「国民生活金融公庫」という金融機関を聞いたことはありますか?過去に政府系金融機関として中小企業や小規模事業者への融資を行っていたところです。
国民生活金融公庫とはどのようなものなのか、世間では「こっきん」と呼ばれている理由を、今回解説していきます。ぜひ参考になさってください。
国金(こっきん)とは国民生活金融公庫のこと
国金は、国民生活金融公庫の略称です。中小企業金融公庫などと同じ政府系金融機関の1つとして知られています。
しかし現在国金は存在していません。さまざまな公的部門の民営化や統合と同様に国金も大きく変化しました。
2008年に国民生活金融公庫が解散し、中小企業金融公庫、農林漁業金融も同様に解散し、「株式会社日本政策金融公庫」に業務移管されました。
主な業務内容は、中小企業や小規模事業者、個人事業主への資金貸付けになります。「○○銀行」など他の民間金融機関と比較すると、利息が低いことが大きな特徴になります。
日本政策金融公庫も民間金融機関ではありますが、郵便局→ゆうちょ銀行のように公的色彩が強く、国や政府が発足した金融機関になります。
日本政策金融公庫には他の金融機関にはない特徴があります。それを以下で紹介します。なお、日本政策金融公庫には中小企業事業(旧中小企業金融公庫)管轄と国民生活事業(旧国金管轄)があり、後者の方が小規模事業者向けです。
今回は「日本政策金融公庫」として表記いたします。
個人事業主、法人として会社設立しての商売
日本政策金融公庫は、50種類以上もの貸付制度があります。多様なメニューの中から自社の経営状況や業種・業態などにあわせた融資制度の選択が可能です。
利率も低く、民間金融機関、あるいは消費者金融に依頼する前にぜひ日本政策金融公庫に相談しておきたいところです。
最大14億4,000万円まで融資を受けられる
日本政策金融公庫の融資可能額は最大14億4,000万円までとなっています。非常に高額の融資が可能なので、設備資金など多大な投資を考えている方はぜひ日本政策金融公庫に相談してみてください。
ただし、全部のメニューの上限が14億4000万円ということではなく、貸付制度によって異なることにも注意してください。
中小企業だけでなく個人事業主も融資を受けられる
日本政策金融公庫からの融資は、個人事業主でも受けられ、かつ審査の厳しさも中小企業と変わりません。むしろ、民間金融機関で断られるような厳しい個人事業主を助けるのが日本政策金融公庫の融資制度です。
そのために貸し倒れ覚悟で、税金の投入も行っています。審査のポイントも減点評価ではなく、少しでもポジティブな要素を考慮してあげる加点評価になっています。
そのまま倒産してしまうよりも、多少審査を緩くしても、お金を貸した方が最終的に倒産リスクは減るというのが日本政策金融公庫の考えになります。
日本政策金融公庫(こっきん)(旧 国金(こっきん))の融資を受ける流れ
日本政策金融公庫の融資を受けたい場合、どのような手続きをするのでしょうか?融資を受けるまでの流れをまとめました。
開業地を管轄している日本政策金融公庫の支店を訪問する
日本政策金融公庫は全国各地に支店を持ってますので、支店を訪問し、まず融資を受けたいことを伝えてください。
窓口は9時〜17時まで開いています、15時に閉まる民間金融機関と比べて利便性もあります。
必要書類を提出する
訪問前に用意しておいた、「借入申込書」をはじめとした必要書類を提出してください
主な必要書類は、
主な必要書類
- 借入申込書
- 住民票の写しまたは 住民票記載事項証明書
- 運転免許証または パスポート
- 源泉徴収票または 確定申告書(控)
- 商業登記簿謄本(法人のみ)
- 預金通帳や領収書など お支払い状況のわかるもの
- 事業計画書、創業計画書(創業融資の方)
などです。
担当者と面談する
書類提出から約1週間後、日本政策金融公庫の担当者と面談します。面談では、審査基準に満たなかった人も面談時の印象で逆転することもあります。減点法ではなく加点法である日本政策金融公庫の融資制度の特徴をうまく活かしてください。
質疑応答のための準備をしておくと良いでしょう。民間のサービスでは、融資経験者が「模擬面接」をしてくれるところもあります。
