事業計画書の必要性は?記載内容と説得力のある書き方

資金調達-創業融資

事業計画書の必要性は?記載内容と説得力のある書き方

2023年3月5日

事業をしている場合、資金調達やテナントを借りる際などに事業計画書の提出を求められることがあります。それだけでなく、事業内容を明確にし、従業員と方向性を共有する際にも事業計画書は役立つものです。

そこで今回は、事業計画書の必要性や記載内容をご紹介します。また、事業計画書は経営者の理想をただ書けばよいわけではなく、しっかりとした内容にすることが重要です。説得力のある書き方をするためのコツや、作成時の確認項目も見ていきましょう。

事業計画書の必要性

事業計画書は、事業のコンセプトや内容、事業環境の分析、戦略、商品やサービスに関するアイデア、事業収支計画など、事業運営に必要なことを簡潔にまとめた文書です。

ビジネスをスタートするときや、事業を進める際に作成する事業計画書ですが、なぜ作成が必要なのでしょうか。

事業計画書の必要性を4つのポイントに分けて解説します。

事業内容を明確にして客観視する

事業の内容や戦略を漠然と頭の中に思い描いているだけでは内容が整理されず、事業を進めていくなかで抜けや漏れが生じてしまう可能性があります。

事業運営の各フェーズごとに目標である売上を達成するための人員計画・サービス開発・広告戦略を数値化して立てることで事業運営に必要なことが明確になり、これから果たすべきことを示せます。また、事業を進める途中でも、目標が数値化されていることで進捗状況確認も可能となります。さらに、必要に応じて軌道修正する際にも役立ちます。

事業計画を数値化したものを読み返すと、客観的な視点で事業の進捗状況を確認できるのも特徴です。また、第三者に見てもらうことで、見落としている点や修正点が見つかることもあるでしょう。

事業内容の方向性を共有する

創業者が一人で事業を進める場合もありますが、従業員を雇う場合はそれぞれが同じ方向を向いて事業に取り組むことで、効率的な事業運営ができます。事業を成功させるためには、創業者も従業員も方向性を揃える必要があるのです。

根拠に基づき数値化され、且つ運営方針が具体的な事業計画書を読むと、事業内容の方向性が把握できるため、従業員が一丸となって事業を進めていくことに役立ちます。また、事業をともに進める仲間を集める際にも必要です。

資金提供者に理解と協力を求める

設備投資の実行や新規事業の立ち上げなど、多額の資金が必要になる場面においては自己資金だけでまかなえない可能性があります。金融機関や公的機関からの融資や、ベンチャーキャピタルや個人投資家からの出資などによる資金調達を検討する必要性も出てくるでしょう。

事業計画書は、資金提供者に理解と協力を求める際にも役立ちます。事業の現実的な計画や目標、将来性を数値化するとともに、事業に対する熱意などを伝えることで、資金調達をスムーズに進められることが期待できます。

審査の合格確率が高くなる

融資を行うのに値する信頼できる事業であり、返済を見込めると判断してもらえれば、融資の審査も通りやすくなります。事業計画書には、収支計画や利益計画、キャッシュフロー計画といった数値計画も含まれているため、融資の審査においては関心の高いポイントです。

根拠となる客観的なデータを使い、簡潔で整合性のある事業計画書を作成することで、信用度が高まって審査の合格率をアップさせられるでしょう。

事業計画書が必要となるシーン

事業計画書の作成は必須ではありませんが、さまざまなシーンで必要とされるため作成しておくことがおすすめです。必要となる具体的な場面として、以下の4つをご紹介します。

融資を受ける場合

金融機関に融資の申込みをする際、決算書や試算表などさまざまな書類の提出を求められますが、その中に事業計画書が含まれていることがあります。融資には返済義務があるため、財務状況や書類などをもとに、利息を含めて貸したお金を返済できるのか審査されます。

場合によっては、決算書の評価があまりよくないこともあるでしょう。その際に説得力のある事業計画書で将来性や収益の見込みを示すことができれば、融資の審査で有利にはたらく可能性があるのです。決算書は行ってきた事業の結果を判断する資料である一方で、事業計画書は将来性や成長性をアピールできる資料といえます。

