経営ハック-アメフトNFLの哲学に学ぶ経営
世界最大のスポーツ産業である『アメフト・NFL』は、どのようにして国連の年間予算を上回る35億ドル以上もの放映権を獲得できる巨大産業へと進化してきたのでしょうか?今回からは、アメフト/NFLの成長の根幹にある『3つの哲学(フィロソフィー)』について書かせていただきます。
第1の哲学~チームの利益ではなく、リーグ全体の発展を目指す
アメフト/NFLのチームはチーム全体として、『どのようにすればリーグ全体が盛り上がるか』について徹底的に考えています。
そのため、戦術面での情報共有や、ランク下位のチームからドラフトをかけることのできる”ウェーバードラフト制度”を導入する事により、毎年どのチームが優勝するか分からない状況を作り上げ、リーグ全体を盛り上げています。
このような哲学は、他のスポーツ産業にはなかなか見られません。野球やサッカーなど多くのスポーツ産業の場合、如何に自チームの力を強くするかに注力しています。どこか一つのチームだけが発展する一方で、他チームが衰退するという『弱肉強食』の思考だけでは、リーグ全体の発展が損なわれ、結果としてファンの母数が少なくなります。こうなると、リーグ全体が崩壊してしまうので、どれだけ強いチームを作っても業界全体が衰退していきます。
<経営者の場合>
企業経営において、この『哲学(フィロソフィー)』を取り入れるにはどうすれば良いのでしょうか?
例)営業部内に複数の部隊が存在し、各営業部隊にリーダーが居る場合
営業部隊と企業の関係をアメフト/NFLに置き換えると、次のように考える事ができます。
- 各部隊の営業マン・・・選手
- 営業部隊・・・チーム
- 企業・・・リーグ
多くの企業において、自分の営業部隊が他部隊より成績を挙げた場合、インセンティブが多く払われるというシステムが設定されています。そのため、他の営業部隊からの引き抜きや、企業や他営業部隊やスタッフの成長を考えると、本当はローテーションした方が良い人材でもリーダーが手放さないという事が多々見受けられます。実際に私が務めていた銀行でも基本は2、3年に一回は、転勤があるはずなのに支店長や上席の方が手放すのを拒み、10年以上同じ支店にいる方もいらっしゃいました。
リーグ全体(企業全体)のことを考えれば、優秀な営業成績を収めている上位営業部隊の中から数名下位営業部隊に異動し、営業ノウハウを共有する方が、各営業部隊が強化され、会社全体の売上/利益は伸びます。
しかし、多くのリーダーは、自分の営業部隊が優秀な成績を収める事しか考えていません。優秀な営業スタッフの異動を拒むどころか、最悪の場合はノウハウや情報の共有すらしません。このようになると、上位営業部隊のノウハウは共有されず、下位営業部隊の成長をスムーズに促す事ができなくなります。
このように優秀な営業成績を収めている上位営業部隊のノウハウが共有されない場合、営業組織全体の底上げがされないため、企業全体の売上/利益も落ちて行きます。企業全体の売上/利益が落ちていくと、上位営業部隊に対するインセンティブも下がっていきます。そうなると、上位営業部隊のモチベーションも下がり、競合他社からの引き抜き等で営業力が大幅にダウンします。
このような事にならないためにも、経営者の方は、常に社内の各組織が企業全体の成長につながるように機能しているのか、目を光らせておく必要があります。また、企業全体の成長につながるように、あらかじめ組織体系・指示系統・人事制度・評価制度など様々な組織マネジメントを設計して実行して行かなければなりません。
アメフト/NFLの『チームの利益ではなく、リーグ全体の発展を考える』という哲学(フィロソフィー)を使い、全スタッフが企業全体の利益を考えられる組織作りをしていきましょう。さらに思考を発展させて、自社の事だけではなく、業界全体を発展させるためにどうすれば良いかも考えていきましょう。業界が成長すると、結果として自社の売上/利益も伸びていきます。虫の目にならず、常に鳥の目を持つよう心がけるようにしてください。