融資を行うかどうかの審査が行われる
融資の審査期間はおよそ1週間〜2週間程度かかります。半月ほど見ておくとよいでしょう、即日融資や数日以内に融資というわけにはいきません。
審査に当たっては「実訪」といって、実際に申請住所で業務を行っているか、本当に実在する住所なのかを日本政策金融公庫の社員が訪問し目で確認することも行われます。
商業登記簿謄本や住民票などの書類があるため、虚偽はないはずですが念のためこのような策が講じられます。
融資が決定する
郵送にて結果が届きます。融資の審査に通った場合、結果とともに借用証書をはじめ返送すべき書類が同封されているため、内容を確認し返送します。
融資を受ける
返送した書類を日本政策金融公庫が確認し次第、指定の口座へ融資金が振り込まれます。なお、日本政策金融公庫に預金口座はありません。民間金融機関の口座を融資の振込先、および返済の引き落とし先に指定することになります。
こっきん(日本政策金融公庫)の融資で審査に落ちる原因6つ
日本政策金融公庫の審査は民間金融機関と比べて緩く、少しでも厳しい事業者を税金投入してでも助けるのが原則です。
加点法による評価ですが、それでも落ちてしまうことがあります。その時の理由はどのようなものなのでしょうか?
1.個人の信用情報に問題がある
日本政策金融公庫も金融機関で「融資」になるので、信用情報照会があります。信用情報に問題がないか確認し、お金を貸しても問題ないかチェックします。
カードローン残高が残っていたり、ローンの滞納などがあったりすると不利になります。消費者金融からの借入、自己破産歴なども当然チェックされます。
しかし、民間金融機関と違い「信用情報ブラック」即アウトではありません。事情によっては融資が通る可能性もあるため、申し込みの際に正直に信用情報ブラックになった理由を話した方が良いでしょう。
2.公共料金や税金の支払いに遅延がある
日本政策金融公庫は国民の税金によって運営されています。したがって、国民の義務である納税を果たしていない人は審査に落とされます。
やむにやまれぬ事情がある場合も、考慮されるのは税金の滞納よりも既存借入の遅れです。それだけ税については厳格に審査します。所得税、法人税、住民税、事業税を確実に期日までに納めることが必要です。
電気やガス、水道などの公共料金についても必ず支払ってください。黙っていればわからないのでは?と思われるかもしれませんが、事業資金の出入りをチェックされています。公共料金についても滞納がないようにしてください。これが払えない人は返済も怪しくなるからです。
3.自己資金がない(創業融資の場合)
事業資金は特に会社の場合自己資金と関係ないのでは?と思われるかもしれませんが、自己資金がゼロのようなケースでは審査に落ちてしまいます。
特に「新創業融資」など開業資金を借りる創業融資の場合は、創業資金総額の10%の自己資金がなければ、融資の申し込みすらできないのでチェックしてください。いかに創業計画が優れていても、自己資金が皆無な人には融資できません。
4.経営計画に矛盾がある
特に創業融資の場合に顕著ですが、融資の目的に明確な根拠がなかったり、向こう数年の事業の伸びにかかわる数字と現実の経営状況に矛盾があったりする場合は、審査に落ちる原因になり得ます。
5.融資の面談時に説明ができていない
日本政策金融公庫の担当者との面談時、ご自身が提出した書類、資料の内容について説明できない場合、この人は自分の事業についてわかっていないのでは?という評価になり、審査落ちの可能性が出てきます。
6.2回目のコロナ追加融資は審査が厳しくなる
コロナ関連の追加融資の場合は、2回目になると審査も厳しくなります。さまざまなコロナ規制が撤廃され、コロナを対象とした補助金もなくなりつつある中で、2回目のコロナ融資を希望する場合、相応の(不可効力的な)説得力ある事情説明が求められます。
日本政策金融公庫(こっきん)の融資で審査に落ちた場合の対策
日本政策金融公庫に融資で審査落ちしても、原因を把握し、しっかり対策すれば再び資金調達にチャレンジできます。あるいは日本政策金融公庫の融資ではない方法を考えるか、どうすればよいでしょうか?