出資を受ける場合

資金調達方法として、ベンチャーキャピタルや個人投資家などからの出資を受ける方法があります。出資は融資と違って返済義務がありませんが、出資者はリターンを期待したうえで出資するのが基本です。

出資を受ける場合も、事業計画書が重要な役割を果たします。事業内容や計画を説明するのはもちろん、出資者のメリットを訴求する内容にすることがポイントです。

事業の成長性やその根拠を提示し、高い収益力によって将来的なリターンが大きくなることをアピールすることで、出資してもらえる可能性も高まるでしょう。

補助金・助成金を受ける場合

事業を進める中で、国や地方公共団体、民間団体による補助金や助成金を活用する際も、多くの場合は事業計画書を求められます。補助金や助成金は原則として返済の必要がないため、上手に活用できれば資金調達の手段として役立てられるでしょう。

要件を満たせばほぼ受給できるものもあれば、審査がある補助金も存在します。また、補助金によっては募集期間が短いものもあります。公示されてから作成するのでは間に合わなかったり、内容の乏しいものになったりする可能性があるため、日頃から事業計画書を作っておくことがおすすめです。

賃貸物件を借りる場合

店舗や事務所を構える際に、賃貸物件を借りるケースがあります。事業で使う賃貸物件の入居審査の際にも、事業計画書の提出を求められることがあるのです。

きちんと家賃を支払う能力はあるのか、ほかの入居者に迷惑をかけないか、部屋に損傷を与えるような事業ではないかなどを貸主が判断する際に、事業計画書が役立ちます。事業計画書によって、どのような事業をしていて、どれくらいの収益が見込めるのかを確認できるからです。

滞納リスクやトラブルの可能性が低いことを示すためには、貸主が安心して貸してくれるような事業計画書を作る必要があります。

事業計画書の記載内容と書き方

ここで、事業計画書には具体的に何を記載すればよいのか、13個の記載内容と書き方を解説します。

会社概要

会社のデータや基本情報を記載します。具体的には、商号、設立年月日、住所、電話番号、メールアドレス、代表者、役員、ホームページのURL、主要取引先などが挙げられます。会社の規模や全体像が分かるような内容にしましょう。

業種によっては許可を取得する必要があります。営業許可証などの情報を載せるなら、番号も記載すると安心感を与えるでしょう。

創業時に作成する事業計画書であれば、予定を記載します。創業時は代表者や創業メンバーの経歴やプロフィールを詳しく書くのがおすすめです。

プロフィールといっても事業と関わりのないことを長々と書くのは避け、この人なら事業を成功に導くと判断してもらえる内容に絞るのがポイントです。信頼を得られるようにするため、事業内容に関連する学歴や職歴、資格などを記載します。

事業概要

事業の全体像をシンプルに記載します。読み手がイメージしやすいように、専門用語の多用は避けて誰でも分かる言葉を使います。

どの市場やターゲットに向けて、どんな商品やサービスを、どのように提供するのかを簡潔にまとめるのがポイントです。あとに続く項目で詳細を記載するため、ここではあくまで簡潔にまとめるようにしましょう。

必要事項を漏れなく含めて簡潔にまとめるために、事業概要の項目は計画書作成の最終段階で書くのがおすすめです。また、あとに続く項目と矛盾がないように、整合性を持たせる必要があります。

事業背景と目的

事業を始めようと思ったきっかけ、創業にいたる背景などを記載します。さらに、将来こうありたいというビジョンや理念、最終的な目的もこちらの項目で伝えましょう。

「顧客の暮らしを豊かにしたい」「社会貢献したい」など、事業を通じて実現したいことや、事業に取り組む意義を記載し、事業に対する情熱や思いをまとめます。また、事業の目的を決める際は、ターゲットを明確にすることで方向性が分かりやすくなります。

こちらの項目は事業の原点ともいえる内容です。ほかの人に事業のことを伝える際はもちろん、自分自身がビジネスの方向性に迷ったときや、壁にぶつかったときに立ち返る原点としても役立ちます。

