう。

成功報酬

M&Aが成約したら発生するのが成功報酬で、多くの仲介サービスでは手数料の多くの部分を占めます。成功報酬は「レーマン方式」という料率で計算するケースが多くなっています。具体的には基準となる数値に対して、以下の料率を設定する方法です。

  • 5億円以下:5%
  • 5億円超え〜10億円以下:4%
  • 10億円超え〜50億円以下:3%
  • 50億円超え〜100億円以下:2%
  • 100億円超え:1%

たとえば、基準数値が6億円だった場合は、最初の5億円に5%、残り1億円に4%が適用されるため、成功報酬は2,900万円となります。注意すべきは、何の数値を基準に上記の料率を適用するかで、サービスによって以下のパターンがあります。

  • 譲渡金額
  • 企業価値
  • 移動した総資産

債務超過など特殊な例を除くと、譲渡金額より企業価値や移動した総資産の方が高額となる可能性が高いため、正式に依頼する前に料率体系を確認しましょう。

その他経費

ここまで紹介した費用に追加して、株式譲渡契約書・事業譲渡契約書・秘密保持契約書の作成費用などを請求する仲介会社もあります。一方で、月次報酬などに含まれているケースもあるため、報酬の範囲と発生しうる追加経費については事前に把握しておきましょう。

税金

事業や企業の売り手は、譲渡を通じて獲得した対価に税金がかかります。いずれのケースでも売り手が法人の場合は法人税と住民税、個人の場合は所得税と住民税が発生します。さらに事業譲渡の場合は消費税もかかるため、注意が必要です。

株式譲渡のとき

売り手が譲渡した対価として得た金額から、仲介手数料などM&Aの実行にかかったコストを差し引いた金額が譲渡所得(法人の場合には譲渡益)となります。たとえば経営者が個人所有した株を譲渡する場合など、個人譲渡では15.315%の所得税と5%の住民税が課されます。

法人の場合は、資本金の規模によって変わります。たとえば、資本金1億円以下の場合は34%です。(法人税、地方法人税、都道府県民税、事業税、地方法人特別税の合計)

事業譲渡のとき

事業譲渡では、譲渡する資産から負債を差し引いた金額が譲渡所得(法人なら譲渡益)となります。事業譲渡における個人の譲渡税は「分離課税」されるものと「総合課税」となるものがあり、やや複雑です。

建物と土地は「分離課税」で、以下の税率となります。

  • 所有期間が5年以内|譲渡所得×(30.63%+住民税9%)
  • それ以上|譲渡所得×(15.315%+住民税5%)

そのほかの所得は「総合課税」なので、ほかの総合課税の所得項目と合算した上で、該当する所得税率が適用されます。売り手が法人の場合にかかる税金は、株式譲渡と同じです。

また、事業譲渡では以下の課税資産に対して消費税がかかります。消費税も売り手が支払わなければなりません。

  • 有形固定資産(土地を除いたもの)
  • 無形固定資産
  • 営業権
  • 棚卸資産

株券印刷代

近年ではレアケースになっていますが、株券を発行する費用がかかる場合があります。古い企業などで定款に株券発行が必須となっていると、M&A実行のために株券発行が必要です。

専門の印刷業者などに依頼するため、数万円~10万円程度の費用がかかります。株券が不要な企業であれば、株券の印刷代は発生しません。

個人M&Aの小規模案件の探し方

個人M&Aの小規模案件を見つける方法には、次のようなものがあります。

  • 仲介会社を利用する
  • マッチングサイトを利用する
  • 日本政策金融公庫の事業承継マッチング支援を利用する
  • 事業引継ぎ支援センターへ相談する
  • 銀行へ相談する

ひとつの手法にこだわらず、いくつかの方法を組み合わせて魅力的な案件を探しましょう。

仲介会社を利用する

M&A仲介会社に支援を依頼するのが、基本的な手法のひとつです。従来は、事業規模が大きなM&Aを中心に取り扱うサービスが多かったのですが、近年では個人のM&AやスモールM&Aを積極的にサポートする仲介会社も増えています。

M&Aに関して専門性が高く、それぞれの買収ニーズや予算に応じて適切な企業を紹介してもらえるでしょう。一方で、仲介会社によっては高額な仲介手数料がかかるため注意が必要です。

