会社を設立する際には専門家に依頼するというのが「当たり前」になっていますが、当然高い専門家報酬を取られてしまいます。実は会社設立は自分で行えます。法的知識も必要ですが技術的なものが多いので、しっかり事前に準備をすれば大丈夫です。
今回は自分で会社を設立する際の手続き、流れ、費用などについて説明します。
自分で会社設立を行うメリット・デメリット
会社設立は、専門家に頼らずに自分で行うことも可能です。ポイントを押さえれば余計なコストをかけずに会社を設立できます。
自分で行う場合は、以下のようなメリット・デメリットがあるので押さえておきましょう。
会社設立を自分で行うメリット
会社設立を自分で行うメリットは以下の3点です。
自分で行うメリット3点
- コストカットできる
- 会社の規定や設定を自ら決めることができる
- 税金から会社運営についての知識が身に付く
会社設立に際しては法務や税務を否応なしに勉強する必要があります。その過程で会社法や税法、経営一般についてより深く学ばざるを得ません。
また、会社設立を専門家の弁護士か司法書士に依頼すると数十万円の専門家報酬を支払うことになります。
定款作成、定款認証で10万円〜20万円、会社設立登記代行でさらに10万円〜20万円の専門家報酬がかかります。特に弁護士に依頼すると、合計50万円ほどかかることがありますので、自分で会社を設立できるなら、このコストを削減できます。そしてその費用を資本金に回した方が良いでしょう。
会社設立を自分で行うデメリット
一方、自分で会社を設立するデメリットについても知っておきましょう。大きなデメリットは以下の3つです。
会社設立のデメリット3点
- 会社設立には時間や労力がかかるためコア業務が疎かになる
- 不慣れな作業によりミスが発生するリスクがある
- 経験がないと調べながら対応することになる
定款や会社設立登記書類に不備があるかもしれません。その場合やり直しになり、その間の時間やお金が無駄になります。
電子定款作成の場合は専用の端末も必要になります。一生に何回も会社を設立しないのに、そうした機械を揃えるのは無意味ですし、費用も掛かります。
会社設立の手間を考えると自分でやらず「餅は餅屋」といわれるように、専門家に依頼するのが一番良いかもしれません。
自分で会社設立を行う4つの手順
自分で会社を設立するためには、以下の4ステップの手順、手続きをおぼえておきましょう。
自分で会社設立を行う4ステップ
- 会社の概要を決める
- 定款を作成し認証を受ける
- 出資金(資本金)を支払う
- 登記申請書類を作成し法務局へ提出する
事前にしっかりこれらを準備したとしても時間はかかるでしょう。「即日会社設立」は非常に難しいものとご認識ください。
会社の概要を決める
どのような会社にしたいのかまず決定します。具体的には、会社の概要(基本事項)を最初に決めることになります。
会社の概要(基本事項)
- 会社の商号(会社名・店名)
- 所在地
- 事業内容・目的
- 発起人
- 資本金の額
- 役員の構成
- 株主の構成
- 事業年度(決算の区切り)
2006年の「新会社法」制定により最低資本金制度がなくなり資本金が0円でも会社を設立できるようになりました(「1円会社」)。
しかし、「会社を続けていくこと」を考慮すると、開業資金と3ヶ月分の運転資金がないと経営は難しく、ある程度の資本金がある会社設立が望ましいです。
資本金1円だと実質自己資本がなく、経費の支払いができない状態です。
定款を作成し認証を受ける
定款とは、会社を経営していくためのルール・規則で「会社の憲法」とも呼ばれています。
合同会社設立の場合は定款作成だけで大丈夫ですが、株式会社設立の場合は作成した定款を会社の所在地がある都道府県内で指定公証人が所属する公証役場にて、内容に問題がないか確認を受け、公証人(法務系の公務員)に認証してもらう必要があります。当然その際には公的手続きにともなう費用が発生します。
定款の「絶対的記載事項」