市場環境

取り扱うサービスや商品の市場環境や市場規模、トレンド、事業に関係のある政策の動向など、事業を取り巻く環境について記載します。

その市場が今後成長する見込みなら、その根拠や理由をデータに基づいて説明すると、説得力が増します。国や地方公共団体、関連団体などが公表している統計データを活用し、表やグラフなどを取り入れることで視覚的に分かりやすくなるでしょう。アンケートやインタビューといった独自調査も、結果を分析したうえで記載すると効果的です。

事業が狙う市場に競合他社がいる場合は、具体的な企業名を挙げて状況を述べます。競合の商品、価格帯、流通経路、販売戦略、強み、弱みなどもまとめておきましょう。

従業員の状況

従業員を雇用する場合は、その人数を記載します。今後の事業を進めていく中で想定している従業員数や、どのような従業員を雇用するかも書いておくとよいでしょう。

人数が多い場合は、組織図を用いると分かりやすいです。それぞれの部署の役割なども記載します。従業員は業務に携わる人を指すため、取締役や監査役などは含めません。

人件費は経費の中でも割合が高い項目です。従業員に支払う給料、各種手当、賞与、社会保険料など、さまざまな費用が人件費に含まれます。そのため、従業員の状況は収益性に関わる重要な要素の一つであるといえます。

競合優位性

狙う市場を明確にすると、同じ市場に類似の商品やサービスを提供する競合他社が存在することもあります。競合他社と同じような事業内容では「市場で勝ち抜いていけない」「成長性が低い」と判断されかねません。

まずは競合他社についてリサーチが必要なため、Webサイトなどで調べます。実際に競合他社の商品やサービスを利用してみるのも一つの方法です。

競合他社を研究、分析して分かった自社事業の強みや、独自のアイデア、付加価値、事業の独自性などを記載して、差別化できる点をアピールしましょう。商品やサービスに関する優位性だけでなく、立地条件や人材に関する優位性など、さまざまな観点から強みを記載します。そのうえで、自社が狙うポジションを見つけます。

競合他社と比べて優れている点を記載する際も、統計データなどの客観的な分析を根拠として挙げると、読み手に納得してもらえます。

商品・サービス概要

提供する商品やサービスはどのようなものかを記載します。料金などの詳細、強み、自社にしかできない商品価値、セールスポイントなどをまとめましょう。競合他社との違いにも触れながら商品の特色が分かるようにします。

生産や提供の方法もあわせて記載しておきます。仕入れ先や外注先も記載することで、安定的に商品やサービスの提供ができることを示せます。

ここでは商品の機能やサービスの特徴を説明するだけでなく、それを利用することで顧客に何をもたらすのか、どんなメリットが得られるのかも記載します。

ビジネスモデル

ビジネスモデルとは、儲かる仕組みのことです。事業収益を生み出し、企業価値を高め、事業の継続を実現するための論理的な仕組みを指します。

同じようなビジネスであっても、立地や時間などのさまざまな条件によってビジネスモデルは変わってきます。自社の事業を取り巻く環境に適したビジネスモデルの構築が必要です。

誰に、どのような商品やサービスを、どのような方法で提供するのかを基本モデルとして考案します。さらに、それがなぜ利益に結びつくのかという点もビジネスモデルを構築する重要な要素です。

ビジネスモデルを考案する際は、既存のビジネスモデルを参考にするのも一つの方法です。自社の経営資源を把握したうえで、実現の可能性や競合他社の状況、収益構造を明確にしながら構築していきます。

経営戦略

経営戦略を立てる際は、まず企業戦略を考えてから、事業戦略や機能戦略に反映させて具体化させるのが一般的です。企業戦略は企業の長期的な基本戦略のことで、全体としての方向性や進み方を示します。

事業戦略は事業レベルでの経営戦略のことで、一つの事業しか持たないのであれば、企業戦略と事業戦略は同一となるのが一般的です。企画や製造、販売といった事業内の各機能を連携させる役割があります。