とくに最低報酬が高額だと、M&Aの規模に比して手数料が高くなるリスクがあります。正式に依頼する前に、手数料体系やトータルコストをきちんと確認しましょう。

マッチングサイトを利用する

M&Aのマッチングサイトを活用すると、手間なく買収先を見つけられます。近年はWeb上で、機微情報を隠したうえで事業売却案件を掲載し、買い手を募るWebサイトが増えました。

Webサイトによっては小規模な企業や事業の譲渡も取り扱っており、個人でチャレンジしやすいM&A案件も少なくありません。対人の仲介会社と比べて、低コストで利用できるケースが多いのが利点ですが、サービスによって支援範囲や料金体系が異なるため注意しましょう。

あくまでM&Aの案件紹介に絞っており実行支援は一切行っていないサイトや、実際に案件を進める際には高額な手数料がかかるケースもあります。M&Aを進めたあとのことまで考慮して、費用対効果が高いサービスを利用しましょう。

小規模M&A案件はスモールM&Aとも呼ばれ、仲介会社やマッチングサイトの増加からもその注目度の高さが伺えるでしょう。

こちらの記事では、スモールM&Aの始め方や実際のプロセスについて詳しく解説しています。

日本政策金融公庫の事業承継マッチング支援を利用する

日本政策金融公庫の事業承継マッチング支援サービスを利用するのも、ひとつの方法です。日本政策金融公庫は、地域の中小企業や個人事業主の成長を支援する政府系の金融機関です。事業融資が主たる業務である一方、個人M&AやスモールM&Aを支援するサービスを展開しています。

とくに事業承継を実現させるためのM&Aを積極支援しており、個人が買い手として相談すれば、後継者不足に悩む中小企業とのM&Aを取り次いでもらえます。

日本政策金融公庫なら事業融資にも対応しているため、そのままM&A費用の融資相談も可能です。資金調達も含めてM&Aの準備を一気に進められるでしょう。

事業引継ぎ支援センターへ相談する

各都道府県にある事業引継ぎ支援センターへ相談して、後継者を探す中小企業を紹介してもらうのも一案です。事業引継ぎ支援センターは、後継者不足による課題解決を主な事業としている組織で、買い手の場合は無料で譲渡を希望する企業を紹介してもらえます。

それぞれ管轄は分かれているものの、譲渡を希望する企業のデータベースは全国で統一されているため、都道府県外も含めて魅力的な企業を探すことが可能です。金融機関OB、公認会計士や中小企業診断士など、M&Aに関する各方面のプロフェッショナルがアドバイスしてくれます。

専門家の知見を活かして、ニーズ・予算に合った中小企業を紹介してもらえます。なお、M&Aの実際の交渉や手続きの支援は、別途有料の仲介会社や士業事務所に依頼が必要です。

銀行へ相談する

銀行ヘ相談することで、銀行の取引先の伝手を利用して売り手企業を見つけられる可能性もあります。近年の銀行は、融資事業の傍らでM&Aを支援しているケースも少なくありません。

銀行は取引先との関係性や実績を重視するため、長年付き合いのある銀行に相談するのがよいでしょう。なお、全国に支店を展開するメガバンクは、預金事業以外で個人とのビジネスをあまり積極的に行っていません。

よほどの富裕層やメガバンクにリレーションを持つなど、特殊な事情がない限りは、まずは地銀に相談してみるのがおすすめです。地銀は、その地域の多くの中小企業と取引があるため、個人の買収対象となる小規模企業の情報も豊富です。

M&Aを実行する際に、必要に応じて必要資金の融資を相談できるのも、銀行へ相談するメリットといえるでしょう。

個人M&Aのメリット

個人のM&Aは、一定のリスクをともなう分、次のように多くのメリットがあります。

  • 低コスト・低リスクで事業を始められる
  • 従業員を引き継げるため人材育成を省ける
  • 一般的な起業より時間がかからない
  • 買主の特技や長所を活かして事業発展できる
  • 役員報酬を得られる
  • 不労所得が期待できる
  • 買収時よりバリューアップしたうえで売却もできる