原因を把握し改善する
なぜ審査落ちしてしまったのか、必ず原因が存在するため、まずは原因を把握して、その原因を除去できるようにします。
個人で原因を把握できない場合は、専門家(経営コンサルタントや商工会議所)に相談しましょう。
半年後に再申請するための準備をする
審査落ちしてすぐに再申し込みしても、根本的な原因が解決されない中では同じことを繰り返してしまいます。半年以内に再申し込みしても審査に落とされる可能性が高いです。
半年以上の準備期間を設け、必要に応じて、財務のプロに相談し、過去に問題となったポイントが解決されていることを確認した上で、再申し込みを行うのが良いでしょう。
自己資本比率を高める
現預金や資本金など自己資本がないと「安全性が無く、いつ潰れてもおかしくない」と判断されます。自己資本はいざという時にすぐに使えるキャッシュです。
この自己資本比率が高い事業者は、いざとなっても自己資本を返済原資に充てられるので、融資に通りやすくなります。
売掛債権を売却する(ファクタリング)、自身の所有物を資産とする、家族の通帳コピーを提出したりするなどして自己資本比率やそれに相当する数字を上げてみましょう。
認定支援機関を利用する
経営に関するアドバイスが可能であると国から認められた「認定支援機関」を利用して、セミナーや経営指導を受けます。
規定の講習を超えると、日本政策金融公庫の融資利率が下がる、特定の補助金受給資格が得られるなどメリットが大きく、融資を利用しないケースでもぜひ受けていただきたい公的スキームになります。
その他の融資を検討する
民間金融機関や自治体の制度融資を申し込みます。しかし、日本政策金融公庫の融資審査基準は全金融機関の中でも最も緩いカテゴリになります。これより審査が緩いのは、消費者金融系のビジネスローンくらいです。
日本政策金融公庫の融資が利用できない段階で、他の融資による資金調達はかなり難しいと認識ください。ファクタリングなど他の資金調達方法を考えるか、経営そのものの大幅な見直しが不可欠です。
日本政策金融公庫(こっきん)の融資についてまとめ
日本政策金融公庫の融資は、政府系金融機関ということもあり、政策的に厳しい環境にある事業者に貸し倒れ覚悟で融資している面があります。
経営が順調な事業者が利用しても全く問題なく、むしろ資金調達に詳しいと高評価になります。
日本政策金融公庫の融資の種類の多さ、金利の低さをぜひ知っていただき、積極的に活用してください。
日本政策金融公庫を上手に活用できるようになると経営者として有能な印象を持たれるでしょう。政府系金融機関のメリットをぜひ活用してみましょう。
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株式会社ファイナンスアイ(経済産業省M&A支援機関登録済)
代表取締役 田中 琢朗(たなか たくろう)
大手の金融機関・上場企業の財務部門責任者などを歴任し、2014年にファイナンスアイを創業。業界歴30年・創業10年のベテラン。中小企業・個人事業主・起業家と一緒に、現場で泥臭く汗をかいて靴をすり減らして財務を軸に経営者を支援し続け、のべ10,000人以上の圧倒的な実戦経験を持つ。ノウハウを「ファイナンスアイ式メソッド」として確立。中小にはびこる悪質なM&Aの被害をなくすために、M&A支援も本格化。売手・買手のいずれの立場からも真のM&Aを提供。現在も毎月150件以上の新規相談に対応し、毎週セミナーも開催中。日本経済のために今日も邁進しています。