小規模な事業・企業の合併・買収である「スモールM&A」「個人M&A」への注目度が高まっています。後継者不足や労働環境の変化、経営者の早期リタイアなどを背景に、事業譲渡したい中小企業が増加していることが背景にあります。
また、リスクを抑えた起業や、事業投資の目的で事業買収を検討する個人や中小企業も少なくありません。M&A実行時には、実行後のサポートが手厚いサービスを利用したほうが、スムーズに案件を進められます。
この記事では、「スモールM&A」「個人M&A」が注目されている理由やメリット、M&Aの始め方や流れを解説します。事業の譲渡・買収を検討している中小企業の経営者の方は、ぜひ参考にしてください。
スモールM&A・個人M&Aとは
スモールM&A・個人M&Aとは、小規模事業や企業の買収・合併です。厳密なルールや決まりはありませんが、以下に該当する案件がしばしばスモールM&A・個人M&Aと呼ばれます。
- 買収対象が小規模企業・個人事業
- 譲渡金額がおおむね1億円未満
- 年間売上高が1,000万円〜5億円程度
- 従業員数が数人〜30名程度
買い手にとっては、スピーディに企業規模の拡大や多角化を実行できる手段のひとつです。また、売り手は、後継者不足の解決や経営者の早期リタイアなどを実現できます。
最近は、M&AのWebマッチングサービスが増えたため、中小企業でもM&Aを検討・実行しやすくなりました。
個人M&AやスモールM&Aの例
スモールM&A・個人M&Aの事例を2つ紹介します。
- 老人ホームの事例
- ECサイト・アフィリエイトサイトの事例
老人ホームを経営するA社は、4億円ほどの売上を計上する事業を営んでいましたが、経営者が高齢化しているにもかかわらず後継者が見つからない状態でした。また、直近は赤字を計上しており、設備投資ができず施設の老朽化も課題となっていました。
一方、別の老人ホームを経営する企業B社では、急速な事業拡大のなか、入居応募者数の多さに対し部屋数が不足している状態でした。そこでB社はA社を買収し、部屋数を増やして入居者の取りこぼしを防ぐ決断をしたのです。A社は後継者不足を解決し、従業員は引き続きB社で働き続けることができました。
もうひとつ事例を紹介します。ファッション関連のECサイトを営むC社は、年商1億円程度の事業になっていました。経営は順調でしたが、経営者はC社を売却し、別の事業を始めたいと考えます。
C社の買い手となったのは、アフィリエイトサイトで大きな収益を上げている個人事業主でした。アフィリエイトサイトとECサイトを一緒に営めばシナジーが発揮され、売上・利益の拡大が見込まれると考えて、C社を買収したのです。
このように、個人M&AやスモールM&Aでは、個人の起業家や個人事業主が買い手となるケースも少なくありません。
スモールM&Aや個人M&Aが注目を集める理由とは
個人M&AやスモールM&Aは、次のような背景により注目を集めています。
- 深刻な後継者不足問題
- 法改正などの労働環境変化
- 経営者の早期リタイア増加
- 個人M&AやスモールM&A仲介業者の増加
- 低リスクでの起業実現が可能
- 有力な投資対象としても注目
売り手・買い手双方の課題解決に役立つうえ、仲介業者が増加してM&Aにチャレンジしやすくなったことにより、個人M&AやスモールM&Aの注目が高まっています。
深刻な後継者不足問題
少子高齢化や働き方の多様化により、後継者不足に悩む中小起業の経営者が増えています。従来は中小企業の場合、親族内で後を継ぐというのが主要な承継方法のひとつでした。しかし、年々親族内の承継割合は減少しており、2019年にはおよそ35%となっています。
少子高齢化のためにそもそも跡継ぎがいない、また、個々が望む人生を歩むうえで家業とは別の仕事をしたいと考える方の増加が背景にあります。後継者が見つからない経営者が引退方法として廃業を選択してしまうと、それまで勤めていた従業員は一斉に失業してしまうでしょう。
こうしたことを回避するために、事業を継続しながら自らが引退する方策として、M&Aで第三者へ事業譲渡したいと考えるケースが増えているのです。
