信用保証協会付融資とは?プロパー融資との違いやメリット・注意点など

資金調達-創業融資

信用保証協会付融資とは?プロパー融資との違いやメリット・注意点など

2023年8月2日

これから起業したい、もしくは事業をはじめたばかりなど、事業を行うためには何かと

信用保証協会は、中小企業や個人事業主の融資に対して保証を付与する公的機関です。単体では実績不足で融資を受けられない企業や事業者でも、信用保証協会付融資であれば信用保証協会のサポートのもと、資金調達ができる可能性があります。

この記事では、信用保証協会付融資のプロパー融資との違いや特徴、手続きの進め方や審査を通すコツなどを紹介します。融資による資金調達を検討している中小企業の経営者や個人事業主の方は、ぜひ参考にしてみてください。

 

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信用保証協会とは

信用保証協会は、中小企業や個人事業主の円滑な資金調達をサポートする団体です。事業期間が短い、まだ充分な利益が出ていないなど、実績の少ない企業や事業のスムーズな資金調達を可能にしています。

まずは、信用保証協会の理念や目的、保証の仕組みなどをみていきましょう。

信用保証協会の理念と目的

信用保証協会の基本理念は、次のとおりです。

「信用保証協会は、
(1)事業の維持・創造・発展に努める中小企業者に対して、
(2)公的機関として、その将来性と経営手腕を適正に評価することにより、企業の信用を創造し、「信用保証」を通じて、金融の円滑化に努めるとともに、
(3)相談、診断、情報提供といった多様なニーズに的確に対応することにより、中小企業の経営基盤の強化に寄与し、
(4)もって中小企業の振興と地域経済の活力ある発展に貢献する」

信用保証協会は、中小企業などの事業創造や発展のうえで不可欠な資金調達をサポートし、企業の経営基盤を強化する役割を担っています。また、地域の中小企業を支援することで、その地域の経済発展にも貢献しています。

ここでいう保証とは、負債の調達を行った企業が、倒産や経営不振などにより債務を返済できなくなったときに、代わりに債務を支払ってくれることです。これを信用保証協会では「代位弁済」と呼んでいます。

金融機関や投資家から資金調達をするときは、確実に返済が行われるという信頼を得なければなりません。金融機関であれば、融資審査を通過する必要があります。しかし、実績の少ない企業の場合、自分たちが確実に債務を返済できると証明することが困難です。

こうしたケースでは信用保証協会が金融機関との間に入り、債務に保証を付けることによって、金融機関や投資家が安心して企業に資金を提供できます。

信用保証協会がサポートすることで、融資を受けやすくなったり、条件の緩和や不動産など担保を免除されたりといったメリットが存在します。また、地域の中小企業の資金調達が促進されることで地域の事業創出・成長が加速し、経済の活性化にもつながるのです。

信用保証制度の仕組み

信用保証協会は、信用保証協会法(昭和28年8月10日法律第196号)という法律に基づいて制定された公的機関です。民間企業ではないため、より公平に地域の中小企業をサポートできる仕組みとなっています。

2023年7月時点では、47の都道府県および4つの市(横浜市、川崎市、名古屋市、岐阜市)に所在しており、それぞれの地域を分担して、各地の中小企業や個人事業主をサポートしています。

事業資金の資金調達方法には、おおまかにわけて、次の4つが考えられます。

事業資金の資金調達方法

  1. 出資:株を発行して行う資金調達方法
  2. 融資:金融機関などから資金を借り入れる資金調達方法
  3. 社債:投資家に社債を販売し、資金調達する方法
  4. 助成金・補助金:政府・自治体や公的機関の制度のもと資金提供を受ける方法

このうち、信用保証協会制度の融資は企業のバランスシート上「負債」に分類される融資(厳密には金融機関からの融資)および、社債に対して保証を提供する仕組みです。

中小企業や個人事業主は、借入を行う際に保証を申し込みます。信用保証協会に直接申し込む場合のほか、金融機関にて融資相談をする際に、協会の利用を求められる場合もあります。

中小企業や個人事業主は、保証の対価として信用保証料を信用保証協会に支払わなければなりません。また、金融機関から融資を受けた資金は、当該の金融機関へ契約に従って元利金ともに返済していきます。

