プロパー融資とは何?審査基準や必要なものを分かりやすく解説

資金調達-創業融資

プロパー融資とは何?審査基準や必要なものを分かりやすく解説

2023年4月18日

事業を営む際、融資による資金調達は不可欠です。適切なタイミングで資金調達できないと、経営拡大だけでなく、運転資金などが支払えなくなり行き詰まる場合があります。

金融機関からの融資による資金繰り改善は最も一般的な資金調達の方法ですが、「プロパー融資」という種類の融資があります。事業者にとって、プロパー融資を受けることにどのようなメリットがあるのか、プロパー融資の特徴や条件なども含めて紹介します。

少しでも有利な条件で資金調達できるよう、プロパー融資について適切な理解をしておきましょう。

 

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プロパー融資とは?

プロパー融資とは、金融機関からの融資の中でも、サービスや団体の支援ではなく銀行から直接融資を受けることを指します。金融機関と借主の2社で完結する融資です。「2社間融資」と言い換えてもよいかもしれません。

 プロパー(proper)は「正確な・本来の」という意味になります。いわゆる「公式の融資」ということです。

プロパー融資と対になる概念が「信用保証協会の保証付き融資」になります。信用保証協会の保証付き融資は、プロパー融資と異なり、もしも返済が滞った場合、信用保証協会が介入し、貸し倒れの保証をしてくれる「3社間融資」と考えられます。

銀行の融資はプロパー融資と信用保証協会保証付き融資の2種類になります。プロパー融資は個人の教育ローンや住宅ローンとは別のカテゴリで、個人事業主や法人などビジネスを行っている人が受けられる融資になります。

プロパー融資の中には担保や保証人付きのものもありますが、それらをつけるリスクを考えると、信用保証協会の保証付きで無担保無保証人のほうがよいでしょう。

目指すのは「無担保、無保証人、信用保証協会の保証なし」のプロパー融資です。

プロパー融資と保証付き融資の違い

銀行が提供する2種類の融資、プロパー融資と(信用保証協会)保証付き融資の違いを説明します。

プロパー融資は銀行から直接融資を受けるものになりますが、保証付き融資は信用保証協会が連帯保証を行ってくれる融資方法です。

プロパー融資は借主と金融機関の2社の契約で終わりますが、保証付き融資は、借主、金融機関に加えて信用保証協会の同意も必要になります。借主は信用保証協会に保証料を支払います。保証料が発生しますが、返済が滞って貸し倒れになった場合は信用保証協会が残債を肩代わりします。

保証協会へ支払う保証料が、担保や保証人、保険金の代わりになっています。返済できなくなった場合には、信用保証協会が残債の80〜100%を銀行に対して借主に代わって支払います。これを「代位弁済」と呼びます。

代位弁済の後は、信用保証協会が肩代わりしているので、以後の返済は金融機関ではなく信用保証協会に行います。

この事態に陥ってしまうと、借主の信用情報に記載されるため、以後の融資は事実上受けられなくなります。

プロパー融資の金利

プロパー融資は、信用保証協会に支払う保証料がないので、金利が低めになっています。

プロパー融資は大体1〜3%の金利で、保証付き融資の場合、それに1%〜2%程度上乗せされます。つまり、プロパー融資を受けられれば、支払利息が約半分になる可能性があります。これは保証付き融資よりもかなり低く、誰も仲介をしない分(仲介料がないので)安価になります。

事業者側からすると、プロパー融資を受けるメリットはかなり大きそうです。

プロパー融資の審査基準

 プロパー融資は借主にとっては金利が低いというメリットがありますが、金融機関にとっては、貸し倒れ(返済不能)になった場合、そのリスクを全部被ることになります。保証付き融資であれば、信用保証協会が代位弁済してくれますが、プロパー融資にはそれがありません。