ここから紹介するメリットに魅力を感じる方は、ぜひ個人でのM&Aにチャレンジしてみましょう。

低コスト・低リスクで事業を始められる

個人で起業するのと比べると、低コスト・低リスクで事業を始められるのが、個人M&Aの大きなメリットです。事業内容にもよりますが、個人がいちから事業を立ち上げるとなると、設備投資や仕入れなどに多額のコストがかかります。

売上が実際に発生するのは準備を始めてから当面先になるため、当初はすべてのコストを自己資金や融資などの借入で賄わなければなりません。

一方M&Aなら、すでに事業に必要なリソースは揃っています。実際に買い取るのは株式譲渡であれば株の部分だけなので、企業規模に関わらず、有利子負債がある分だけコストを抑えられます。

また、いちから創業する場合、ビジネスモデルがうまく機能せず失敗に終わるリスクが相対的に高いといえます。もちろんM&Aも失敗するリスクはありますが、すでに取引先、仕入れ先や製造・サービス提供のノウハウなどが揃った状態で事業を始められる分、相対的に低リスクで経営が可能です。

従業員を引き継げるため人材育成を省ける

個人M&Aを活用すれば、人材育成の手間が少なく済むのもメリットです。自分で起業する場合は、従業員を自分で雇って教育していかなければいけません。教育するためには費用と手間がかかるだけでなく、人材育成のスキルがなければ失敗するリスクもあります。

M&Aで企業を買収した場合、所属していた従業員はそのまま雇用を継続するのが一般的です。買収した瞬間から事業運営に必要なノウハウは揃っているため、人材育成をせずとも当面の経営を続けられます。現場の人材を有効活用しながら、時間を掛けて人材育成に取り組めるのです。

一般的な起業より時間がかからない

買収企業をスムーズに見つけられれば、起業をいちから準備するよりも迅速に事業経営を始められます。

起業では、ビジネスアイデアを考えて、資金調達、リソース確保、製品プロトタイプの開発を経て事業化します。売上が安定的に発生するまで、数年単位の期間を要するケースも少なくありません。

M&Aは、大規模な案件では1年以上かかる場合もありますが、個人M&AやスモールM&Aは相対的に迅速に完結し、半年程度で買収先の経営を引き継ぐ場合もあります。経営者の引退・事業継承が売り手の目的の場合は、売却価格に過度にこだわらない企業も多いため、相対的にスムーズに交渉や手続きが進められます。

さらに買収したのちは、既存の取引先・仕入れ先などのリレーションや顧客基盤、ブランドなどを引き継ぐことができます。株式譲渡の場合は、企業に紐付く許認可も引き継ぐため、速やかに事業経営を始めて安定した業績を上げられる可能性が高いでしょう。

買主の特技や長所を活かして事業発展できる

買主の特技や長所と、買収先企業の強みを組み合わせることで、事業発展が期待できます。個人の趣味やこれまでの経験などを企業経営に活かすことで、売上や利益につなげられるケースも少なくありません。

たとえば、飲食店の食べ歩きが趣味だった方が飲食店を買収して、メニューやサービスなど競合他店との差別化を実現できる可能性もあるでしょう。

異なる領域の組み合わせが事業発展につながる場合もあります。たとえば、IT・プログラミングの素養がある方が、老舗の小売業にECサービスを取り入れれば、事業拡大を実現可能です。

以上のように、買い手の個人と売り手企業の特性や強みを組み合わせてシナジーを発揮することで、事業成長を加速させられます。個人M&Aの買収先選びでは、自分の強みを活かせる企業を選ぶのがおすすめです。

役員報酬を得られる

個人M&Aで企業を買収したあとは、毎月役員報酬を得られます。ほとんどの場合、M&Aで企業を買収した人は、その企業の経営者すなわち社長となり、報酬を月給・賞与の形で受け取れます。

報酬額は企業の取り決めによりますが、一般の会社員よりは高額な報酬を得られる企業も多いでしょう。報酬は自分の生活費や貯蓄に充てられるため、当初から安定した生活が手に入ります。会社員の状態でM&Aを実行した場合には、脱サラして経営者に転身が可能です。

いちから起業した場合、利益が発生するまでは手元に資金は残りません。そればかりか、赤字を補填するために自己資金を拠出する方も多いのが実情です。役員報酬が得られるM&Aであれば、当初から安定した収入を得られる可能性が高まる点が魅力です。

