飲食店を開業するときの手順や流れは?開業資金の目安なども解説

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飲食店を開業するときの手順や流れは?開業資金の目安なども解説

2023年4月20日

飲食店の開業を希望する人は多くいますが、開業までの道のりには、他業種では行わないような手続きや、店舗設備や内装、仕入れ、運営コストなどを踏まえた資金計画が必要です。

本記事では、飲食店の開業に関する情報をまとめ、開業に必要な手続きや資金調達方法、飲食店開業に必要な資格や届け出など、飲食店開業に関する情報を詳しく解説していきます。

これから飲食店を開業しようと考えている方や、将来的に開業に興味がある方は、ぜひ参考にしてください。

 

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創業融資・資金調達

飲食店開業のおおまかな流れ

飲食店を開業する際には、多くのステップが存在します。まずは、コンセプトを決め、事業計画書を作成し、物件や土地を探し、店舗の坪数やメニュー、価格設定を決定します。

その後、開業資金を調達し、必要な資格や届出を済ませることで、ようやく開業の日を迎えることができます。次の見出しで、それぞれ詳しく解説していきます。

コンセプトの決定

飲食店を開業する際にまずやるべきことが、明確なコンセプトの設定です。コンセプトが決まると、ターゲット客層やメニュー、内装、価格帯などの要素が整理され、物件探しや資金調達の計画にも役立ちます。

まず、自分がどのような飲食店を開業したいのか、具体的なイメージを持ちましょう。たとえばレストランバーを開業する場合、カジュアルな雰囲気で家族連れやカップルが楽しめる店か、高級感のある大人向けの店かでコンセプトが異なります。

コンセプトとともに重要な鍵となるのが、ターゲット客層です。年齢層や性別、趣味・嗜好を明確にして、具体的に設定しましょう。

5W1Hを用いたコンセプトの設計

5W1H(誰が、いつ、どこで、何を、なぜ、どのように)を用いることで、コンセプトの具体化に役立ちます。

誰が(Who):まずは、ターゲットとなる顧客層を明確にしましょう。年齢層や性別、趣味嗜好などを考慮することで、その後のメニューやサービスの設計がスムーズに進みます。

たとえば、若いカップル向けにカジュアルな雰囲気を提供するのか、ビジネスマン向けに落ち着いた空間を提供するのかなど、明確にすることが大切です。

いつ(When):営業時間や曜日も考慮して設定しましょう。ターゲット顧客のライフスタイルや、地域の習慣に合わせて営業時間を設定することで、効率的に集客できます。

たとえば、ビジネスエリアではランチタイムとディナータイムが盛況となることが多いですし、観光地では土日祝日に多くの集客が見込めるでしょう。

どこで(Where):開業する場所も重要な要素です。ターゲットとなる顧客が多く集まるエリアや、アクセスのよい立地を選ぶことが成功の鍵となります。

また、周辺の競合店舗や住宅密度、人通りの多さなども調査し、最適な立地を見極めましょう。

何を(What):提供する料理やドリンクのジャンル、メニュー構成を決めます。メニューや料理のジャンルはもちろん、アレルギー対応やベジタリアン向けのメニュー提供など、ニーズに応じた選択肢を考慮することが重要です。

前述の「誰に対して」「いつ」「どこで」開業するかによって、提供するメニューも変わってくるので、コンセプトがある程度固まってきたタイミングで考えるか、提供メニューが決まっているのであれば、そのメニューを好むターゲットのいるエリア・時間帯などをリサーチするようにしましょう。

なぜ(Why):飲食店を開業する理由や、競合他店との差別化ポイントを考え、お店独自の価値提案を明確にしておくことが重要です。自分がなぜ飲食店を開業したいのか、どんな理念や信念を持っているのかを決めましょう。

たとえば、地元の食材にこだわる、独自のレシピや調理法を取り入れるなど、顧客がリピートしたくなる要素を設計しておくことが大切です。

どのように(How):最後に、上記の要素を実現するための具体的な方法を検討します。内装やデザイン、スタッフの採用や教育、作業フロー、マーケティング戦略などをどのように進めていくのか計画しておきます。