法改正などの労働環境変化
法改正などにより労働環境が変化し、人件費が高騰していることが引き金となる場合も少なくありません。
たとえば、建設業・運輸業では2024年から働き方改革関連法の適用により、労働時間の規制が厳しくなります。人材派遣業では、定期的に法改正が行われ、関連企業はその都度対応に迫られているのです。
制度対応のために従業員に配慮した労働環境を整備すると、人件費の高騰を招く場合があります。人件費の高騰により自力での経営継続が難しいと判断し、M&Aによる譲渡を選択する中小企業の経営者も多いのです。
経営者の早期リタイア増加
経営者の価値観の変化により、早期リタイアを希望する方が増加したことも、スモールM&Aや個人M&Aに注目が集まる一因です。かつては日本では働くことを美徳とする風潮があり、元気なうちは事業継続を希望する経営者が多く見られました。
しかし、現在では若いうちにアーリーリタイアを実現して、元気なうちにセカンドライフを満喫したいと考える経営者が増えています。
また、スタートアップやベンチャー企業経営者にも価値観の変化が見られます。かつては、起業のひとつのゴールとしてIPOを目指す方が多く見られました。
しかし、IPOは企業法務や企業組織の整備、投資家集めなどに大きな労力がかかります。そのため、近年は相対的にスピーディに実行可能なM&Aを希望する方が増えているのです。
個人M&AやスモールM&A仲介業者の増加
M&Aの仲介業者が増加傾向にあるのも、注目度が高まっている要因です。近年は、Webを介してM&Aの買い手・売り手探しや実際の交渉・手続きを進められる仲介サービスが増加しました。
従来であれば難易度が高い印象があったM&Aを検討しやすくなったため、多くの中小企業がM&Aを経営戦略のひとつと考えるようになったのです。
ただし、なかには手数料が不明瞭な業者も多く、M&Aのコストが高くつくリスクがあります。また、M&Aでは契約締結後に組織をひとつにまとめる作業も重要ですが、このプロセスに対するサポートは範囲外とする業者も少なくありません。
その点、ファイナンスアイは最低報酬100万円(税別)~と、低コストでM&A支援を行っています。さらに、M&A自体の実行だけでなく、その後のバリューアップに向けた経営サポートも可能です。M&Aを実際に検討する際には、低コストでサービスが手厚い業者に相談しましょう。
事業承継・引継ぎ補助金に採択されると、実質的な負担はさらに下がります。
低リスクでの起業実現が可能
M&Aを通じて低リスクで起業できるとの考え方から、企業買収を希望する起業家が増えています。起業でいちからビジネスモデルを描いて成長軌道に載せるまでには、多大な労力がかかるうえ、起業の過程で失敗するリスクも小さくありません。
M&Aであれば、すでに事業が軌道に乗っている企業を買収できます。そのため、業績が安定した企業を選別すれば、低リスクで事業経営を始められます。設備・従業員などのリソースもそろっているため、起業にともなう労力も少なく済む可能性が高いのです。
有力な投資対象としても注目
M&Aを通じて、事業投資の目的で企業を買収する方も増えています。M&Aであれば、上場されていない中小企業でも事業投資が可能です。企業を買収したのちに、個人のノウハウや能力を活かして売上や利益を拡大させます。
組織や事業が拡大したのちにM&AやIPOなどを実行すれば、当初の投資資金より大きな金額で出資した株の売却が可能です。買収した企業の価値を高めるには、事業に対する専門性や経営者としての能力が求められますが、明確かつ現実的な経営戦略を施策することで、大きな投資収益を上げられる可能性があります。
個人M&AやスモールM&Aのメリット
個人M&AやスモールM&Aには次のようなメリットが存在するため、買い手・売り手とも多くの経営者が検討します。
- 事業継承問題を解決できる
- 経営者保証や担保を引き継げる
- 負債があっても売却できる
- 創業者利益を得られる