一方で、万が一倒産などにより債務が返済できなくなったときは、信用保証協会が代位弁済を行うため、金融機関は貸倒れによる損失を抑制できるのです。

代位弁済した資金については、経営状況など実情に応じて、もとの債務者が返済しなければなりません。回収した資金は、信用保証業務の維持・発展に寄与しています。

信用保証制度の利用条件

利用可能な条件については、業種ごとに資本金や従業員数の上限が定められており、どちらか一方が上限以下の企業や事業者が該当となります。協会は基本的に中小企業を支援する団体であるため、このような規模に関する上限が定められているのです。

たとえば、製造業および建設業、運送業、不動産業は資本金3億円以下、もしくは従業員300人以下が条件ですが、卸売業の場合はそれぞれ1億円以下もしくは100人以下、さらに小売業・飲食業は5千万円以下・50人以下となります。

さらに従業員数のほうは、小規模企業者という枠組みもあります。一部制度を利用するときには、小規模企業者であることが条件のひとつとなります。こちらも製造業では20人以下、小売業・飲食業は5人以下など、業種によって条件が異なります。

業種については大半の業種が保証対象ですが、農林漁業や金融業などの一部の業種は対象外です。また、許認可や届出などが必要な業務については、これらの対応が完了していることが保証の条件となります。

また、信用保証協会は各地域を分担して管轄しているため、申し込み先の信用保証協会の管轄区域で事業を営んでいることも保証付与の条件のひとつです。

信用保証協会付融資とプロパー融資

事業実績の少ない中小企業や個人事業主が資金調達する場合には、まず金融機関からの融資が有力な選択肢となるでしょう。

金融機関からの融資には大きく分けて、2つのタイプがあります。

金融機関の融資

  1. プロパー融資
  2. 信用保証協会付融資

それぞれの特徴について、詳しくみていきましょう。

プロパー融資とは

プロパー融資とは、信用保証協会をはじめとした第三者の保証を受けない融資制度です。保証が付与されないことから、もし債務者からの元利金返済が滞ったときには、貸し手の金融機関が損害を受けることになります。

そのため、一般にプロパー融資は、次に紹介する信用保証協会付融資より審査条件が厳しく、実績の少ない企業では融資を断られる場合が多いのです。

信用保証協会付融資とは

協会の保証つきで受けられる融資を指します。企業の事業実績が少ない状態でも、金融機関は信用保証協会の保証を信頼して資金を融資する仕組みです。そのため、プロパー融資と比べて審査条件などが緩い傾向にあります。

ただし、融資を借り入れる利用者は保証金を支払わなければならないため、借入にかかるコストは高くなりがちです。また、保証制度ごとにそれぞれ上限があるため、融資可能額が保証の上限額によって制限されるという特徴もあります。

ファイナンスアイ
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初めての融資をご検討中であれば、資金調達における基本的な知識を確認しておくとよりスムーズに融資実行まで運べるでしょう。こちらでは、資金調達の目的や方法、コツも交えて、わかりやすく解説しています。

信用保証協会付融資とプロパー融資の違い

両者には審査の仕組みや厳しさ、借入に関するコストや担保の有無など、さまざまな点で違いがあります。

基本的には、規模の大きい企業ほどプロパー融資の比率が大きくなる傾向があります。当初は信用保証協会を利用し、実績が積みあがってくるとプロパー融資にシフトする企業が多いでしょう。

審査機関

信用保証協会は、保証を付与しても問題ないかどうかを自身で審査し、保証の可否を決定します。そのため、金融機関と信用保証協会の双方が審査を行うかたちとなります。これに対して、プロパー融資では融資を貸し付ける金融機関のみが企業を審査します。

審査期間

審査機関が金融機関のみとなるプロパー融資の方が、審査期間は短い傾向にあります。信用保証協会付融資では、金融機関から協会に保証の依頼をするプロセスが発生するため、手続きに手間がかかる分審査にも時間がかかるのです。

なお、具体的な審査の日数については、金融機関や、各企業の事業実績、信用力によって大きく変動するため、一概にはいえません。

審査の厳しさ

信用保証協会付融資の方が、審査は緩やかな傾向にあります。前述のとおり中小企業や個人事業主の融資を支援する目的で運営されているため、実績の少ない企業や事業に対しても保証を許可する可能性が高いためです。