不労所得が期待できる

不労所得を得る手段として、個人M&Aを活用する方法もあります。株式を保有して企業の所有権を持ちつつも、実際の経営は現場に任せることも可能です。その場合でも役員報酬として収入を受取れるほか、株式の配当という形式で利益水準に応じた還元を受ける方法もあります。

もし将来企業が成長して、新たな事業買収を持ちかけられたときやIPOが視野に入る状況になれば、保有する株式を譲渡・売却することで大きな収益を獲得可能です。

通常の株式投資では、ほとんどの場合投資先は上場企業に限定されます。しかしM&Aを活用すれば、非上場の中小企業への投資が可能です。

買収時よりバリューアップしたうえで売却もできる

経営者としての手腕を発揮して事業を拡大できれば、企業の資産価値を高めて売却することも可能です。非上場企業の売却手段としては、他社へのさらなるM&AやIPOなどがあります。

いずれのケースでも、既存の経営者や株主は大きな利益を上げられる可能性が高いのです。有価証券での投資とM&Aによる事業経営の大きな違いとして、経営に参加して能動的に価値向上を図れる点があります。

大企業の株式保有による議決権の影響はごく小さく、実質的には業績が上向いて株価が向上することを願うしかありません。M&Aを通じた事業経営では、自分の能力や強みを活かして、投資先の企業成長を積極的にリードできます。

個人M&Aのデメリット

個人で行うM&Aには、次のようなデメリットも存在します。

  • 手続きに大きな時間やコストがかかることもある
  • 簿外債務のリスクがある
  • 偶発債務のリスクがある
  • 買収先企業とのミスマッチのおそれがある

M&Aを実行するためには、これらのデメリットに留意して、企業選びや手続き・交渉を進めなければなりません。

手続きに大きな時間やコストがかかることもある

M&Aは起業ほどではないにせよ、手続きに時間やコストがかかります。時間でいうと最短でも半年程度かかり、費用は数百万円~数千万円程度は見ておかなければなりません。また、その間の手続きや交渉、資料のチェックや分析など、買い手本人の労力を要する点も忘れてはいけません。

時間については、まず売却を希望する企業を探すのに手間がかかります。マッチングサイト上には多数の案件があるように見えますが、買収価格や業種、経営状況など条件を絞っていくと、なかなか希望どおりの企業が見つからないケースが多いものです。

候補先を見つけたら、今度は直接交渉を進めていかなければなりません。基本合意を結んだあとは、緻密なデューデリジェンスが待っています。実際の作業は専門家に外注するにしても、一定の時間を要するのです。

また、売り手に支払う買収費用のほか、仲介手数料が重い負担となりがちです。資金計画をきちんと立てたうえで、リーズナブルな価格で対応してくれる仲介会社を見つけて依頼しましょう。

ファイナンスアイ
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ファイナンスアイなら、最低100万円~個人向けのM&Aを支援しており、買収後の経営支援や資金調達支援までワンストップで対応可能です。仲介会社選びに悩んだら、ぜひ一度相談してみてください。相談はコチラから。

簿外債務のリスクがある

中小企業の買収においては、簿外債務があとで発覚するリスクがある点に留意しましょう。簿外債務とは、帳簿に明記されていなかった債務のことです。

本来、もれなく記載する必要があるのですが、上場企業のように情報の透明性が高くない中小企業では、簿外債務が存在するケースは少なくありません。たとえば、次のような形で債務の記載漏れが発覚する場合があります。

  • 仕入費用の計上忘れ
  • 貸倒引当金の不足
  • 未払賃金
  • 退職給付債務の計上もれ

デューデリジェンスの段階で綿密に調査を進め、簿外債務を加味した買収価格でM&Aを実行しましょう。自己資金に余力を残しつつ、多少の簿外債務が合っても経営を維持できるような、財務に余力のある企業を選ぶのも重要です。

偶発債務のリスクがある

偶発債務の計上が不充分だったために、財務を見直したら想定より経営状況が悪化しているケースも考えられます。偶発債務とは、その時点では債務が発生していないものの、過去の取引やなんらかの事情で、将来発生する可能性が高い債務をいいます。