- 廃業コストを削減できる
- 通常のM&Aよりも迅速に実行可能
- 個人でも買収にチャレンジしやすい
メリットについて、それぞれ詳しく見ていきましょう。
事業継承問題を解決できる
スモールM&Aや個人M&Aを実行すれば、後継者がいない企業の事業継承問題を解決できます。帝国データバンクの調査によると、2022年の社⻑の平均年齢は 60.4歳と過去最⾼を更新しています。
さらに、約8割の企業の経営者が50歳以上です。後継ぎが見つからないなかで、事業を承継できず高齢になる経営者が増えています。
スモールM&Aや個人M&Aを実行すれば、親族や企業内に適任がいなくても、他企業の経営者や起業家が後継ぎとなって事業を継続できます。後継者不在にともなう廃業を防げるため、高齢な経営者は安心して引退可能です。
経営者保証や担保を引き継げる
M&Aで事業承継した場合は、経営者保証・担保も新たな経営者に引き継ぐことができます。中小企業が融資を実行する際、しばしば経営者が保証したり、個人資産を担保設定したりします。
親族に事業承継するとき、経営者保証や担保設定の解除に難色を示されるケースも少なくありません。後継者に経営を譲った後も保証・担保が残り、万が一経営に失敗したときにダメージを負うリスクもあります。
M&Aで第三者に企業を譲渡した場合は、保証も新たな経営者へ引継ぎ可能です。また、個人資産の担保は解除され、必要に応じて新経営者が担保資産を用意する形となります。M&Aであれば譲渡後の企業の業績を心配せず、安心してセカンドライフを送れます。
負債があっても売却できる
スモールM&Aや個人M&Aは、負債の多い企業や現状の業績が赤字でも成立する可能性が充分にあります。金融機関での融資審査に否決されるような財務・業績でも、買い手が経営を立て直し可能と判断すればM&Aは成立します。
売り手から見れば、致命的な状態になる前に企業を手放して、存続に望みをつなげることが可能です。また、将来性のある赤字・財務悪化した企業を割安で買収できる可能性があるため、買い手にとってもメリットがあります。
創業者利益を得られる
スモールM&Aや個人M&Aで第三者に事業譲渡できれば、経営者は創業者利益を得られます。M&Aを実行するときには、買い手に対して保有する売り手の経営者が株式を売却します。このとき、次の式の金額がプラスであれば、元の経営者にとっては利益が発生します。
売却額 - 経営者が企業に投じた株式資本 = 創業者利益
企業の評価が高いほど、売却額・創業者利益も拡大する仕組みです。売却額は、売り手・買い手の交渉を通じて決まります。創業者利益の最大化のためには、企業の価値を適正に評価し、対等に交渉を進められるM&A仲介業者を利用しましょう。
ファイナンスアイでは、1万社以上の経営者を支援するなかで培ったノウハウを結集して、経営者の希望通りのM&Aの実現を目指します。手数料が最低100万円~と業界最安級のリーズナブルなコストで、M&A後のサポートも含めてトータルコンサルティングが可能です。
廃業コストを削減できる
M&Aで企業を譲渡すれば廃業を免れるため、廃業にかかるコストを払わずに済みます。廃業は、後継者を見つけられなかった場合の選択肢として挙げられますが、次のようなコストがかかります。
廃業コストの例
- 廃業の登記・法的手続きに関する費用
○ 各種登記:10万円程度
○ 廃業を債権者に伝える官報公告:3~4万円程度
○ 商業・法人登記情報や登記事項証明書の取得:1万円程度
○ 士業(税理士・司法書士など)報酬:数十万円程度 - 在庫の売り切り
- 設備処分費用
- オフィス・工場など物件の原状復帰
2~4のコストは企業の経営状況によってさまざまで、高いケースでは中小企業でも数千万円にのぼるケースも少なくありません。
廃業コストが高いと、企業を清算したときに経営者の手元に残る現金が減少する要因となるばかりか、企業の資産で賄えない場合は経営者が支払わなければなりません。
