国金の創業融資制度はなにがある?銀行との違いや融資を受けるためのポイント

資金調達-創業融資

国金の創業融資制度はなにがある?銀行との違いや融資を受けるためのポイント

2023年7月3日

これから事業をはじめたい、または事業をはじめて間もない人の多くが、事業資金の調達方法で悩んでいることでしょう。創業したての会社は、事業の実績が乏しいことから、民間の金融機関からの融資が受けられないことも多くあります。

そこで利用したいのが、創業融資制度です。創業融資制度は、政府金融機関である日本政策金融公庫が実施しており、民間の金融機関で融資を受けられない人でも利用できる可能性が高い制度です。

本記事では創業融資制度について詳しく解説していきます。この記事を読むことで、創業融資制度とはなにか、銀行とどう違うのかがわかり、資金調達のための有効な方法を知ることができます。ぜひ最後までご覧ください。

 

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創業融資・資金調達

国金(日本政策金融公庫)とは

国金とは、国民生活金融公庫の略称です。平成20年10月1日に国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国際協力銀行の4つの政策金融機関が統合してからは、日本政策金融公庫と呼ばれています。当時の名残で、現在でも「国金」や「公庫」と呼ばれることがあります。

日本政策金融公庫は、中小企業や小規模企業の事業者を対象に融資を行う、政府系の金融機関です。組織としては株式会社の形式を取っていますが、日本政府から100%の出資を受けているため、融資は国の予算から行われます。

日本政策金融公庫の目的は、一般の金融機関から資金の融通を受けることが困難な小企業をはじめとした、国民が必要とする資金を供給することによって、国民経済の健全な発展と公衆衛生などの国民生活の向上に寄与することとしています。

国家予算が融資の財源となるため、民間の銀行や信用金庫とは異なる潤沢な資金源を保有している点が大きな特徴です。また、営利目的ではないため、次のような特性があります。

国金(日本政策金融公庫)の特性

  • 民間の金融機関で融資が受けられない人でも借り入れできる
  • 低所得や経営難などで困っている人でも借り入れできる
  • 民間の金融機関よりも圧倒的に金利が低い
  • 50種類以上の融資制度のなかから借り入れ方法を選べる
  • 無利子、無担保で借りられるケースもある

日本政策金融公庫からの融資は、条件さえ満たしていれば多くの人が融資対象になります。一方で、融資審査は厳しく、事業計画書などの書類だけでなく、代表者の人柄や熱意も審査の対象となることを覚えておきましょう。

50種類以上の融資制度

日本政策金融公庫の融資制度は、業種や事業規模によって、大きく以下の3種類にわかれています。

日本政策金融公庫の3種類の融資制度

  1. 国民生活事業
  2. 中小企業事業
  3. 農林水産事業

国民生活事業は、小規模事業者向けの小口事業資金や、個人向けの教育ローンなどのための融資制度です。中小企業事業は、中小企業向けの長期事業資金を融資するものです。また、農林水産事業は、農林漁業者向けの長期事業資金を融資するものとなっています。

それぞれの事業ごとに15〜20種類ほどの融資制度が用意されているため、自分の目的に合った融資制度を探してみましょう。

創業時に利用できる融資制度

国は新しい企業の育成に力を注いでおり、起業家などに対して、積極的に融資を行い支援しています。そのため、営利目的である民間の金融機関よりも、日本政策金融公庫のほうが融資の条件が緩和されています。

条件が緩和されている分、融資時には厳しい審査が行われ、とくに事業計画書の内容は極めて重視されます。創業時に利用できる融資制度としては、以下の融資制度が用意されています。

新創業融資制度

新創業融資制度は、これから起業する人または事業を開始してから2期以内の人を貸付対象とした制度です。新たに事業を始めるため、または事業開始後の設備資金や運転資金として、3000万円を限度に融資を受けられます。

無担保、無保証人でも借りられる融資制度で、新規開業資金など、そのほかの融資制度との併用が可能です。新たに事業を始めた人や、事業開始後の税務申告を1期終えてない場合は、創業資金総額の10分の1以上の自己資金が確認できなくてはなりません。

ただし、10分の1以上あれば審査に通過するというわけではありません。申請ができる条件が10分1と定められているだけであり、実際に審査を有利に進めるためには、資金総額の3分の1程度の自己資金の準備が必要になるでしょう。

女性、若者/シニア起業家支援資金

女性、35歳未満または55歳以上の人の創業を支援する制度です。

具体的には、下記の条件をすべて満たす人が対象です。
新たに事業を始める、または事業開始後おおむね7年以内
女性または35歳未満か、55歳以上

上記の条件を満たす人を対象に、7,200万円まで融資を受けられます。状況によっては無担保、無保証人でも融資を受けられ、そのほかの融資制度と併用も可能です。

事業の内容によって貸付利率が変わる制度であるため、自分の状況と照らし合わせて申請を検討しましょう。利率などの詳細は、日本政策金融公庫のホームページで確認できます。