機能戦略は個別の機能の領域における戦略です。流通業であれば仕入れや営業などの機能が必要となるため、それぞれの機能ごとに戦略を立てます。

グローバル化やITの普及、顧客のニーズの多様化、業界の枠を超えた競争など、市場や経済環境は常に変化しています。変化を正確に見据えたうえで、将来的な予測に基づいて経営戦略を考えることが必要です。

収支計画

事業における収入と支出を計算し、現金の流れを把握するものです。事業が持続できるかどうかを判断する大切な項目であり、事業の見通しを考えるのに役立ちます。

事業年度ごとに、予測される収入や支出を記載します。商品やサービス別に、どのように売上を立てるかなどを整理するのもポイントです。売上や借入金によって収入が発生し、経費や借入金の返済などから支出が発生します。

市場の相場やデータに基づいた価格設定、客単価、見込みの客数などから、根拠のある売上高の予測数値を算出することが大切です。さらに、人件費や家賃などの固定費、仕入れ原価といったコストも抜け漏れなく計上します。根拠を示すことで、客観性があって現実的であると読み手に判断される可能性が高まります。

客観的な根拠によって作られた収支計画がなければ、金融機関からの融資を受ける際に、返済の目途を論理的に示すことができないので注意しましょう。

資金計画

事業を進めるために必要な資金の予測を立てて、資金の調達方法や調達金額、用途などを記載します。

資金計画を立てる際は、設備資金と運転資金について押さえておくことが必要です。設備資金とは、商品を作るための機械設備やお店の什器といった一時的に必要な資金を指します。

運転資金は、仕入れ原価や人件費、広告宣伝費などの事業をしていく中で日常的に必要となる資金のことです。それぞれの資金はどこから調達するのか、具体的な資金計画を立てましょう。

資金調達の方法には、自己資金や知人からの借入、金融機関からの融資、出資、補助金や助成金などがあります。現在の借り入れ状況も記載します。

自己資金についてはこちらの記事もご参考ください

体制及び人員計画

創業者が一人で事業に取り組む場合もありますが、従業員を雇ったり、外注パートナーとともに仕事をしたりするケースもあります。

まずは事業に必要な業務をリストアップします。営業、接客、調理、経理など業種によって必要な業務はさまざまです。事業の拡大にともなって新たな業務が発生する見込みがあれば、記載しておきましょう。

次にどれくらいの人員が必要であるか、目標とする売上に必要な人数を算出します。正社員やアルバイト、外注パートナーなど、どういった形態の人員であるかの記載も必要です。組織図などを加えると分かりやすいでしょう。

人件費の算出では、同じ業種の平均的な人件費などをリサーチして、妥当な金額を見積もります。無理のない人員計画を立てることが大切です。

想定リスクと対応策

緻密に計画されたプランも、環境や条件の変化などの不可抗力的な事態が起こることもあります。たとえば後発者の参入やスタッフの転職、景気の変動などが挙げられます。

どのような事業にもリスクは存在するため、可能な限りリスクを洗い出して対応策を考えておくことが必要です。事業計画書がより現実的なものになるでしょう。

事前にリスクを想定しておくことで、事前に手を打てることもあります。想定されるリスクを挙げるだけでなく、プラスの印象につなげるために対応策も書いておくことが大切です。とくに自社内の対応や改善によって対策ができるような要因に対して、対応策を考えます。

事業計画書の説得力を上げるコツ

読み手に何らかのアクションを起こしてもらえるように、事業計画書は説得力のある内容にすることが大切です。説得力を上げるための5つのコツをご紹介します。

アピールする相手を考慮した内容にする

社内向けや社外向け、さらには金融機関や投資家、支援者など、事業計画書を読んでもらう相手はさまざまです。アピールする相手に合わせて計画書の構成や強調する点に配慮すると、説得力のある事業計画書の作成に役立ちます。

たとえば社内向けに「事業の方向性を共有して一致団結したい」という目的を持って作成するのであれば、事業のビジョンや目的、事業戦略、人材育成計画などの記述に注力するのがおすすめです。従業員のモチベーションアップや、自分がするべき業務が分かる内容にします。