M&Aなら事業が継続されるため、経営者が資産の処分や登記費用を支払う必要はなくなります。仮に資産や在庫の処分が発生するとしても、そうした判断は買収先企業が行うため、売り手が費用を負担することはありません。
通常のM&Aよりも迅速に実行可能
スモールM&Aや個人M&Aは、売り手企業の事業・組織の規模が小さいため、通常のM&Aよりも迅速に実行可能です。M&Aは規模が大きいほど高額化して、買い手側の財務や業績へのインパクトが大きくなるため、価格の交渉に時間がかかる可能性があります。
また、資産価値の算定や、デューデリジェンス(買収先の価値やリスクなどを整理する作業)も事業規模が大きいほど手間がかかります。通常のM&Aでは年単位の時間がかかるケースも少なくありませんが、スモールM&Aや個人M&Aは動き出しから最短半年以内で成約可能です。
個人でも買収にチャレンジしやすい
スモールM&Aや個人M&Aは、個人投資家や起業家が買い手としてチャレンジしやすいのもメリットです。通常のM&Aは、よほどの富裕層でもない限り、個人が企業を買収するのは難しいでしょう。
スモールM&Aや個人M&Aであれば、数百万円~数千万円程度で買える企業もあるため、個人でも検討できる方は多いといえます。企業と個人双方を譲渡先のターゲットとすることで候補が広がるため、売り手企業にとってもメリットのあるポイントです。
こちらの記事では、個人でM&A を始める際の費用内訳や小規模案件の探し方、個人M&Aの注意点を解説しています。ぜひあわせてお役立てください。
スモールM&Aをはじめるには
スモールM&Aは、仲介会社やマッチングサイトをうまく活用すれば、スムーズに実行可能です。また、各都道府県に設置された事業引継ぎ支援センターの活用も検討しましょう。
M&Aでは多くの法務・税務・財務の専門知識が必要となるため、各士業に依頼するのも一案です。売り先・買い先に悩んだ場合は、知人に相談するのも方法のひとつです。
仲介会社を利用する
スムーズにM&Aを実行するなら、仲介会社を利用するのが得策です。仲介会社は、M&Aの買い手・売り手探しや売買価格の交渉、税務・法務面でのサポートを行ってくれます。
資産価値の算出やデューデリジェンスの対応も可能です。M&Aはさまざまな専門性が要求されるため、知見のある仲介会社を利用したほうが失敗のリスクを減らし、適正価格でM&Aを実行できます。
トータルコンサルティング可能な会社がおすすめ
多くのM&A仲介会社は、M&Aの実行までを業務範囲としていて、その後の組織統合や経営サポートを行っていない点には注意が必要です。
また、買い手企業の場合は、しばしば買収のために融資などの資金調達を検討します。M&Aだけでなく、資金調達や買収後の経営サポートまで得意とする会社を利用するのがおすすめです。
ファイナンスアイは、M&Aだけでなく中小企業の資金調達・融資のサポートも行っており、これまで1万社以上の支援実績があります。さらに、M&A実行後の経営コンサルティングも対応可能です。
マッチングサイトを利用する
Web上で売り手企業・買い手企業を検索できるマッチングサイトを利用すれば、手軽にM&Aを検討・実行できます。検索機能では業種や買収価格、業績、地域などを基準に絞り込みができるサービスが多く、Web上で簡単に交渉相手を見つけられます。
ただし、マッチング機能に特化したサイトの場合は、実際の交渉やM&A契約のサポートが手薄な場合も少なくありません。交渉先とのトラブルになるリスクも相対的に高いのです。
一方、マッチングサイトでありながら仲介会社がサポートしているサービスであれば、手厚い支援が期待できるでしょう。
弁護士や税理士に相談する
スモールM&Aでは、通常のM&A同様に会計や税務・法務などの高い知識が必要です。自社に専門性を持つ人材がいない場合には、弁護士や税理士などの士業に相談しましょう。弁護士であれば法務、税理士であれば税務といったように、それぞれの専門領域で質の高いサポートを受けられます。
一方で、M&Aの案件探しなどは専門外であるため、すでに交渉相手が見つかっているときに有効な方法です。マッチングサイトや仲介会社を利用する際には、サービスの一環で士業のサポートを受けられる場合もあるため、不要な支援を依頼しないように注意しましょう。