会社設立の際に自分で作成する定款には、以下が絶対的記載事項として必ず含めなければならないものになります。
絶対的記載事項
- 商号(会社名 株式会社○○、△△合同会社など)
- 事業目的
- 本店所在地
- 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
- 発起人の氏名および住所
定款には、紙・電子2種類の提出方法があり、電子定款の方が手数料は0円で無料です。
紙の場合は4万円の収入印紙代がかかります。しかし、電子定款の場合は無料とは言いつつも専用ソフトや機器が必要となるため、その準備だけで4万円を超える可能性があります。
電子定款の作成は、実質、仕事として定款作成をしている司法書士や弁護士(一部行政書士)の作成方法です。自分で会社を設立する場合、紙の定款になることが多いです。
定款認証代は2022年にこれまでの一律5万円から資本金に応じて変更されました。
出資金(資本金)を支払う
会社の基礎的なお金になる資本金を支払います。株式会社であれば、発起人が保有する株数に応じた資本金を金融機関に払い込みます。
合同会社であれば、出資者が持っている個人の銀行口座へ支払います。
自分が代表の会社であっても、口座に預け入れではなく、自分の名前で振り込みします(自分の名前が振込者として通帳に記載されます)。
登記申請書類を作成し法務局へ提出する
会社所在地の管轄法務局にて設立登記手続きを行います。手続きをおこなった日が会社の設立日となりますが、実際に法人登記が完了するのは1週間〜2週間後になります。登記簿謄本を取得できるのも法人登記が完了後になります。
会社設立頭金申請は、資本金の支払い後2週間以内と定められているので注意してください。
設立登記の申請時に準備するもの
会社設立登記時は以下のものを準備します。
会社設立登記時に準備するもの
- 設立登記申請書
- 登録免許税分の収入印紙
- 定款
- 発起人の同意書(発起人決定書、発起人会議事録)
- 設立時代表取締役の就任承諾書
- 監査役の就任承諾書
- 発起人の印鑑証明書
- 資本金の払い込みを証明する書面
- 印鑑届書
- 登記用紙と同一の用紙
自分で会社設立を行う場合にかかる費用
会社設立にかかる費用を一覧で紹介します。
合同会社 | 株式会社 | |
定款印紙代 | 紙の定款:4万円 電子定款:0円 | 紙の定款:4万円 電子定款:0円 |
定款認証代 | 0円 (認証手続きそのものが認証不要) | ①「資本金の額等」(後記*参照)が100万円未満の場合、「3万円」 ②「資本金の額等」が100万円以上300万円未満の場合、「4万円」 ②その他の場合、「5万円」 |
謄本代 | なし | 2,000円(250円×8枚) |
登録免許税 | 最低6万円 資本金の1,000分の7(0.7%)の金額が6万円を上回る場合、その金額 | 最低15万円 資本金の1,000分の7(0.7%)の金額が15万円を上回る場合、その金額が必要 |
資本金 | 最低1円 | 最低1円 |
合計 | 最低6万円+資本金 | 最低18万2千円+資本金 |
社印作成費用 | 約2万円 | 約2万円 |
発起人の印鑑証明書 | 1人につき約300円 | 1人につき約300円 |
会社設立を専門家に依頼する方法もある
会社設立業務を専門家に依頼する方法もあります。法的に会社設立代行業務ができるのは弁護士と司法書士です。
専門家への報酬金額は、大体10万円〜20万円程度です。弁護士の方が司法書士よりも報酬は高い傾向にあります。ただし、弁護士が会社設立代行を行うケースはあまりないようです。
会社設立を依頼できる専門家の種類
会社設立について相談、依頼できる専門家は、以下の5つです。
- 司法書士
- 弁護士
- 行政書士
- 税理士
- 社会保険労務士
会社設立手続き自体を法的に代行できるのは司法書士と弁護士のみです。行政書士は定款の作成のみできます。税理士は会社設立手続き代行はできませんが、税務などの相談に乗ります。提携している司法書士が会社設立手続きを行うこともあります。