一方で金融機関向けに「融資をしてもらいたい」という目的で作成する場合は、事業戦略や収支計画、資金計画、想定リスクと対応策に重点を置きます。なぜ資金が必要なのか、返済できる見込みはあるのか、万が一のときの対応策まで分かる内容にしましょう。

多くの人から意見をもらう

作成した事業計画書は、創業メンバーや支援者など可能な限り多くの人に読んでもらい、意見を聞くことでバランスの取れた内容に仕上がります。自分では気付かなかったミスや抜け漏れ、矛盾点、読みにくい箇所なども発見できるでしょう。

事業に関する専門的な知識がある人はもちろん、反対に知識のない人に読んでもらうことで、新たな気付きが見つかる可能性があります。また、事業計画書の読み手に近い立場の人や、日頃から事業計画書を見る立場にある人に読んでもらうと、有意義なアドバイスを得られる可能性が高まるでしょう。

一人で作成すると偏った視点で釣り合いのとれていない計画書になることがありますが、多くの人から意見をもらうことで多角的な視点で作成できます。

必要に応じて修正を重ねブラッシュアップする

多くの人からもらった意見をもとに、必要に応じて修正をします。修正を繰り返して練り上げていくことで、内容の質が向上して説得力アップに役立ちます。

たとえば内容が不十分な箇所は補足し、具体的な記述を加えます。誤解を招くおそれがあるような記述箇所も修正しましょう。説得力に欠ける部分は、客観的な根拠を示します。

事業計画書は、ビジョンや事業戦略、収支計画、人員計画など事業を進めるうえで必要な事項を網羅する必要があります。内容が多いからこそ、それぞれの項目に矛盾点が生じることもあるため、細心の注意をはらって修正を重ねることが大切です。

効率よく作成できる方法を考える

事業計画書の作成にあたっては、書くべき項目やポイントを押さえる必要がありますが、作成方法や作成手順に決まりはありません。計画書に含める内容も多く、作成にはまとまった時間を必要とするため、効率的に作成する方法を考えましょう。

効率的な作成方法として、アプリやソフト、Web上で作成できるツールの活用や、テンプレートの利用などが挙げられます。無料で利用できるものもあるため、活用してみてはいかがでしょうか。

個別の事業計画書に対して作成のアドバイスを受けられると、説得力のある計画書の効率的な作成に役立ちます。相談先としては税理士や中小企業診断士が挙げられます。

そのほかにも資金調達支援サービス会社では、資金調達のサポートだけでなく事業計画書の作成やアドバイスまで行っている会社もあります。資金調達にも悩んでいる場合は、こういったサービスを利用すると効率的です。

 

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資金提供者からの質問の回答を準備しておく

資金提供者は、貸したお金を返済してもらえるのか、出資した金額に相当するリターンがもらえるのかを重視して、資金提供するかどうかの判断をするのが一般的です。資金提供者が不安を軽減するために、想定リスクや弱みに関する質問をすることもあります。

質問に対して説得力のある回答をするには、想定される質問への回答を前もって用意しておくことが大切です。どのような事業にも弱みやリスクは存在するため、それに対してどう対応するのかを的確に述べることが求められます。事前準備しておくことで、いざというときにも冷静な対応ができるでしょう。

事業計画書を作成したときの確認項目

事業計画書ができあがったら、以下の7項目を参考に確認を行い、事業計画書の質を高めましょう。

分かりやすく書かれているか

内容が理解できない計画書は賛同を得られにくいため、読み手の立場になって分かりやすく書くことが重要です。専門用語は避け、業界に詳しくない人でも理解できるような言葉を選びます。専門用語を使わざるを得ない場合は、注釈を入れて読み手がその都度調べなくても済むように配慮しましょう。

必要に応じて表やグラフ、図解を挿入すると、視覚的に分かりやすくなります。事業計画書の冒頭には、内容や要点をまとめたサマリーを作っておくのがおすすめです。最初に概要に目を通してから読み進めていけるため、読み手が理解を深められる効果が期待できます。