手数料に留意する
M&A実行に際して発生する手数料に留意しましょう。ここまで紹介した「マッチングサイト」「M&A仲介会社」「弁護士・税理士」はいずれも手数料や報酬が発生します。
料金体系や水準はサービスによって異なるため、綿密にチェックして納得のいくものを利用しましょう。マッチングサイトは、成約価額に比例して報酬が発生するサービスや、月額利用料が発生するサービスが多いです。また、売り手側は無料で利用できるサービスも見られます。
M&A仲介会社も、成約価額に比例する成功報酬が発生するケースが一般的です。さらに、M&Aを支援する間に定額料金がかかる場合もあります。サポートが手厚い一方で、M&A仲介会社の手数料はしばしば高額化するため予算に注意しましょう。
弁護士や税理士の報酬は、時給や工数をもとに試算した固定報酬を基本としつつ、成約価額に比例する成功報酬を徴収する事務所もあります。支援を依頼するときには、サポート内容に加えて、料金や水準に納得できるサービスを選んでください。
事業引継ぎ支援センターを利用する
各都道府県にある、事業引継ぎ支援センターを利用するのも一案です。事業引継ぎ支援センターは、後継者不足に悩む経営者をサポートする国営機関で、無料で相談ができます。金融機関OB、公認会計士や中小企業診断士など、M&Aに関連するさまざまなプロフェッショナルから無料でアドバイスを受けることが可能です。
さらに、自社の状況を踏まえて、自社に合った買い手を紹介してもらえます。各都道府県にある支援センター共通のデータベースを参照して探してもらえるため、スムーズに譲渡先が見つかります。
なお、アドバイスや譲渡先を探すのは無料ですが、M&A交渉が始まったのちの資産価値評価やデューデリジェンス、法務・税務のサポートは民間起業や事務所への依頼が必要です。M&Aにおけるすべての工程を無料でできるわけではない点を留意しましょう。
知人に紹介してもらう
経営者や起業家の横のつながりがあるなら、企業を売りたい、買いたいといったニーズを持つ方がいないか探してみてください。知人の紹介であれば仲介に関する手数料がかからないため、割安にM&Aを進められます。
ただし、専門家を介さずに価値評価やデューデリジェンス、税務対応などを進めると、トラブルになったり、不適切な形で契約締結してしまったりするリスクがあります。専門性の高い分野については、知見を持つ弁護士や会計士、税理士への依頼が必要になるでしょう。
スモールM&Aの流れ
スモールM&Aでは、M&Aの目標や条件の検討に始まり、買い手探し、交渉や契約書の締結と、実行するうえで多数のプロセスが発生します。M&Aをスムーズに実行するために、一連の流れを正しく押さえておきましょう。
また、リソース豊富な大手企業でない限り、全プロセスの自社対応は非常に困難を極めるため、仲介会社や専門家のサポートを有効的に活用してください。
目標・条件の検討
スモールM&Aの目標や達成すべき条件を明確にしましょう。M&Aはなんらかのゴールを達成する手段であり、M&Aの推進自体を目的としてはいけません。
売り手企業であれば、企業をすべて譲渡するのであれば、経営者の引退にともなう事業継続が目的となります。部分的な事業譲渡なら、資金調達や経営再生が目的となる場合もあります。
さらに、M&A実行を判断する条件も整理しておきましょう。たとえば買収金額の目標を立てるほか、従業員の雇用条件の維持などを条件とするケースもあります。
買い手は、M&Aを通じた起業、事業拡大、多角化などが主な目的となります。買収金額の予算を設定したうえで、売上・利益や業種などに関して求める条件を整理しましょう。
M&Aの知識を持つ専門家へ依頼
自分が設定した目標・条件をもとに、専門家へ支援を依頼しましょう。大きく分けて次のような選択肢があります。
- M&Aマッチングサービス
- M&A仲介会社
- 弁護士・税理士など士業事務所
