起業創業のスタートアップベンチャーにとっては、まず事業資金が必要です。どのような資金調達を行うかは起業創業するスタートアップ・ベンチャーには重要な問題です。資金調達の方法は主に、出資・融資・個人借入・補助金・助成金などがあります。それぞれの資金調達方法について、メリット・デメリットをまとめて解説します。
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会社が行う資金調達の2分類
会社の資金調達方法は大きく2つに分けられます。
負債(デット)
返済する必要のある資金調達です。日本政策金融公庫・信用保証協会・金融機関等、第三者から融資借入をする方法。
株主資本(エクイティ)
返済する必要のない資金調達です。新株券の発行等により出資を受け入れて資本を増やす方法。
起業創業したばかりのスタートアップベンチャー企業が、株主資本(エクイティ)で資金調達をするのは難しいでしょう。
そこで、日本政策金融公庫・信用保証協会・金融機関等から融資借入(負債・デット)の手段を用いるケースが多いです。
「融資」というと借入・借金というマイナスイメージが先行する経営者もいるかもしれませんが、株式会社経営の要となる資本政策に影響せず、
計画的に返済していく経営を行うという事は、財務面でも堅く安定した企業に成長していけます。
財務基盤を安定させて強い企業になった後、必要なステージに併せて株主資本による資金調達も含めて検討していきましょう。
融資・借入による資金調達
融資には5つの目的があります。
- 融資は、事業展開するための資金調達
- 融資は、成長スピードを得るための資金調達
- 融資は、スケールメリットで商売のチャンスを得るための資金調達
- 融資は、返済実績(クレジットヒストリー)という信頼を得るための資金調達
- 融資は、つなぎとなる運転資金のための資金調達
必要な時になってから動いても、なかなか希望通りの資金調達は行えません。余裕がある今のうちに、資金調達の方法を知り、動いていきましょう。
融資の資金調達方法|銀行・信用金庫から
融資といえば、銀行や信用金庫等の金融機関からの融資をイメージされると思います。
しかし、銀行・信用金庫からの融資を受けるいわゆる「プロパー融資」は、起業創業したばかりのスタートアップベンチャー企業では厳しいです。
まだ融資返済実績が無い企業は、信用保証協会などが保証会社になり、銀行・信用金庫がリスクヘッジをした融資になります。
この場合、審査は銀行だけではなく、保証会社の審査が必要になります。
銀行からの融資
銀行から資金を融資借入します。返済実績がなく信用上の懸念から、起業創業したばかりのスタートアップベンチャー企業に対して、大手銀行は融資を実行しません。
銀行融資のメリット
- 大手銀行メガバンクの場合支店が多く利便性が高い
- 融資実行金額が高くできる
- 会社の信頼度が上がる
銀行融資のデメリット
- 起業創業当初の企業では利用が難しい
- 金利負担が発生
信用金庫からの融資
信用金庫からの資金を融資借入します。地元の信用金庫毎に条件は異なりますが、銀行より融資のハードルは低いです。
決算書も何期か終えた次のステージで検討していきましょう。また、後述する「制度融資」を利用した取引が有効です。
信用金庫は、その設立経緯から特に地場の企業が活用していく資金調達です。
信用金庫融資のメリット
- 顧客やビジネスパートナー等の紹介、経営に役立つ情報提供等をしてもらえる
- 会社の信頼度が上がる
信用金庫融資のデメリット
- 起業創業当初の企業では利用が難しい
- 金利負担が発生
融資の資金調達方法|日本政策金融公庫(国民生活金融公庫)
日本政策金融公庫(国民生活金融公庫)には、国民生活事業と中小企業事業がありますが、起業創業のスタートアップベンチャーは、国民生活事業の「新創業融資制度」に申し込みできます。他に「新規開業資金制度」もありますが、まずは「新創業融資制度」をお勧めします。
起業創業当初のスタートアップベンチャーには、信用力も企業力もありません。しかし、日本政策金融公庫の融資制度では無担保無保証で融資を受けれる可能性があるためです。
「新創業融資制度」の審査は厳しいですが、融資額も大きく融資申請を検討しましょう。