具体的な内容となっているか

事業計画書には、会社概要や事業概要、ビジョン、経営戦略、商品やサービスの概要など多くの項目を記載しますが、それぞれ丁寧に、具体的な内容を記述します。抽象的な表現ばかりでは、どんな事業なのか、実現可能であるのかが伝わりません。

いつ、何を、誰に、どの市場で、どのように知らせ、どのように提供するかなど、具体性があるかをチェックしましょう。具体的な記述には数値が必要であり、その数値の根拠の提示も重要です。

市場規模は大きいか

市場規模は売上に影響する重要な要素です。市場規模が大きければ、たとえ市場占有率が低くても、大きな売り上げを獲得できる可能性があります。反対に市場規模が小さいと、市場占有率を高めたとしても十分な売上を見込めません。

年齢層や居住地、職業などターゲットとする顧客の層を絞り込み過ぎると、市場規模が小さくて成長の可能性が低いと判断されかねないのです。

市場規模の推計には、国や地方自治体による統計データを活用するとよいでしょう。市場規模を調べると同時に、その市場は拡大傾向か、縮小傾向かもチェックします。

競合対策は考えてあるか

競合についての内容が薄いと、調査不足であると判断されかねません。調査したうえで他者との差別化を図り、付加価値を付けて対策をします。

インターネット上の情報だけでなく、業界人へのヒアリングなども含めて競合をしっかりと調査しましょう。競合の調査によって、自社の戦略に活用できることもあります。

競合の過去や現在の姿を調べるだけでなく、競合他社が今後どのような動きをすると予想されるのかといった将来を見据えた対策も入れるとよいでしょう。客観的な視点で分析することもポイントです。

数値は根拠を伴っているか

客数や販売数、単価、経費、売上予測など、事業計画書には具体的な数値を盛り込む必要があります。一つひとつの数値に根拠や裏付けがあると、信頼度がアップします。

官公庁による各種統計などの客観性のあるデータや正確な情報を根拠として示すことで、読み手を納得させ、安心させることができるでしょう。

自分だったら内容に納得できるか

事業計画書が完成したら、改めて読み直してみましょう。その際は、自分が金融機関の融資担当者や従業員だったとしたら、内容に納得できるかをチェックします。

記載した数値の整合性はとれているか、ビジョンや経営戦略などの各項目に矛盾点はないか、根拠として提示した情報に信ぴょう性はあるかなど、さまざまな部分を確認して、内容に納得できるかどうかを確かめましょう。

実現性の高い内容か

根拠もなく壮大な目標を掲げた戦略や、事業への思いばかりが強くて非現実的な計画などは、実現できる可能性が低いと判断されてしまいます。実現性が低い事業計画書では信用を得られず、資金調達の成功率も下がってしまうでしょう。

たとえば商品の価格は市場から見て妥当な金額か、客数は同規模の競合他社と比較して極端に違いがないかなどを確認します。客観的なデータに基づいた、根拠のある現実的な計画であるかをチェックしましょう。

事業計画書に関するよくある質問

最後に、事業計画書に関して抱くことの多い疑問点をご紹介します。

何枚ほど必要になる?

10~20ページほどを目安として作成しますが、事業計画書の枚数や文字数に明確な決まりはありません。少なすぎると必要な内容を盛り込めず、多すぎると読み手に負担がかかります。文字数が多ければよいわけではなく、必要な情報を簡潔にまとめることが大切です。

事業計画書の冒頭部分につける要約は、あとに続くページを読み進めるかどうかの判断材料となることもあるため、丁寧に作成します。読み手の興味を引くような内容にし、かつ分かりやすく簡潔にまとめましょう。

創業計画書との違いは?

創業計画書は事業を始めるときに作成する書類で、事業計画書の一つです。創業の動機、経営者のこれまでの経験やスキル、取り扱う商品やサービス、確保している取引先、必要な資金と用途、事業の見通しなどを記載します。

一方で事業計画書は、すでに事業を展開している状態で作成する書類を指します。事業の実績がある状態で作成する事業計画書は、売上などの実際の数値をもとに今後の事業の見通しを説明できる点で創業計画書との違いがあります。

手書きよりパソコンで作成するほうが良い?