- 事業引継ぎ支援センター
買い手・売り手のターゲットや候補の有無、自社の専門性や手数料水準をふまえて、適切な専門家に相談してください。また、スモールM&Aが得意、大型のM&Aを中心に手掛けるなど、得意とする規模が異なる場合もあります。
買主候補・候補企業の選定
売買先の候補が決まっていない場合には、買主候補・候補企業を選定しましょう。M&Aマッチングサービスは、自分で候補先を検索したりコンサルタントから提案を受けたりできます。M&A仲介会社・事業引継ぎ支援センターは、いずれも相談すれば候補先企業を探してくれるサービスです。
弁護士・税理士など士業事務所でも、相手先を探してくれる事務所もあります。ただし、あくまで付帯的なサービスなため、候補先企業の選定能力を求めるなら、士業事務所以外に相談するのが得策です。
この段階では、売り手企業が「ノンネームシート」という企業名を伏せて、業種や所在地などの概要を示した資料を作成して、買い手企業に提供します。売り手はM&Aを検討していることが発覚すると事業にマイナスになるおそれがあるため、この段階では企業名が明かされません。
秘密保持契約の締結
売り手・買い手の交渉相手がある程度定まったら、秘密保持契約を締結して、さらに詳細な情報の授受を行います。売り手企業・買い手企業双方で直接締結する場合と、仲介業者が入る場合の双方があります。
なお、買い手企業については、入札方式を取る場合などに複数社が候補となるケースも少なくありません
情報開示・情報分析
秘密保持契約が提示されたら、売り手・買い手企業を明らかにして、より詳細な情報の授受を行います。情報開示ではIM(インフォメーションメモランダム)というシートを売り手から買い手に渡して検討材料とします。
IM(インフォメーションメモランダム)には、以下の内容が含まれます。
- 社名・会社概要
- 事業内容、事業系統
- 取引先
- 財務データ
- 雇用状況など
また、買い手は売り手企業の価値を金銭評価します。厳密な価格が確定するのはデューデリジェンスを経た後のため、ここでは大まかな価格の範囲を設定して、交渉を進めるか判断します。IM(インフォメーションメモランダム)で足りない情報は、適宜売り手から入手しなければなりません。
M&Aスキームも検討すべきポイントです。M&Aには次のような手法があり、売り手・買い手の意向や目的、メリットとリスクを勘案して最適な方法を選択します。
- 株式譲渡
- 事業譲渡
- 合併(吸収合併・新設合併)
- 会社分割(吸収分割・新設分割)
- 株式移転
- 株式交換など
売買条件の面談と交渉
買い手の情報整理や分析が完了すると、売買条件の交渉に向けた面談が始まります。最初に経営者同士が面談したうえで、問題がなければ実務者同士が対応する流れです。スモールM&Aの場合は、小規模事業であればそのまま経営者が対応する場合もあります。
譲渡価額の概算額やM&Aスキームなどを中心に、まずは基本合意を締結するうえで必要な情報を中心に交渉します。なお、この時点では複数の買い手候補と交渉することも可能です。
基本合意の締結
交渉を経て、買い手企業を1社に絞り込んだタイミングで基本合意契約を締結します。これは仮契約のようなものであり、まだ破談となる可能性もゼロではありません。
売り手企業は最後まで油断せず、買い手側が求める情報提供に対して誠実に応えながら、交渉を継続しましょう。基本合意契約には、次のような内容が盛り込まれます。
基本合意契約の内容
- 契約条件
- 契約日
- 譲渡方法
- おおよその譲渡価額
デューデリジェンス
買い手企業は、基本合意契約の締結後にデューデリジェンスを実施します。デューデリジェンスとは、買収対象企業をさらに詳細に調査する作業です。デューデリジェンスの内容をもとに、この後の最終条件の提示内容をまとめます。
買収価格を具体的に確定するために、売り手企業の資産価値を細かく算出します。また、今後の事業の将来性やリスクについても定性的・定量的に分析します。