経済産業省中小企業庁認定機関ファイナンスアイでは、資金調達成功率98%以上
新創業融資制度をファイナンスアイが支援した資金調達成功率は99.8%以上
新創業融資制度の概要
融資上限 3,000万円
金利 1.25%~3.00%
設備資金:15年以内、運転資金:5年以内
※借入金額は事業計画、自己資金などにより決定
新創業融資制度のメリット
- 起業創業する前から申請できる
- 無担保・無保証(融資制度による)
- 申請から融資決定までの期間が早い(2週間~1カ月程度)
- 信用力が上がる
新創業融資制度のデメリット
- 金利が発生(低金利のため有利)
融資の資金調達方法|信用保証協会を利用した制度融資
信用保証協会が提供している制度融資も、起業創業当初のスタートアップベンチャーには有効な資金調達です。
これは銀行・信用金庫等の民間金融機関の融資に対して、信用保証協会が信用保証をしてくれるため、融資を受けやすくなっています。
自治体によっては、行政が支払利息や保証料を負担してくれるところもあります。
信用保証協会制度融資のメリット
- 起業創業する前から申請できる
- 無担保・無保証(融資制度による)
- 自治体が支払利息や保証料の一部を補助。(自治体により異なる)
- 信用力が上がる
信用保証協会制度融資のデメリット
- 申請から融資決定までの期間が長い(少なくとも1カ月)
- 金利が発生
- 保証料が発生
融資の資金調達方法|マル経融資
マル経融資とは、全国の商工会議所が提供している融資制度です。
通常の融資の中で低い水準の金利で提供されており、起業創業時に信用保証協会の制度融資や日本政策金融公庫の融資で資金調達をしたスタートアップベンチャーが、事業を営み1年後にマル経融資の申請をし、借り換えをするとよいでしょう。
マル経融資のメリット
- 利息が低い
- 無担保・無保証(融資制度による)
マル経融資のデメリット
- 起業創業後1年以上の実績が必要
融資の資金調達方法|ノンバンクなどのビジネスローン
起業創業時のスタートアップベンチャーが何処からも資金調達ができずに、ノンバンク融資に頼るのはお勧めできません。
ノンバンクなどのビジネスローンは他と比べて金利も高く、短期ローンの場合が多いからです。
ただし、中小企業の経営を進めていくうえでは、有効な資金調達になる場合が多いです。
一時的な運転資金を補填するための”つなぎ融資”や、他行での低金利・長期融資への借り換えも計画したうえで利用する等、他の融資制度よりはハードルが低い場合が多いため、計画的な資金調達の一つとして考えておきましょう。
融資の資金調達方法|友人・知人・親族からの借入
資金調達の手段としては、こちらも忘れてはいけません。意外に思われるかもしれませんが、今となっては誰もが知る大手ネット企業の社長達も最初はここから始めた所が多いです。知人や親族らから借入をするという事は、さらに事業に対する「覚悟」も磨かれます。必ず成功させなければならないという覚悟を持てたなら、夢のある事業計画よりも、堅実で現実的な事業計画を練り上げましょう。
友人・知人・親族からの借入のメリット
- 自由な条件で契約交渉が可能
友人・知人・親族からの借入のデメリット
- 身内とリスクを共有する
資金調達方法|助成金・補助金 創業促進補助金
起業創業時のスタートアップベンチャーが受けられる助成金・補助金は、返済の必要がないお金ですので、自社の条件とマッチしているものがあれば全て申請しておきましょう。
特におすすめするのが経済産業省系の補助金に「創業促進補助金」があります。
金額上限200万円、補助率2/3
申請には認定支援機関の確認書が必要です。
※認定支援機関とは、中小企業経営力強化支援法に基づいた中小企業支援で高い専門性を持つと認定された支援機関の事です。
認定支援機関は申請書の作成から、補助機関中・終了後もサポートを受けられるので、認定支援機関は積極的に活用しましょう。
ファイナンスアイは財務省中小企業庁認定経営革新等支援機関としてサポートしています。いつでもご相談下さい。
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創業促進補助金のメリット
- 創業前・創業後いずれでも申請できます。
- 基本的に返済の必要がありません