  • 他社への債務保証
  • 訴訟による損害賠償
  • 未払いの賃金や賞与
  • デリバティブ取引
  • 割引手形や裏書手形

偶発債務は、M&Aを実行した時点では計上する必要がない債務です。そのため、経営を引き継いだあとに債務が実現して、財務を急激に悪化するリスクがあります。

偶発債務による経営悪化リスクを防ぐためには、デューデリジェンスでしっかりとリスクをチェックしておかなければなりません。

買収先企業とのミスマッチのおそれがある

買収した企業とのミスマッチにより、経営が困難になるリスクもあります。従業員にとっては突然経営者が変わるため、前任と比べられたり、ベテラン社員が協力的でなかったりといった形で、組織運営に支障が出るケースが少なくありません。

また、社内はうまくまとまっても、取引先や顧客とのリレーションをいちから構築するのに苦労するケースもあります。自分が発揮できると思っていた強みが役に立たず、業績が悪化するリスクもあるでしょう。

M&Aは金銭の交換だけで完結するものではなく、人同士の関係をうまく築くことも大切です。金銭価値だけを見ずに、組織の風土や社員の雰囲気も加味して買収すべきか判断してください。事業を売却する前任者とよくコミュニケーションを取って、組織をよく知っておくのも大切です。

個人M&Aの注意点

個人のM&Aをうまく進めるためには、売買目的を明確にしたうえで、適した相手を選定することが大切です。

また、M&Aの円滑な推進や実行後の経営リスクを減らすうえでは、デューデリジェンスを丁寧に行う必要があります。買い手においては、買収後のPMIに気を配るのも大切です。

売買目的を明確にする

M&Aの検討に入る前に、売買目的を明確にしてください。買い手であれば、まず経営者になるのが目的なのか、不労所得を獲得したいのかで適した買収先は異なってきます。経営者になるならば、どのような事業を営みたいのか、どうやって自分の強みや経験を発揮するのかも整理が必要です。

売り手であれば、金銭を獲得するのが第一ではありますが、早期に売却する必要があるのか、価格にこだわるのか、獲得した金銭の使途は決まっているかなどによって、M&Aでこだわるべきポイントは変わってきます。

M&Aは手段のひとつであって、実行そのものを目的としてはいけません。必ずM&Aで何を成し遂げたいのか整理したうえで、準備を進めてください。

当初描いた目的に合っている売買企業を選定することが大切です。買い手であれば予算に見合っていて、かつ自分が理想とする事業を実現できる企業を選ぶ必要があります。もし投資家として所有権を得るなら、実質的な経営を任せられる人材の有無も確認しなければなりません。

売り手の場合は、自分が育ててきた事業を活かしてくれる買い手を見つけることが重要です。また、スピーディかつ魅力的な条件で買取ってくれる買い手の方が、目的を達成するうえでは望ましいといえます。

拙速な判断で失敗しないよう、仲介会社にも協力を受けながら相手企業を厳選してください。

デューデリジェンスを厳格に行うことは、買い手にとってはもちろん重要ですが、売り手にも誠実な対応が求められます。

デューデリジェンスは、資産価値を適正に評価し、さらに簿外債務・偶発債務などM&A実行後の経営リスクとなる要因を減らすうえで大変重要です。専門家への報酬などがかさみがちですが、手を抜くと後々の企業経営に重大な支障をもたらす原因になるおそれがあるため、丁寧に進めましょう。

また、売り手は買い手の要望に誠実に応じる必要があります。買い手が求める資料提示を拒否したり、問い合わせに適切に対応しなければ、不信感を持たれて買収価格が引き下げられたり、最悪の場合破談となったりするおそれがあります。

また、M&A前の虚偽報告や記載が原因で、実行後に買い手に損害が及べば、賠償問題に発展しかねません。買い手はもちろん、売り手もデューデリジェンスの対応は手を抜かないように留意しましょう。

ファイナンスアイ
ファイナンスアイ

こちらでは、ファイナンスアイが手掛けた、事業継承支援から経営改善までの企業再生事例を紹介しています。M&Aをはじめとした事業継承の想見に、ぜひお役立てください。

買収後のPMIが重要であることを忘れない

買い手については、M&A実行後のPMIも大事な作業です。M&A実行前の段階からPMIも見据えた計画を立てておきましょう。PMIとはPost Merger Integration(ポスト・マージャー・インテグレーション)のことで、企業買収後に企業組織や経営をひとつにまとめる作業です。