手書きがNGというわけではありませんが、パソコンで作成すると効率よく見やすい資料を作成できます。たとえば収益の変動があった場合に、数値を変更する際も修正しやすいです。

事業計画書には必要に応じてグラフや表を挿入しますが、パソコンであればきれいな図表も作成できます。

個人事業主でも作成する必要はある?

一人で事業を進める場合は事業計画書の作成に必要性を感じられないかもしれませんが、個人、法人関係なく、事業をする場合は事業計画書を作成することで、さまざまなメリットを得られます。

まず、事業計画書の作成によって事業の方向性や目標を明確にできます。自分の事業の強みや弱みを認識するきっかけにもなるでしょう。

本人の思うがまま直観的に事業を進めていくよりも、売上予測を立てて収益を上げるためにするべきことを明確にできるようになるため、客観的な事業運営が可能です。

また、融資や補助金の申請の際にも事業計画書が必要となりますので、事前に用意しておくことで役立ちます。

事業計画書がないと融資は受けられない?

融資を申し込む際は、決算書や試算表などさまざまな書類の提出を求められますが、多くの場合はその中に事業計画書が含まれています。提出を求められる場合は、事業計画書の提出が必要です。

事業計画書では、事業のビジョンや内容、経営戦略、データや根拠に基づいて客観的に整理した計画を伝えられます。決算書などのほかの提出書類では分からない、今後の戦略でどのように成長していくのかという成長性や将来性を伝えられます。

何年分の事業計画を書くべき?

何年分作成すべきという明確なルールはありませんが、一般的には3年程度が目安とされています。事業計画書の提出先に期間の指定がある場合は、それに従いましょう。

融資を申し込む場合、返済が終わるまで銀行との付き合いは続くため、1年などの短い事業計画では相手を不安にさせてしまうおそれがあります。3年程度の計画を立てれば、事業が軌道に乗ってからの状況や、季節変動なども含めて計画を示せます。

特定のフォーマットはある?

決まったフォーマットはありません。Webサイトで公開されている無料テンプレートや、事業計画書の作成をサポートするツールを活用すると効率的な作成が可能です。フォーマットを選ぶ際は、使いやすいものや、書きたい項目が含まれたものを選びましょう。

金融機関の融資を受ける際など、特定のフォーマットを指定された場合は従います。日本政策金融公庫の創業融資では、決まったフォーマットでの提出が求められます。

まとめ

事業計画書は、事業のビジョンや内容、事業環境の分析、戦略、商品やサービスの概要、収支計画など、事業の運営に必要なことを簡潔にまとめたものです。

事業内容の明確化や、ともに事業を進める仲間との方向性の共有の際にも活用されますが、融資や出資、補助金の申請といった資金調達の際にも必要とされます。記載するべき内容を網羅し、データや根拠に基づいた説得力のある事業計画書を作成することで、資金調達をスムーズに進められるでしょう。

資金調達支援サービス会社では、事業計画書の作成やアドバイスを含めて資金調達のサポートをしています。創業融資に向けた事業計画書の作成に悩んでいる方は、相談してみてはいかがでしょうか。

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記事・コンテンツの監修者

起業創業開業の資金調達コンサルタント

株式会社ファイナンスアイ(経済産業省M&A支援機関登録済)
代表取締役 田中 琢朗(たなか たくろう)

大手の金融機関・上場企業の財務部門責任者などを歴任し、2014年にファイナンスアイを創業。業界歴30年・創業10年のベテラン。中小企業・個人事業主・起業家と一緒に、現場で泥臭く汗をかいて靴をすり減らして財務を軸に経営者を支援し続け、のべ10,000人以上の圧倒的な実戦経験を持つ。ノウハウを「ファイナンスアイ式メソッド」として確立。中小にはびこる悪質なM&Aの被害をなくすために、M&A支援も本格化。売手・買手のいずれの立場からも真のM&Aを提供。現在も毎月150件以上の新規相談に対応し、毎週セミナーも開催中。日本経済のために今日も邁進しています。

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