創業促進補助金のデメリット
- 公募には期間がある
- 採択率は直近で3割程度と厳しい
- 補助金の支払は後払いになる
- 補助対象経費の種類に制限がある
資金調達方法|助成金・補助金 再就職手当
再就職手当は厚生労働省管轄の補助金で、雇用保険の受給資格者が再就職する際に受け取れる手当です。この”再就職”には、スタートアップベンチャー等を起業創業する場合も含まれています。
再就職手当のメリット
- 申請対象者(前職の退職日から原則として1年以内に起業創業する人)であれば、いつでも申請可
- 要件を満たしていれば受給できる
再就職手当のデメリット
- 支給申請書の期限が短い。(起業創業した日の翌日から1カ月以内に支給申請書を郵送)
- 自己都合で退職した場合、待機期間満了後1ヶ月を経過した後の起業創業でないと支給対象にならない
資金調達方法|個人投資家(エンジェル)
最近は日本でも個人投資家(エンジェル)が増えてきています。個人投資家(エンジェル)らの多くは、既に自らも事業を営み成功を収め一定以上の富を手にしています。起業創業時の資金調達としては慎重になりましょう。それは、出資という形で資金を入れるうえでは、会社の資本政策に大きく関わり、今後も経営に影響を及ぼすからです。
出資による資金調達方法|ベンチャーキャピタル
資金調達としては、ベンチャーキャピタルからの資本への出資も選択肢に入ります。最近のネット関連企業には、スタートアップベンチャーであっても大型投資を受けたというニュースが日々目にすると思います。ただし、ベンチャーキャピタルとしてのビジネスを成り立たせるために、投資後にイグジットで収益を上げなければなりません。
そのため、事業の将来性・実現性と大きな規模があり、売却または上場などによるキャピタルゲインのイグジットが描けなければ投資対象にはなりません。
ベンチャーキャピタルにも様々あり、各ステージに併せて、出資比率・出資方法を検討していきます。
また、株の買戻し状況など、投資契約の各条項もきちんと確認しましょう。
ベンチャーキャピタルからの出資のメリット
- ベンチャーキャピタルや各パートナーからの経営への協力が期待できる
ベンチャーキャピタルからの出資のデメリット
- 既存出資者の保有株比率が下がる
- 経営の自由をある程度奪われる
1.シードステージの投資
事業を開始していないスタートアップ、事業計画段階の企業に対しての投資が、このシードステージになります。
金額は主に、100万円~500万円ぐらいが相場です。
2.アーリーステージの投資
ある程度事業を進められているベンチャー企業が、今後の拡大成長のための投資が、このアーリーステージになります。
金額は数百万円~数千万円程度
3.ミドルステージの投資
既に事業が軌道に乗り、これから上場も視野に入れた会社運営が必要な企業に対する投資が、このミドルステージになります。
金額は数千万円~数億円程度
4.レイターステージの投資
上場を考え、または上場寸前に企業価値を上げておくための投資が、このレイターステージになります。
金額は数億円~数十億円程度
資金調達方法|クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、アイデアや企画に対して、広く多くの個人から投資を募る仕組みをさします。
寄付型や融資・投資型等、クラウドファンディングにも様々な形態があります。
社債による資金調達方法|少人数私募債
起業創業時のスタートアップベンチャーでは、あまり聞きなれない資金調達方法かと思います。
社債は、公募債と私募債の2つに分類されます。
公募債
金融機関などの機関投資家が有価証券として発行し、資金を集めていく方法になります。
私募債
50人未満の引受先に対して、総額1億円未満の社債をさします。
私募債は、金融機関などの機関投資家らの協力なくても発行できます。
主な引受先は、経営者、経営者の親族、知人、従業員、取引先などになります。
私募債のメリット
- 取締役会決議のみで発行可である。
- 償還期限・利息・発行金額等が自由に設定できる。
- 担保や保証人が不要。
- 自治体の制度では、利子補給等の優遇策がある。
- 社債管理者の設置が不要。
- 金融商品取引法で義務づけられている有価証券届出書等の届出が必要ない。