また、資金調達の方法も検討し、自己資金が不足している場合は創業融資などの選択肢を検討しておくことが大切です。

事業計画書作成

飲食店を開業する際に創業融資を受けるためには、事業計画書が必要です。事業計画書は、開業に必要な資金や人材、収益予測などを明確にするドキュメントであり、金融機関で融資を受けるうえでの審査の重要なポイントとなります。

以下から、事業計画書作成のポイントを紹介します。

創業の動機

創業融資を受けるためには、事業計画書に創業の動機を明確に記載することが重要です。多くの場合、創業の動機は事業計画書の冒頭に記載します。

銀行や金融機関が融資を行う際に、創業者がどのような目的で事業を始めるのか、どんな理念や信念を持っているのかを理解することで、事業の将来性や持続性を判断します。

開業のきっかけや目的、自分がなぜ飲食店を始めるのかといった情熱やビジョンを明確に伝え、真実味のある具体的なエピソードを盛り込みます。

以下のポイントに注意しながら記載します。

創業の動機のポイント

  • 強みや独自性をアピールして事業の成功要因を明確にする
  • これまでの経験やスキルを活用し、事業展開の具体性を示す
  • 市場ニーズを理解し、顧客の期待に応えるサービスや商品を提供する意志を示す
  • 地域貢献を意識し、地域社会への貢献度をアピールする
  • 事業の成長ビジョンを明示し、将来の展望を示す
  • 融資を活用する計画を具体的に示し、資金使途を明確にする

経営者の経歴や資格

事業計画書には、経営者の経歴や資格も詳細に記載し、事業成功にどのように役立つのかを具体的に説明します。

資格や専門知識をアピールすることで信用力が向上し、経営者の専門性を補強する要素となります。具体的には、以下のような情報を記載します。

職歴:経営者のこれまでの職歴、とくに飲食業界での経験や実績を強調して記述します。

資格:飲食店経営に役立つ資格を持っている場合は、それらを明記します。

たとえば、調理師免許、栄養士資格、食品衛生責任者、ソムリエ、バーテンダー資格など、飲食業界で活用できる資格を記載してください。

取引先関係

飲食店開業において、取引先との関係は重要です。食材の仕入れ先や業者との連携が円滑であることは、店舗運営において大きな強みとなります。

融資担当者が事業の理解を深め、取引先との関係性を把握するために、取引先とのつながりや信頼関係を具体的に示すことが望ましいです。

雇用計画

店舗の規模や業態に応じて、従業員を雇用するかどうかを検討し、必要であれば雇用計画を事業計画書に記載しましょう。

従業員の採用方法、教育研修の計画、労働条件などを明確にすることで、将来の人材確保と働きやすい環境を整えることができます。

必要資金の予測と計算

開業にかかる必要資金の予測と計算の適切な記載は、融資担当者が資金調達計画の妥当性を判断しやすくなるため重要です。

まず、開業に必要な初期投資費用を算出します。これには、内装工事費、設備機器費、賃料保証金、什器備品費、営業許可申請費用、初期在庫費用、広告宣伝費などが含まれます。各項目にかかる費用をリストアップし、それらの合計額を算出しましょう。

次に運転資金を見積もります。運転資金は売上が立ち上がるまでの期間の人件費、賃料、光熱費、原材料費、その他の経費などをカバーする資金です。

これらの項目にかかる費用を予測し、開業後の売上や資金繰りを考慮して、適切な運転資金を算出します。

また、必要資金の調達方法も明記します。自己資金や親族・友人などからの借り入れ、日本政策金融公庫から借り入れたい融資金額、民間金融機関の信用保証協会付融資など、資金調達の選択肢と必要金額を記載しましょう。

事業の見通し

まず、お店の短期・中期・長期の目標を明確に設定します。客数や売上高、利益率など、定量的な指標を使って目標を明示することが重要です。

次に、それらの目標を達成するための戦略や、具体的なアクションプランを記述していくことが求められます。

短期的な目標では、開業初期の集客方法や、店舗運営の効率化、スタッフ教育などに焦点を当てます。中期的な目標では、ブランドイメージの確立や、売上の安定化、リピート顧客の獲得などが重要な要素です。

長期的な目標では、事業拡大の方針や地元コミュニティとの関わり方など具体的な方針を明らかにすることが望ましいです。各目標に対して、具体的な期間や達成時期を設定し、進捗管理ができるように計画を立てましょう。