また、金融機関も信用保証協会の審査結果や保証承認を加味して審査を進めるため、やはり審査が通りやすいといえます。

プロパー融資については、その金融機関における融資の実績や事業の継続状況などを審査されて、保証なしでも正常に返済してもらえる可能性が高い、と認めてもらわなければなりません。審査期間は短くとも、審査基準はプロパー融資の方が厳しい傾向にあります。

手数料(保証料)

金融機関に支払う融資事務に関する手数料に加えて、協会に保証料を支払わなければならないため、保証料を含めた手数料は保証付融資の方が相対的に高くなりがちです。

保証料は、融資金額に一定の利率を乗じて計算されます。支払方法は一括・毎月払いを選択可能です。

もし毎月払いを選んだ場合は、元利金に実質的に保証料が上乗せされるため、借入期間全体にわたって月々の返済負担が増大する要因となります。上乗せ額は融資の規模や担保有無、責任共有保証か共有外保証かなど、さまざまな要因によって変化します。

そのほか、企業の事業継続期間やバランスシートに対する評価によっても料率が変わるなど、ケースバイケースとなる部分が大きいため、具体的な保証料は融資相談や保証の申し込みの際に確認してください。

いずれにしても保証料がゼロになることは、基本的にありません。プロパー融資では信用保証協会への保証料が発生しない分、借入にかかる手数料や保証料を抑えられる可能性が高いといえます。

保証人や担保

保証付融資では保証人が不要か、もしくは法人の代表者を設定すれば問題ありません。また、無担保で融資を受けられるケースが多いのも特徴といえます。

プロパー融資の保証人や担保の要否は企業の信用力にもよりますが、多くのケースで保証人を求められます。代表者以外の連帯保証人が必要となるケースもあるでしょう。また、不動産などの担保が必須となる場合が多い傾向にあります。

金利

金利水準は金融機関のスタンスや市場環境、企業の信用力や融資実績などによって変わるものなので一概には言えませんが、基本的にプロパー融資の方が低くなりがちです。

ただしこれは、プロパー融資の方が制度として割安ということではありません。プロパー融資は信用力が高く、融資実績もある企業が利用します。すでに金融機関のリレーションが構築されていて信頼されているため、結果的に低い金利での融資を認める場合が多いのです。

信用保証協会付融資を利用する企業は、まだ借入の返済実績が少ないため、たとえ保証つきだったとしても、金融機関としては資金回収リスクの高い融資です。そのため、プロパー融資よりも高めの金利を要求するケースが少なくありません。

上限額

協会の保証上限額が事実上の融資の上限額となります。たとえば流動資産担保融資保証制度(ABL保証)の場合は、融資限度額が2.5億円(信用保証協会の保証はこの80%にあたる2億円まで)が限度です。

プロパー融資の上限額はとくに定められていません。金融機関が企業の信用力などを加味して、それぞれの借り手に対して融資上限額を提示します。信用力の高い企業であれば、信用保証協会付融資よりも融資限度額が拡大する場合が多いと考えられます。

メガバンクの大企業向けの融資ともなれば、融資額は百億円単位やそれ以上になることもあります。企業組織や事業規模の拡大に比して、資金調達の必要額も増大していきますが、金融機関との関係性を深めていけば、プロパー融資で円滑で多額の資金調達が実現するでしょう。

信用保証協会付融資のメリットと注意点

信用保証協会は、実績の少ない企業でも融資が通りやすくなることや保証人や担保が不要となるケースが多いことなど、中小企業や個人事業主に取ってのメリットが多数あります。

一方で、信用保証協会への保証料の負担が発生することや、審査に時間がかかることなどには注意が必要です。また、代位弁済の制度について正確に理解しておく必要もあります。