 1000万円融資して貸し倒れになれば、1000万円損してしまいます。保証付融資であれば、保証協会の支払いで、ある程度取り戻せる可能性があります。

 借主にメリットが大きいプロパー融資を実施できる基準を考えます。

直近の事業に赤字がないか

赤字事業者へのプロパー融資はリスクが大きくなります。倒産する可能性もあるため、そうなれば返済が不可能になりえるからです。

確定申告書、特に損益計算書は確実に見られると思っていいでしょう。主に最近の事業で赤字があったりしないか、無理な事業計画を行っていないか、黒字の額はどれくらいかなどが確認されます。

事業計画書を確認

プロパー融資をする際には、借主(融資希望者)に対して希望融資額と融資に付随した事業計画書の提出を求めます。

しっかりした事業計画の下に融資がなされれば経営が改善し、返済の可能性も上がります。

事業計画書に対して金額が適切かどうかや、事業計画がきっちり成功しそうかを金融機関は審査します。

返済の流れを確認

 信用保証協会によるリスクヘッジがないので、金融機関側は本当に毎月決まった返済が可能なのか、厳格に査定します。

毎月いくらをどれくらいの期間で返済するのか、などの返済の流れも確認し、無謀な返済スケジュールであれば審査で落とします。借主の事業計画と合わせて、完済まで問題なくできるか、返済の流れについてチェックします。

設立時期

法人設立時期や個人事業主の開業時期が直近なのかどうかを見られる可能性もあります。なぜなら、開業当初はプロパー融資が難しい場合があるからです。事業実績が少ないと、今後も同じような利益を上げられるかが未知数だからです。

そのため、法人設立、個人事業主の開業後、すぐにプロパー融資を申し込むと審査が通りにくい可能性が高くなります。

ただし、最近では開業時や創業後すぐにでも申し込めるプロパー融資を提供する金融機関も増えているので、法人設立、開業後すぐの場合はそういったプロパー融資がないか、お近くの金融機関を探してみるべきです。開業後すぐ利用できるプロパー融資があれば、それと「創業融資」を比較検討してみましょう。

プロパー融資の申し込みに必要なもの

プロパー融資を申し込む際に必要なものをまとめました。これらを過不足なく準備して金融機関へ申し込みます。

プロパー融資申込に必要なモノ

  1.  登記簿謄本(法人のみ)
  2. 決算報告書、確定申告書
  3. 貸借対照表
  4. 月次試算表
  5. 事業計画書
  6. 資金繰り表
  7. 銀行取引一覧表(すでに金融機関から借入がある場合)
  8. 納税証明書(所得税、法人税、住民税、事業税、消費税等)
  9. 借入申込書

銀行によって必要な書類が異なるので、事前に銀行に問い合わせるとよいでしょう。少なくとも法人登記簿謄本や確定申告書、納税関係の書類は確実に必要になります。

プロパー融資のメリット・デメリット

プロパー融資は上記のように信用保証協会の保証料がつかない分金利が下がり、借入にとってはメリットが大きいように思えます。しかし、貸し倒れの際の担保がないので、そこから生まれるデメリットについても知っておかなければなりません。

プロパー融資のメリットとデメリットをまとめました。

プロパー融資のメリット

 プロパー融資のメリットをまとめると以下になります。

  • 金利が低い
  • 事業計画書に合わせればいくらでも借りられる
  • 企業の信用力が向上する
  • 元々の信用力が高ければ担保は不要
  • 審査日数が短い
  • 正式な方法で融資を受けられる

黒字経営で堅実な事業実績を残している事業者にとって、プロパー融資を受けるハードルは高くありません。金融機関側も優良顧客については、なるべく低い金利で多額の借入をしてもらいたいと思うはずで、信用保証協会を通さない分、審査に時間もかからず、有利な条件で資金調達できます。

プロパー融資のデメリット

 一方で、プロパー融資のデメリットも押さえておきましょう。

  • 審査がとても厳しい
  • 用意する書類が多い
  • 返済計画の期間が短めにされやすい
  • 創業すぐは審査が通りにくい

信用保証協会の保証がないため、通常の事業者にとって融資のハードルが高くなります。実績のない事業者にとっては、あらゆる角度から信用保証協会の保証なしで問題ないのかを審査されます。