大まかには、法制度に関する分析を行う法務デューデリジェンスと、財務を分析する財務デューデリジェンスに分かれます。法務を弁護士、財務を会計士にそれぞれ任せるのが一般的です。
ファイナンスアイでは、スモールM&Aや個人M&Aや事業承継などの中小M&Aに最適化されたバトンズDDの調査人をしています。手軽な価格でDDを実施でき、万一のM&A保険もつけられます。詳しくはコチラ
最終条件の交渉
デューデリジェンスの内容をもとに、最終的な買収条件の交渉に入ります。当初想定より資産評価が減少したり、新たなリスクが明らかになったりすれば、減額交渉が行われます。
また、売り手も役員・従業員の待遇、経営者の引退条件、社名・ブランドの取り扱いなど、価格以外の条件を交渉しなければなりません。双方がM&Aの条件に納得したら、最終契約書の締結に入ります。
最終契約の締結
すべての交渉がまとまったら、最終契約をまとめて締結します。最終契約書は法的拘束力が発生するため、締結した場合には、相手が合意しない限り内容の変更は認められません。
売り手・買い手とも、盛り込む条件の不備や抜け・漏れがないかを慎重に精査したうえで、契約締結に臨みましょう。
クロージング
クロージングは、最終契約書が締結したのち、契約内容にしたがってM&Aの手続きを実行して企業の合併・譲渡を完結させる手続きです。
資産の移転や法的手続きに関する書類は多岐にわたるため、しばしば実務者レベルで「プレクロージング」という、書類や手続きを確認する作業を実行します。
ひととおり問題ないことを確認したうえで、クロージング日に手続きを進めれば、M&Aは完了です。クロージングでは金銭だけでなく、資産や従業員などのリソースも移転します。スムーズに実行するために、あらかじめ計画書やスケジュールをまとめておきましょう。
ファイナンスアイでは、融資・資金調達・M&Aのプロから学べるスモールM&Aセミナーを定期的に開催しています。こちらのセミナー一覧からお気軽にお問合せください。
まとめ
スモールM&Aは、相対的に小規模なM&Aを指す言葉で、中小企業の事業承継の手法としてしばしば活用されます。また、買い手にとっても、リスクを抑えて起業できる、投資の一環として活用できるといったメリットがあります。
自力で完結するのは容易ではないため、仲介会社や士業事務所などの専門家に依頼して、支援してもらいながら候補先企業の選定や交渉・手続きを進めるのがおすすめです。
なお、M&A自体はクロージングで終わりますが、企業経営をスムーズに進めるためにはPMIと呼ばれるプロセスがあり、合併にともなう組織の統合や、経営者と譲渡企業の連携が重要です。
ファイナンスアイでは、M&Aプロジェクトの推進だけでなく、買収後の経営支援も行っています。また、買収にともなう資金調達支援や金融機関との交渉も可能です。これまで1万社以上の起業家や中小企業を支援する中で培ったノウハウを活かして、スムーズなM&Aの実行を支援します。
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事業承継・引継ぎ補助金に採択されると、実質的な負担はさらに下がります。
ファイナンスアイの強み
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記事・コンテンツの監修者
株式会社ファイナンスアイ(経済産業省M&A支援機関登録済)
代表取締役 田中 琢朗(たなか たくろう)
大手の金融機関・上場企業の財務部門責任者などを歴任し、2014年にファイナンスアイを創業。業界歴30年・創業10年のベテラン。中小企業・個人事業主・起業家と一緒に、現場で泥臭く汗をかいて靴をすり減らして財務を軸に経営者を支援し続け、のべ10,000人以上の圧倒的な実戦経験を持つ。ノウハウを「ファイナンスアイ式メソッド」として確立。中小にはびこる悪質なM&Aの被害をなくすために、M&A支援も本格化。売手・買手のいずれの立場からも真のM&Aを提供。現在も毎月150件以上の新規相談に対応し、毎週セミナーも開催中。日本経済のために今日も邁進しています。