今回記載する事業資金調達のポイントとは、創業期が終わり、確定申告を3期終えた法人、個人事業主様向けの内容となります。
創業期の融資では、実は銀行は財務判定を行うことが出来ません。財務判定には3期分の決算書が必要となるためです。
3期分の決算を終え、ようやく本格的に銀行と事業の実績に基づいた、積極的な融資申し込みを行えるようになります。
しかし、実際は銀行に決算書を提出し、銀行から言われるがままの金額、条件にて融資を受けているのではないでしょうか。またこちらからアクションを行い、融資金額や条件等を良くすることは出来ないと考えている方が多くいらっしゃるのではないでしょうか。
本来、融資を受けるとは、経営における重要な項目の「人」、「モノ」、「金」の「金」についての調達を行うことで、経営者自身が事業の目的や目標に基づき、積極的に銀行に働きかけを行うものです。
働きかけを行おうとしても、経営者が銀行について何も知らなければ、どのように働きかければよいのかすらわかりません。今回は、経営者が知っておかなければいけない銀行側の知識の解説を行います。
決算書をどのように銀行が見るのかを知ろう1
銀行の判断基準1 返済可能な金額の算定
銀行は、原則、過去の実績に基づき、まず「どの程度の返済が可能であるか?」を判断しています。銀行が融資の返済で期待することは、「利益」の中から「返済」を行うことで、つまり、どの程度返済できるかという判断はどの程度利益を上げることができるのか?ということと同じ意味となります。銀行が「返済可能な金額」を判断している主な項目は何になるのでしょうか。
当期利益+減価償却等
当期利益は納税後の利益であり、これにキャッシュが出ない費用の減価償却等を加えた金額が返済の原資となります。この金額が年間の元本返済と比べどのようになっているかが判断のポイントとなります。
経常利益額、経常利益率
経常利益は企業自体の利益を表す数値です。この経常利益や利益率が、過去からどのように推移しているか、また業界平均と比較し乖離していないかが判断のポイントとなります。
銀行の判断基準2 借入金額の上限の算定
よく、事業規模と比較し、借入が大きいので融資は難しいというような厳しいコメントを銀行の担当者から聞かれた経営者もいらっしゃると思います。この銀行が考えている事業規模と借入の上限を判断している主な項目は何になるのでしょうか。
年商の30%(設備投資が大きい企業の場合、もっと比率は大きくなる)
業種、業態により異なりますが、一般的に借入総額は売上の30%程度にとどまることが財務面の観点からは望ましいとされています。
有利子負債キャッシュフロー倍率
有利子負債キャッシュフロー倍率とは、借入総額を1年間に返済できる金額(当期利益+減価償却等)で割ったもので、年間生じる余剰資金を全て返済に利用した場合、何年で完済できるキャッシュを生み出せるかという基準になります。この項目は一般的には10年以内が望ましいとされています。
銀行の判断基準3 財務の健全性
融資を受けた場合、返済期間の多くは1年以上となります。つまり、銀行は融資を行うために、融資先の今だけでなく将来も事業を安全に継続できるかを判断する必要があります。
銀行が行う、財務内容が健全であるかの判断をしている主な項目は何になるのでしょうか。
売上、営業利益の推移
売上、営業利益が増加傾向にあるのか、減少傾向にあるのか。
純資産の状況
会社は資本金に加え、毎期計上した利益が資本の部に加算されていきます。この結果、総資産に占める資本の割合が増加していくことになり、この割合を自己資本比率と呼びます。
逆に毎期赤字を計上している場合、資本の部には損失が計上されます。累積した損失は資本金を上回った状態が債務超過と言われる状態で、健全な財務状態ではないと判断されてしまいます。
ネット有利子負債
借入総額から現預金を差引した金額を、ネット有利子負債と呼びます。
ネット有利子負債は、即座に返済できない有利子負債となり、過大であれば財務の健全性が損なわれていることとなります。
決算書をどのように銀行が見るのかを知ろう2
上記にて説明した通り、銀行は、融資を行おうとしている相手が、「返済できる収益を稼げるか」、「融資を返済する期間、健全な経営を続けられるか」の2点を軸として、決算書の確認を行います。
それ以外の要素として、決算書から、経営者の「人」を見ることもあり、その項目について解説していきます。
役員貸付金
役員貸付金は、代表者および役員に対する貸付金のことです。役員貸付金は非常にやっかいな科目となり、役員から会社に貸付金の返済が行われるまで減少することはありません。