M&Aの締結時点では、法律上企業がひとつになっただけにすぎず、経営体制や業務プロセス、社内制度などの整備ができていません。PMIを通じて、ひとつの組織として円滑に業務運営する体制を早期に整える必要があります。

個人のM&Aの場合でも、とくに個人事業を買収先企業に取り込む場合などにはPMIが必要です。PMIで統合すべき要素は、主に次の5つです。

  1. 経営体制
  2. 社内制度
  3. 業務プロセス
  4. 事業戦略
  5. 従業員の意識や社内文化

M&A仲介会社の多くは、M&A自体の実行のみを対応範囲としていて、PMIに知見のない会社が多く見られます。しかし、個人が不慣れなM&Aを円滑に実行するうえでは、PMIへのコンサルティングが可能な仲介会社の支援を得るのが有効です。

まとめ

中小企業の事業継承ニーズの高まりやマッチングサービス、仲介会社の普及により、個人でのM&Aは以前より身近なものになりました。低コスト・低リスクでの起業や投資・資産形成の一環として、一定の資産をもつ個人の多くがM&Aにチャレンジしようとしています。

個人がM&Aを成功させるためには、実行する目的を明確にして、買収先企業を厳選することが大切です。M&A実行中だけでなく、その後の経営支援まで受けられる仲介サービスを利用すれば、買収後の事業経営をスムーズに進められます。

中小企業10,000件以上の支援実績を持つファイナンスアイでは、これまでの支援実績を活かして個人のM&Aを手厚く支援します。高額な仲介手数料を取るM&A仲介会社が多いなか、最低手数料100万円~のリーズナブルな価格で支援可能です。

PMIまで見据えたトータルコンサルティングも行っているほか、融資に関する支援を得意としているため、買収資金の調達についても的確なサポートができます。個人でのM&Aにチャレンジしようとしているなら、まずはファイナンスアイにご相談ください。

事業承継・引継ぎ補助金に採択されると、実質的な負担はさらに下がります。

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ファイナンスアイでは、融資・資金調達・M&Aのプロから学べる個人M&Aセミナーを定期的に開催しています。こちらのセミナー一覧からお気軽にお問合せください。

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ファイナンスアイでは、これまで8,000社以上の個人事業主、株式会社、合同会社などの様々な事業形態に併せて、日本政策金融公庫・信用保証協会付け融資・信用金庫・銀行融資などの相談に応じています。既に起業されている方もこれから起業される方も、皆様が創業融資などの資金調達を成功させられるように成功報酬でトータルサポートしています。企業再生を数多く手掛けてきたので、創業融資だけではなく、既に経営されている皆様の資金調達のお悩みにも対応できます。お気軽にご相談ください。

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記事・コンテンツの監修者

起業創業開業の資金調達コンサルタント

株式会社ファイナンスアイ 代表取締役
田中 琢朗(たなか たくろう)

これまで8,000社以上の経営者の資金調達の相談に応じ、現在も新規で毎月100社以上の起業家・経営者・個人事業主の悩み相談に対応しています。大手金融機関にて、上場企業・中小・ベンチャーまで様々な企業のファイナンス支援を実施。その後、金融企業の起業に参画。財務の専門家として上場企業の経営企画部も兼務し、ハードなM&A等のプロジェクトを歴任。事業計画の策定やネゴシエーションに強みがあり、様々な企業再生のプロジェクトに財務コンサルタントとして関わり、多くの企業再生を成功させる。起業家、経営者の多くがファイナンス分野で苦労している現場を目の当たりにし、これが企業の成長と継続のボトルネックの一つになっていると感じ、自身の知識・経験・ノウハウを活かして、日本の経済成長に貢献できるのではと考え、2014年に株式会社ファイナンスアイを創業。以来、日本全国の多くの起業家の創業融資、個人事業主や中小企業の経営者らの資金調達や融資等を活用した経営改善を実現している。ハンズオンで起業を支援した中には、創業から数年で年商5億円を突破する経営者も続出しており、日々起業家・経営者・個人事業主のために邁進しています。

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