信用保証協会付融資のメリットと注意点を整理したうえで、制度を利用すべきか検討してください。

メリット

信用保証協会付融資のメリットは、次のようなポイントにあります。

ポイント

  • 融資の通りやすさ
  • 保証人や担保が原則不要
  • プロパー融資と保証付融資の併用可能
  • 長期の借入可能
  • 多様なニーズに応じた保証制度

それぞれのメリットについて、さらに詳しく説明していきます。

融資の通りやすさ

信用保証協会の保証を付与することで、これまでの利益計上や事業継続年数、融資の返済実績などが少ない中小企業や個人事業主でも融資を受けられるようになります。

信用保証協会は、創業期や成長期の企業をサポートすることを使命のひとつとしている公的機関であるため、実績の少ない多くの中小企業や事業者に対しても保証を付与します。

そのため、プロパー融資の審査を通過できない企業でも審査が通りやすくなり、資金調達がスムーズに実行できるのです。

保証人や担保が原則不要

保証人がなくとも信用保証協会付融資を受けられる場合があります。とくに、個人事業主の場合は原則不要です。

法人の場合で、万が一保証人が必要となっても、企業の代表者が連帯保証人となることが認められているため、それ以外の第三者や社員などに保証を依頼する必要はありません。

信用保証協会付融資は、無担保での保証付与を推進しているため、無担保でも融資を受けられる可能性が高いといえます。たとえば、東京信用保証協会では保証付融資の90%以上が無担保です。

また、無担保融資額1,000万円のケースでは担保があると保証料が減額されるように、あえて担保を付けることで、借り入れコストを抑えられる場合もあります。

プロパー融資と保証付融資の併用可能

プロパー融資と保証付き融資は、併用が可能です。2020年の日本政策金融公庫の調査によると信用保証協会付融資のみを利用している中小企業は35.6%であるのに対して、プロパー融資と信用保証会付融資を併用している企業は26.3%でした。

創業当初は、実績が少なく単体で融資審査を通すのが困難なため、保証付き融資が主体となります。返済や事業継続の実績が蓄積してくれば、徐々にプロパー融資を申し込めるようになるでしょう。

初期の信用保証協会付融資が完済されれば、やがてすべての融資がプロパー融資になる、といったプロセスで、プロパー融資の比率が徐々に高まる傾向があるのです。

長期の借入可能

信用保証協会付融資では、長期の融資に対する保証も付与しています。融資期間をのばせば、月々の返済額は少なくなるため、創業間もない企業でも資金繰りを管理しやすくなります。

たとえば、東京信用保証協会のケースでは1年未満から、最長で大規模な設備投資などにも対応しやすい20年まで、保証期間を選択可能です。

多様なニーズに応じた保証制度

信用保証協会では、企業の状況やニーズに応じて多様な保証制度を提供しており、中小企業が効率的かつ効果的に融資が受けられるようになっています。

たとえば、製造業で従業員数が20人以下など小規模な事業者には「小口零細企業保証制度」という制度を提供しています。

多くの保証では「責任共有制度」のもと金融機関が融資の20%を負担しなければいけないのに対して、同制度のもとでは融資に対する保証率が100%となり、小規模事業者でも審査が通りやすくなるのです。

また、流動資産担保融資保証制度(ABL保証)では、売掛債権や棚卸資産を担保として借入を行う際の保証が受けられます。不動産担保に依存せずに、資金調達がしやすくなる制度です。

そのほかでは、経営安定関連保証(セーフティネット保証)、危機関連保証など経営環境の悪化をサポートする制度もあります。これらは、新型コロナウイルスの感染拡大による影響や損害を受けた経営の安定化を支援する役割も担っています。

さらに、東日本大震災復興緊急保証では、東日本大震災で被害を受けた中小企業の融資を別枠で保証し、震災被害にともなう倒産や経営悪化を防いでいます。

以上をはじめとした多様な保証制度のなかから、企業の状況やニーズにあった制度を利用しましょう。

注意点

保証を付与してもらう際には、次のようなポイントに注意しましょう。

保証付与の注意ポイント

  1. 手数料の負担
  2. 審査が2回必要
  3. 代位弁済
  4. 残債の債務免除は非現実的

手数料の負担

信用保証協会の保証を受けるうえでは、基本的に信用保証料を支払う必要があります。この保証料は借入利息に上乗せする形で支払うため、毎月の返済負担が増大することになります。

信用保証料率は、融資額の規模や担保有無、バランスシートの状況などにより細分化されています。

たとえば、一企業の融資合計額が500万円以下、責任共有保証のケースでは0.30〜1.27%の料率であるのに対して、1,000万円超では無担保で0.45〜1.90%です。もし同額で有担保の場合は、0.35〜1.80%に引き下げられます。