役員貸付金の科目自体、本業以外の資金流出とみなされることから銀行からの評価は低くなり、また年々増加している場合は、経営者が会社と個人の財布を一緒にしていると判断され、融資を受けることの大きな支障になることもあります。
仮払金、立替金
仮払金、立替金については、決算を終えているにも関わらず、未処理となっている科目と銀行は判断します。つまり、決算が適正に行われていない可能性があると考える可能性があり、この科目が大きくなる場合、最悪、融資を受けることが出来なくなる可能性があります。
現金勘定
現金勘定はその名の通り、手元に現金として保管しているお金を示します。事業に現金決裁が必要な業種以外、原則この科目が大きくなることはありません。
よって、現金勘定が必要以上計上されている場合は、決算が適正に行われていない可能性があると考える可能性があり、最悪、融資を受けることが出来なくなる可能性があります。
銀行との関係構築について
銀行との関係構築についてお話をしていきます。ほとんどの経営者が、融資の希望が出たとき、借換等の事務手続きが発生した時等、やむを得ない状況以外で、銀行とコミュにケーションをとっている方は非常に少ないのではないでしょうか。
逆に銀行の立場に立つと、年1回か2回のコミュニケーションでは、決算書以外の情報で自信をもって稟議に記載できる事項は少ないのでは、と考えます。
また銀行は転勤も多く、担当者が3年、上司も3年毎に転勤がある場合、銀行の対応が変わらない期間は最長でも1年半ということになります。
1年半で方針をコロコロ変えられると、経営にも当然支障は出てきます。「前の担当であれば」等々のお話をよく聞きますが、今、良好な関係が構築できていたとしても最長1年半であるとすると、この良好な関係を継続して維持することが、経営にとって非常に需要になってくるのではないでしょうか。
ここから、銀行との良好な関係を維持するためのポイントを解説していきます。
決算説明を行い、今後の事業計画を提示する
確定申告を行ったら、必ず銀行宛に決算報告資料を作成し、説明を行うようにしましょう。また決算の説明だけでなく、進行期の事業計画も説明を行い、自社に対する理解を深めてもらうよう積極的な働きかけを行いましょう。
最低、半年に1回は事業計画の進捗を説明する
事業計画は出すことには意味がありません。途中報告を入れた段階で、初めて自社と銀行との共通認識となります。説明頻度は最低半年に1回は行うようにしましょう。
取引銀行は最低2行と取引する
取引銀行が1行のみですと、情報も限定され、また融資条件についても、銀行の言いなりになってしまいます。取引銀行を増やし、良い意味でのプレッシャーを銀行も感じてもらうことでサービス面の向上や提案の良し悪しの判断を行うことができます。
事業計画の策定について
銀行に提出する事業計画は、特に書式等はありませんので自由に記載することが可能です。
自社で事業計画を策定し、年度の目標を定め、従業員の行動指針にまで落とし込みが出来ている企業は特に大きな支障はないと思います。
しかし、銀行向けに自社の事業計画を策定する場合、その計画は銀行と共通認識を持てるもの、また計画達成時には与信枠の充実等の財務面におけるプラス事項がないと、経営者として時間を投下する意味はないと考えてしまうかもしれません。
このような場合、財務の専門家をアドバイザーとし、一緒に事業計画を策定していくことをお勧めします。
ファイナンスアイの強み
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大切な事は全てお客様と一緒に戦った実戦経験で学びました。
記事・コンテンツの監修者
株式会社ファイナンスアイ(経済産業省M&A支援機関登録済)
代表取締役 田中 琢朗(たなか たくろう)
大手の金融機関・上場企業の財務部門責任者などを歴任し、2014年にファイナンスアイを創業。業界歴30年・創業10年のベテラン。中小企業・個人事業主・起業家と一緒に、現場で泥臭く汗をかいて靴をすり減らして財務を軸に経営者を支援し続け、のべ10,000人以上の圧倒的な実戦経験を持つ。ノウハウを「ファイナンスアイ式メソッド」として確立。中小にはびこる悪質なM&Aの被害をなくすために、M&A支援も本格化。売手・買手のいずれの立場からも真のM&Aを提供。現在も毎月150件以上の新規相談に対応し、毎週セミナーも開催中。日本経済のために今日も邁進しています。