新規開業資金

新規開業資金は、新たに事業を始める人または事業開始後おおむね7年以内の人を対象に、7,200万円を限度に融資を受けられる制度です。資金の使い道は設備資金および運転資金に限られていますが、新創業融資制度やそのほか融資制度との併用が可能です。

女性や若者、シニアをはじめ、廃業歴があり創業に再チャレンジする人や、中小会計を適用する人など、幅広い創業・スタートアップを支援する制度となっています。

銀行との違いとメリット・デメリット

日本政策金融公庫は、融資をするという点では銀行と同じですが、そのほかの点で民間の金融機関である銀行や信用金庫などとは、大きな違いがあります。

日本政策金融公庫の目的は、民間の金融機関の業務を補完し、銀行での融資が困難な創業時融資や災害時の貸付などを行うことです。民間の金融機関は利益をあげるために融資を行いますが、国民生活金融公庫は国益のために融資を行っています。

中小企業や個人の経済的な課題が解決されることが、将来的な国益につながるため、民間の金融機関よりも融資に積極的です。

また、民間の金融機関では預金や為替の業務を行いますが、日本政策金融公庫ではこれらの業務は行っていません。したがって、日本政策金融公庫は、銀行とは目的や方針、業務内容がまったく異なるものです。そのほか、日本政策金融公庫と銀行で異なる点を解説していきます。

自己資金要件

民間の金融機関では、自己資金額より多額の融資を受けることは困難でしょう。一方で、日本政策金融公庫であれば、資金総額の10分の1以上の自己資金があれば審査の申し込みができるため、自己資金に関するハードルは民間の金融機関よりも低くなっています。

さらに、同じ業種の企業で通算5年以上の勤務実績や、勤続5年以上の経験がある業種で事業を始めるときは、自己資金要件を満たすものと見なされるなど、緩和措置もあります。

しかし、自己資金なしで創業融資を申し込む場合は、自己資金が用意できない合理的な理由を説明できなければ、審査に通ることは難しいでしょう。

融資までの期間

地域によっても異なりますが、民間の金融機関では、信用保証協会による信用情報の照会がある都合上、申し込みから融資が実行されるまでに1〜2か月程度かかるケースが多いでしょう。

日本政策金融公庫の場合は、創業融資であれば申し込みから3週間から1か月程度で融資を受けられるため、すぐに資金調達をしたいスタートアップ企業や、資金力の乏しい企業にとって大きなメリットがあります。

ただし、具体的な審査機関は公表されていないため、希望の期間内に融資を受けられない可能性もある点に留意が必要です。

手続き時の手間

日本政策金融公庫の融資では、信用保証協会を経由せずに融資が行われます。そのため、信用保証協会に提出する書類を準備する必要はありません。

民間の金融機関に融資を受ける場合、金融機関に提出する書類に加え、信用保証協会に提出する書類も準備しなければならず、手続きに労力を要します。

創業融資審査

日本における零細企業などの小企業は、日本企業全体の約87%にのぼるとされています。雇用の創出や地域社会にとって欠かせない存在ではあるものの、資金調達力が弱い傾向にあり、経営安定化のための支援が必要です。

こうした小企業への融資は、担保力の弱さや資金需要が小口であることから、民間の金融機関では対応が難しいのが現状です。とくに創業時の融資は事業実績がないため、融資審査の難易度は非常に高くなっています。

日本政策金融公庫は、政府金融機関として、民間の金融機関では対応が難しい分野を補完することを目的としているため、こういった小企業への融資や創業時の融資にも積極的です。

書類上の数値だけでなく、対面でのヒアリングを通して、創業者の経歴や熱意、計画性や将来性などを総合的に判断して融資実行を検討する点は、民間の金融機関と大きく異なる点といえます。

返済期間

日本政策金融公庫の融資は、民間の金融機関よりも返済期間が長く設定されていることが特徴です。たとえば、新規開業資金の融資制度を利用した場合、設備資金は20年以内、運転資金は7年以内が返済期間となっています。

一方で、民間の金融機関の融資の場合、設備資金は10年以内、運転資金は7年以内であるケースが多いです。返済期間に余裕を持たせたい場合は、日本政策金融公庫から融資を受けた方がよいでしょう。

担当者指名の可・不可

日本政策金融公庫の融資を受ける場合、支店と担当者は選べないという特徴があります。日本政策金融公庫は都道府県ごとに店舗があり、支店は納税地の住所から判断されます。

また、担当者が選べないことで審査に悪影響が出る可能性もあります。なぜなら、担当者の知識量によって対応に差が出るからです。

たとえば、担当者が日本政策金融公庫に入社して間もないケースや、金融に関する知識が不足している場合、充分なヒアリングをしてもらえないために、審査がスムーズに進まない可能性もゼロではありません。

なかなか説明を理解してもらえないときは、財務コンサルタントや融資の専門家に協力を依頼することも検討したほうがよいでしょう。

国金から融資を受けるには

日本政策金融公庫から融資を受ける方法としては、自分で手続きする方法と、財務コンサルタントや税理士など金融の専門知識を有しているビジネスパートナーを通じて手続きする方法があります。