社会保険労務士は会社設立後の、就業規則や年金、保険などの手続きを依頼できます。
会社設立後に行うこと
会社設立後に自分で行う必要があることは、主に以下の5つです。
会社設立後に行う5つの事
- 税金に関する手続き
- 社会保険や労働保険に関する手続き
- 役員報酬の決定(3ヶ月以内)
- 法人設立届出書の提出(2ヶ月以内)
- 法人口座・クレジットカードの作成
税金に関する手続き
「法人設立届出書」などの税金関連で必要な書類を、会社所在地を管轄する税務署へ提出します。その際、都道府県の税事務所と市町村役場への届け出も忘れないようにします。
社会保険や労働保険に関する手続き
健康保険や厚生年金保険といった社会保険に加入するため、年金事務所に届出を行う。社長1人だけの会社だとしても、社会保険には原則加入する必要があるので注意してください。
また、他に従業員を雇う場合、労災保険と雇用保険の加入手続きも必要です。労災保険は労働基準監督署、雇用保険はハローワークで手続きをします。こちらの専門家は社会保険労務士です。
社会保険の手続きは自分たちでも可能ですが、社会保険労務士が行っている手続きですので、どうしてもわからないときは相談してみましょう。
役員報酬の決定(3ヶ月以内)
会社設立後、3ヶ月以内に役員報酬の金額を決定します。役員報酬の変更は、自由にできません。原則として事業年度の期首から3ヶ月以内に行われることが多く、通常は定時株主総会のタイミングで改定されます。
役員報酬を開業3カ月以降に変更することも可能ですが、その場合の役員報酬は損金算入できません。損金にできないということは課税所得が増え結果的に税負担も増えます。
法務局での印鑑証明書・登記簿謄本取得
法人の印鑑証明書と新会社の登記簿謄本を取得しておきましょう。
証明書には有効期限があるので、永久に使用可能ではありません。まず正しく登録されているかどうか確認してきましょう。
法人口座・クレジットカードの作成
法人用の口座とクレジットカードを作成します。個人事業主の場合プライベート口座と共用している例もありますが、法人は分けてください。そのために法人の銀行印も作成します。
クレジットカード作成は絶対ではありませんが、amazonなどを使うならばプリペイドカードよりも便利です。カードを持つことである程度会社の信用にもなります。
まとめ
会社設立にはさまざまな手続きが必要で、自分で行うのはかなりの困難がともないます。しかし、自分で行うなかで得られる知識、経験は非常に大きく、会社設立後の経営にも役立ちます。
必要書類を用意してみるところから、できることから進めてみましょう。一部分を専門家に依頼しても構いません。その依頼過程もまた大きな経験になります。
自分で会社を設立すれば、費用面で節約でき、それを資本金に回せます。将来の経営のためにも自己資本である資本金は非常に大きなものです。
会社の将来を展望しながら、自分で会社を設立することにぜひチャレンジしてみてください。
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株式会社ファイナンスアイ(経済産業省M&A支援機関登録済)
代表取締役 田中 琢朗(たなか たくろう)
大手の金融機関・上場企業の財務部門責任者などを歴任し、2014年にファイナンスアイを創業。業界歴30年・創業10年のベテラン。中小企業・個人事業主・起業家と一緒に、現場で泥臭く汗をかいて靴をすり減らして財務を軸に経営者を支援し続け、のべ10,000人以上の圧倒的な実戦経験を持つ。ノウハウを「ファイナンスアイ式メソッド」として確立。中小にはびこる悪質なM&Aの被害をなくすために、M&A支援も本格化。売手・買手のいずれの立場からも真のM&Aを提供。現在も毎月150件以上の新規相談に対応し、毎週セミナーも開催中。日本経済のために今日も邁進しています。