全体として、責任共有保証料率は、責任共有外保証料率よりも低めに設定される傾向があります。また、東日本大震災を受けた特例や、各種保証制度の利用有無など、さまざまな要因によって料率は細かく変動します。

東京信用保証協会でいう東京都制度融資のように、地域ごとに独自の制度を設けている場合もあります。保証のための手数料の負担が必ず発生することを理解するとともに、保証料率を引き下げられる制度をうまく活用しましょう。

審査が2回必要

信用保証協会付融資制度では、信用保証協会と金融機関で2回審査を行います。金融機関から保証協会に保証の申請などを進めてもらえるため、金融機関を通じて融資と保証の申し込みを同時に進める場合については、申請の手間や負担自体は大きく増大するわけではありません。

ただし、審査の過程で信用保証協会と金融機関で別の資料や情報提供を求められる場合には、情報提供に手間がかかる可能性もあります。また、金融機関と保証協会との情報連携や手続きの分だけ、プロパー融資と比べて審査完了や融資の入金までには時間がかかります。

信用保証協会付融資制度を利用する場合には、融資の入金が資金ニーズに間に合わないというようなことがないよう、資金繰りに余裕をもたせてください。

代位弁済

代位弁済とは、債務者が融資の元利金を返済できなくなったときに、金融機関が信用保証協会に弁済を求める仕組みです。3回以上の支払いの延滞、もしくは90日以上の支払いの延滞などの状況になると、代位弁済の請求が始まる可能性が出てきます。

実際には債務者の返済意思と可能性があるなど、状況に応じて代位弁済がスキップされる可能性もありますが、代位弁済の是非の判断は金融機関に委ねられるので、何より滞納しないことが第一です。

代位弁済が実行されると債務者に通知が行き、今度は信用保証協会から代位弁済した債務の請求が来ます。平時の融資は毎月少しずつ返済する仕組みとなっているのが一般的ですが、信用保証協会からの請求は一括で来る点に注意しましょう。

ほとんどの場合、返済が滞った債務者が一括請求に応じることはできないので、今度は信用保証協会と今後の返済スケジュールについて調整することになります。

返済の意思が弱い、もしくは返済計画に無理があると判断されれば、より強硬な手段を取られるおそれもあります。信用保証協会の理解を得るために、現実的に可能な弁済計画を立てることが何より大切です。

弁済計画が確定すれば、その後は計画に従って、信用保証協会に弁済を進めることになります。

残債の債務免除は非現実的

信用保証協会には、代位弁済した債務を債務者に請求する「求償権(きゅうしょうけん)」があります。そのため、代位弁済した債務の返済から免れることは、通常ほとんどありません。

近年は、新型コロナウイルスによる経営悪化の支援としての位置づけである「ゼロゼロ融資」などに対して、迅速な求償権放棄を条件付きで認める動きなども一部地域ではあります。

ですが、これはあくまで例外的な措置であり、基本的には信用保証協会に対する返済は免除されないと考えた方がよいでしょう。

代位弁済が発生すると、原則では残債に対して年率14%の遅延損害金が発生します。交渉により損害金を減らせる場合もありますが、代位弁済が起こると返済負担はむしろ増大する可能性もあるのです。

さらに、代位弁済を引き起こすと金融機関からの追加融資も困難になるなど、企業経営の継続も難しくなります。信用保証協会に依存せず、あくまで自力での返済を徹底してください。

信用保証協会付融資の利用の流れ

利用の際は、金融機関を経由するほか、信用保証協会への申し込みや直接の相談を通じてでも可能です。しかし、いずれにしても金融機関には、融資に関する相談や申し込みが必要となることから、基本的には金融機関に信用保証協会付融資を申し込む方が効率的でしょう。

審査にはある程度時間がかかるため、あらかじめ手続きの流れと必要書類をおさえておいて、スムーズに手続きが進むよう準備しておいてください。

申込から返済まで

信用保証協会付融資の申し込みから、返済にかけての手続きの流れは、次のとおりとなります。

申込から返済までの流れ

  1. 申込
  2. 審査
  3. 承諾
  4. 融資
  5. 返済

金融機関と信用保証協会、融資希望者の3者で進められます。ただし、金融機関に相談すれば、対信用保証協会で必要な手続きもひととおり進められるのでスムーズです。ここからは、それぞれのプロセスについて順番にみていきましょう。