金融の専門知識を有したプロは、税務や金融、企業財務などに関して専門性の高い支援を行うことに長けています。こうした専門家を通して手続きを行うことで、事業計画の作成など、さまざまな点でフォローしてもらえるでしょう。

主な必要書類

自分で手続きをする場合は、次のような書類が必要です。日本政策金融公庫の融資は、再申請に最低でも半年程度の期間が必要になるため、自分で手続きする場合はしっかりと準備を行う必要があります。

借入申込書

事業資金の借入申込書です。日本政策金融公庫の支店、またはホームページからも入手可能です。

創業計画書

新しく事業を始める場合に、事業計画などを記入する書類です。日本政策金融公庫のホームページから入手できます。

資金繰り計画書

資金繰り計画を策定する場合に記入する書類です。日本政策金融公庫のホームページから入手できます。

直近2年分の源泉徴収票、または確定申告書

源泉徴収票は勤務先に頼んで発行してもらいましょう。発行に時間がかかる可能性もあるため、時間には余裕を持っておきましょう。

本人確認書類

運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなどが該当します。

通帳

自己資金が確認できる通帳や、インターネットバンキングの画面をプリントアウトしたものなどを提出します。配偶者や子ども名義の資金であっても、場合によっては自己資金として認められるケースもあります。

その他必要書類

そのほかに必要な書類として、ケースごとに次のようなものがあります。

条件 必要な書類
設備資金で借り入れを申し込む場合 見積書または工事請負契約書
許認可が必要な事業を行う場合 許認可が確認できる書類
飲食店や生活衛生関係の事業を営む場合 都道府県知事の推薦書、生活衛生同業組合の「振興事業に係る資金証明書」
不動産を担保に入れる場合 不動産の登記簿謄本または登記事項証明書
個人事業主が法人成りして借り入れを申し込む場合 履歴事項全部証明書
自宅が賃貸の場合 賃貸借契約書
自宅が所有の場合 固定資産税の領収書
店舗や事務所を借りる場合 賃貸契約が確認できる書類

面談のポイント

面談では、代表者の人柄や熱意に加え、下記の点も審査の対象です。

妥当な希望金額か

融資を希望している金額が妥当であるかは、重要なポイントです。融資に積極的な日本政策金融公庫であっても、国の財源から融資している以上、貸し倒れのリスクは避けなければなりません。

融資を受ける際は、現状の自己資金などと照らし合わせ、滞りなく返済できる金額を希望しましょう。

創業計画は綿密か

創業計画書をもとに、売上の見通しに根拠があるか、資金の使い道は明確かなどを審査します。根拠のない計画を立てず、リスクと現状を正確に把握した計画を立てましょう。

競合との差別化は図れているか

競合と差別化できる要素を答えられることも、面談を成功させるポイントです。ライバル企業との競争に勝ち抜けるような差別化ポイントがなければ、競争社会で生き残れず、貸し倒れとなる可能性があるからです。

充分な経歴を持っているか

まったくの未経験の場合、融資を受けるのは難しくなるでしょう。未経験の業種での創業は失敗する可能性が高く、貸し倒れのリスクが高まるからです。

そのため、日本政策金融公庫の融資制度では、基本的に5年以上の実務経験があることを貸付条件としているケースが多いです。

まとめ

本記事では、日本政策金融公庫について、概要や基本的な融資制度について説明しました。日本政策金融公庫の融資制度は、条件を満たせば中小企業や個人事業主など、多くの人が融資を受けられる制度です。

とくに、民間の金融機関からの融資が受けにくい、創業間もない人や、これから創業する予定の人にとって、日本政策金融公庫の創業融資は非常にメリットのある融資制度といえるでしょう。

ただし、融資を受けること自体はあくまで目的ではなく、事業を成功させるという本来の目的を達成するための手段です。融資を受けた資金を活用して、予定通りの収益をあげ、遅延なく返済を行っていくことが、もっとも大切なポイントであることを忘れないようにしましょう。

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記事・コンテンツの監修者

起業創業開業の資金調達コンサルタント

株式会社ファイナンスアイ(経済産業省M&A支援機関登録済)
代表取締役 田中 琢朗(たなか たくろう)

大手の金融機関・上場企業の財務部門責任者などを歴任し、2014年にファイナンスアイを創業。業界歴30年・創業10年のベテラン。中小企業・個人事業主・起業家と一緒に、現場で泥臭く汗をかいて靴をすり減らして財務を軸に経営者を支援し続け、のべ10,000人以上の圧倒的な実戦経験を持つ。ノウハウを「ファイナンスアイ式メソッド」として確立。中小にはびこる悪質なM&Aの被害をなくすために、M&A支援も本格化。売手・買手のいずれの立場からも真のM&Aを提供。現在も毎月150件以上の新規相談に対応し、毎週セミナーも開催中。日本経済のために今日も邁進しています。

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