金融機関側がリスクヘッジのために、返済期間を短めにする傾向にあります。毎月の返済金額は多くなりますが、その返済に耐えられるくらい利益を上げている事業者でないと金利の低いプロパー融資は難しいことになります。

メリット、デメリットを比較し、自社の経営状態がよければ、プロパー融資をスムーズに受けられる可能性が高くなり、メリットを享受できます。

プロパー融資の審査で注意したほうがいいこと

プロパー融資の審査にあたっては、自社の経営状態だけでなく、さまざまな点で注意すべきことがあります。引っかかる点があるのであれば、無理にプロパー融資に挑戦しないことも経営判断になります。

スモールビジネスは審査が通りにくい

スモールビジネスの事業計画書は審査が通りにくい傾向にあります。スモールビジネスとは、個人事業主、フリーランス、小規模事業者など個人の裁量で行う仕事です。

複数の役員がいる株式会社ではなく、小回りの利く個人事業主や小規模企業が行うビジネスで、毎月の売上が安定せず、一気に経営が悪化してしまうリスクがあるため、金融機関はなかなかプロパー融資に踏み切れません。

また、元々スモールビジネスを行っていた会社がビッグビジネスの提案をしても難しい傾向にあります。プロパー融資の審査をスムーズに通すためには、申請前に大きなビジネスを成功させておくことが重要です。

売上の調子がよい時に申し込もう

売上が下り坂の時は担当者に指摘されやすくなるため、売上の調子が良い時に申し込むとよいでしょう。黒字経営が明らかで、十分な返済余力が確認できれば、金融機関の貸し倒れリスクが低いと判断し、プロパー融資に踏み切れます。

信用保証協会から乗り換えはあり?

ありかなしか、といえば、「あり」です。

信用保証協会を利用していてその後にプロパー融資が受かるケースも多いのですが、完全に乗り換えるのではなく信用保証協会も利用し続けるのがおすすめです。

保証料の支払い余力があるなら、信用保証協会とのお付き合いも続けて実績を作っておいた方がいざという時に信用保証協会のサポートが期待できるかもしれません。

双方からの信用を保ち続けて、大金が必要になった場合はどちらからも融資してもらえるようにしておくのが賢い方法です。それぞれコネクションを構築し、維持する重要性がわかります。

プロパー融資についてまとめ

 プロパー融資は信用保証協会の保証なしで、事業者の社会的信用を担保とする融資です。信用があれば、保証料の負担なしで金融機関へ支払う金利のみで融資が可能です。

 保証協会の保証付き融資と比べて、金利負担が約半分になるメリットは大きいのですが、プロパー融資を受けるためには、いくつものハードルを越えなければなりません。

 プロパー融資を受けられるという事実は、その事業者が黒字の優良経営を行っているアピールにもなり、別のプロパー融資も受けやすくなるというメリットもあります。

 プロパー融資が可能かどうか難しいラインの場合、信用保証協会の保証付き融資にして様子を見ながら実績を積む方法もあります。

 プロパー融資は一種のステータスでもあり、経営がいい方向に進んでいるという証にもなります。自社の経営を把握し、チャレンジできるか判断してみてください。

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記事・コンテンツの監修者

起業創業開業の資金調達コンサルタント

株式会社ファイナンスアイ(経済産業省M&A支援機関登録済)
代表取締役 田中 琢朗(たなか たくろう)

大手の金融機関・上場企業の財務部門責任者などを歴任し、2014年にファイナンスアイを創業。業界歴30年・創業10年のベテラン。中小企業・個人事業主・起業家と一緒に、現場で泥臭く汗をかいて靴をすり減らして財務を軸に経営者を支援し続け、のべ10,000人以上の圧倒的な実戦経験を持つ。ノウハウを「ファイナンスアイ式メソッド」として確立。中小にはびこる悪質なM&Aの被害をなくすために、M&A支援も本格化。売手・買手のいずれの立場からも真のM&Aを提供。現在も毎月150件以上の新規相談に対応し、毎週セミナーも開催中。日本経済のために今日も邁進しています。

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