申込

保証の申し込みは、金融機関経由、もしくは信用保証協会への問い合わせ、2つの方法で行うことができます。

金融機関で信用保証協会付融資を申し込めば、窓口で信用保証協会への申し込み手続きも進めることが可能です。金融機関が融資の受け入れが適当と判断した場合には、金融機関から保証協会に対して、債務者の保証を依頼する保証依頼が提出されます。

信用保証協会でも申込書を記入し、直接提出することも可能です。この場合は信用保証協会が適切な金融機関に融資をあっせんします。ただし、そのときも金融機関に対する融資の申し込みが必要になるため、基本的には金融機関への融資相談と合わせて申し込むのが効率的です。

審査

融資と保証の申し込みが済んだら、金融機関が融資審査、信用保証協会が保証に対する審査を行います。

制度上は二重に審査を受けなければなりませんが、金融機関側の審査結果は信用保証協会の審査結果を重視するため、保証協会の審査を通過できれば、融資に向けて大きく前進するでしょう。

審査過程では、状況に応じて面談や書類での情報提供を求められる場合もあります。保証協会や金融機関が求める情報の提供を速やかに行うことで、審査もスムーズに進むでしょう。

承諾

信用保証協会が保証を認めると、金融機関に信用保証書を提出します。信用保証書が振り出され次第、金融機関は融資を実行します。

融資

信用保証書には融資の金額や条件が指定されているので、金融機関は保証書に従って融資を実行し、期日に債務者の口座に融資金を入金します。信用保証料を一括支払いにしている場合には、このときに金融機関が保証料を代理徴収し、保証協会に支払うのが一般的です。

基本的には融資金額から保証料を差し引いて入金する仕組みのため、企業はあらかじめ保証料を現金で用意しておく必要はありません。また、融資実行の際には、信用保証委託契約書を作成し、信用保証協会に提出します。

返済

金融機関との契約に従って、返済を進めます。もし保証料が月払いの場合は、毎月の返済額に保証料が上乗せされて引き落とされる仕組みです。

据置期間がある場合には、その間は利払いだけが実行されますが、保証料の支払い体系が据置期間前後で変化する契約もあります。あらかじめ据置期間の保証料の扱いを確認しておいて、資金繰りが想定外に悪化しないように注意しましょう。

返済が滞って代位弁済が実行されないように、支払い口座には潤沢な資金を残しておいてください。

主な提出書類

信用保証協会付融資を受ける際のおもな提出書類は、下記のとおりです。

信用保証協会付融資を受ける際の提出書類

  • 申込人(企業)概要
  • 信用保証依頼書
  • 個人情報の取扱いに関する同意書
  • 確定申告書(決算書)
  • 商業登記簿謄本
  • 印鑑証明書
  • 信用保証委託申込書(保証人等明細)

このうち、信用保証委託申込書は審査通過後、融資実行の前に必要となる書類で、それ以外は融資や保証を申し込む時点から必要です。

書類提出が遅れると審査や融資実行ができずに、入金まで時間がかかってしまいます。官公庁への請求が必要な書類もあるので、あらかじめ用意しておいてスムーズに手続きを進めましょう。

また、このほかに、審査の過程で判断材料となる資料などの提供を求められる場合もあるので、依頼を受け次第、速やかに対応してください。

融資審査に通るには

信用保証協会は、中小企業や個人事業主をサポートする存在であるため、基本をおさえていけば、審査は金融機関ほど厳格ではありません。

一方で、信用保証協会の審査に落ちてしまうと、融資による資金調達が行き詰ってしまうことになります。基本をしっかりとおさえたうえで、信用保証協会の理解を得て、希望どおりの融資を実現させましょう。

保証資格がある

信用保証協会の保証を受けるうえでは、いくつか条件があります。まず、業種によって資本金や従業員の上限が決まっています。決められた規模以上の企業は保証を受けられません。

許認可が必要な事業は、あらかじめ定められた許認可を取得しておく必要があります。また、公序良俗に反していない、反社会的勢力ではないといった条件もあります。

信用情報が傷ついていない

現時点で信用情報が傷ついている場合は、信用保証協会は保証を承認しません。たとえば、次のようなケースでは信用情報が悪化します。

信用情報を悪化させるケース

  • 最近、債務不履行を引き起こした
  • 代位弁済を最近実行されて、返済が完了していない
  • 銀行取引停止処分を受けている
  • 税金や社会保険料の滞納がある
  • ノンバンクや消費者金融などの高金利の借入がある
  • 経営状況が極端に悪い
  • 粉飾決算や税申告漏れなどの不正や重過失を引き起こした

まず、以上のような、信用情報を悪化させる要因を引き起こさないように徹底しましょう。一方、現時点で当てはまる要因がある企業は、しばらくは外部からの資金調達は難しいと認識したうえで、企業を存続させるための経営計画を立ててください。

創業計画書、事業計画書を作り込む

信用保証協会の融資においては、健全で現実的な創業計画書や事業計画書に対して高く評価し、保証を付与します。

主に、次のような部分を緻密に作りこんで、保証協会に合理性を認められることが大切です。

保証協会に合理性を認められる創業計画書と事業計画書のポイント

  • 融資の必要額と、資金使途の内訳
  • 融資がなぜ事業に必要で、どのような成果につながるのか
  • 毎月の返済額とキャッシュフローのバランス、資金繰りの健全性
  • 長期的な利益の見通し
  • 利益成長や見通しを達成するための計画・戦略

内容がずさんであったり、返済可能であると信頼できなかったりするのは論外ですが、あまりに計画が壮大すぎて、現実感がない内容でも望ましくありません。あくまで返済を着実に実行できるよう、近い将来の現実的な見通しを記載することが大切です。

経営意欲や信頼性をアピールする

信用保証協会の審査過程では、面談などによるヒアリングが実施されるケースも少なくありません。こうした場での受け答えも審査には大きく影響します。

経営者の方は、融資元となる企業の安定経営や事業成長を進める意欲や、経営者として信頼できる人物であることをアピールしましょう。事業を立ち上げ、成長させるに至った経緯や経験、経営理念を適切に伝えてください。

経営者の経験やこれまでの実績、スキルなどをもとに、企業経営を担うにふさわしい人材であると示すことが大切です。

まとめ

信用保証協会付融資は、これから事業を始めようと考えている方や、まだ実績の少ない中小企業や個人事業主の資金調達をサポートする心強い味方です。プロパー融資がまだ難しいという方は、信用保証協会付融資を活用して資金調達を行い、事業成長を加速させましょう。

保証料の分だけ借入コストが高くなる点はネックとなるため、資金繰りの余裕を持たせて、経営を継続させることが大切です。信用悪化を引き起こす貸倒れや代位弁済をくれぐれも引き起こさないように、計画的に融資による資金調達を行いましょう。

ファイナンスアイは、経済産業省中小企業庁認定M&A支援機関であり、8,000社以上の資金調達相談・融資実行に携わってきました。創業融資をはじめとした資金調達や、融資を検討している中小企業や個人事業主の方は、ぜひファイナンスアイにご相談ください。

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ファイナンスアイではこれまで開業資金、運転資金など様々な資金の支援をしてきました。日本政策金融公庫・信用保証協会付け融資・信用金庫・銀行からの融資相談に8000社以上対応してきました。自分で融資をされるよりも融資額、成功率を飛躍的に高めます。融資に必要な事業計画、創業計画や審査担当者との面談対策などトータルでサポートします。ご興味があればお気軽にご相談ください。

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記事・コンテンツの監修者

起業創業開業の資金調達コンサルタント

株式会社ファイナンスアイ(経済産業省M&A支援機関登録済)
代表取締役 田中 琢朗(たなか たくろう)

大手の金融機関・上場企業の財務部門責任者などを歴任し、2014年にファイナンスアイを創業。業界歴30年・創業10年のベテラン。中小企業・個人事業主・起業家と一緒に、現場で泥臭く汗をかいて靴をすり減らして財務を軸に経営者を支援し続け、のべ10,000人以上の圧倒的な実戦経験を持つ。ノウハウを「ファイナンスアイ式メソッド」として確立。中小にはびこる悪質なM&Aの被害をなくすために、M&A支援も本格化。売手・買手のいずれの立場からも真のM&Aを提供。現在も毎月150件以上の新規相談に対応し、毎週セミナーも開催中。日本経済のために今日も邁進しています。

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