物件・土地探し

飲食店を開業する際には、まず物件や土地探しを行うことが重要です。物件選びは、適切な立地や広さを見つけることが成功の鍵となります。

物件や土地は資金調達よりも先に

開業に必要な資金を把握するために、物件や土地探しは資金調達よりも先に始めましょう。これは、物件や土地の条件が資金調達の前提となるからです。

店舗の立地を検討する際には、開業する飲食店のコンセプトがターゲット客に合っているのかリサーチすることが大切です。

家賃については、人通りが多い商店街や駅近など、アクセスがよい場所は集客に有利ですが、賃料は高い傾向があります。

いっぽうで、住宅街やオフィス街などのエリアは賃料が比較的安いものの、立地による集客力が低い場合があります。自分の店のターゲットとなる顧客がどのような場所に集まるのか、周辺環境を考慮して選びましょう。

また、開業資金を抑える方法のひとつとして、居抜き物件を利用する方法があります。居抜き物件の場合は店舗の広さや間取り、設備が適切かどうかを確認します。たとえば、厨房の広さや排気設備が十分か、トイレの数やバリアフリー対応が必要かどうかなどを考慮します。建物の築年数や耐震性、公共交通機関の便が良いエリア以外の場合は、駐車場の有無なども物件選びの重要なポイントです。

業者など専門家にも相談する

不動産業者や専門家に相談することで、適切な物件選びや契約内容の確認がスムーズに進むケースも多いです。

専門家には、飲食店開業に特化した不動産業者や、地域の商業施設開発を行っている企業があります。地域の情報や市場調査を行い、開業コンセプトに適した物件を提案してくれます。

また、弁護士や税理士などの専門家には、契約内容のチェックや税務対策、法律相談などを依頼できます。

賃貸契約時には敷金・礼金や家賃の交渉も重要です。契約に踏み切る前に、契約期間や更新料、解約時の条件も事前に確認しましょう。

飲食店に必要な坪数

飲食店の開業にあたって重要な要素のひとつが、適切な店舗面積を見つけることです。店舗の広さは業務形態やコンセプトによって大きく変わりますので、慎重に検討しましょう。

業務形態やコンセプトで左右される

店舗の大きさは、業務形態やコンセプトによって異なります。たとえば、ファミリーレストランや大型居酒屋の場合、広いスペースが必要となります。いっぽうで、カフェやバーのような規模では、よりコンパクトな空間でも十分に対応できます。

小型店舗は10~15坪

一般的な小型の飲食店では、10~15坪程度のスペースが必要です。これにより、カウンター席やテーブル席を適切に配置し、快適な空間を提供できます。また、厨房やトイレなどの必要な設備も考慮する必要があります。

極小店舗では10坪未満も

極小規模の飲食店の場合、10坪未満のスペースでも運営が可能です。これには、立ち飲みスタイルやテイクアウト専門店などが含まれます。ただし、狭いスペースを効率的に活用するために、設計やレイアウトには工夫が必要です。

客席と厨房の割合

飲食店の店舗面積を検討する際には、客席と厨房の割合も考慮する必要があります。一般的に、客席部分は全体の60%~70%、残りの30%~40%が厨房やトイレ、倉庫などのスペースに充てるのが良いとされています。

業態やコンセプトによって、この割合に当てはまらない場合もあるので、あくまで参考としてください。

メニューと価格設定

​​飲食店の成功を左右する重要な要素のひとつが、メニューと価格設定です。競合店との差別化や、ターゲット層のニーズに合わせたメニュー提供が、お店の人気を高めるカギとなります。

まず、原材料費や労務費、光熱費などのコストを把握しましょう。これらのコストをもとに、適正な価格帯を算出することが大切です。次に、競合店舗の価格帯や地域の消費者の購買力を考慮して、独自の価格設定を行います。

価格設定を行う際には、利益率を考慮することも重要です。高価格帯のメニューでも原材料費が高ければ利益が出にくくなるため、適正な利益率を確保しつつ、顧客にとって魅力的な価格帯を設定することが求められます。

また、ターゲットとする客層やコンセプトに応じた価格設定も重要です。たとえば、ファミリー向けの店舗であれば、家族連れに優しい価格設定が好まれるでしょう。高級感を演出したい場合は、一品料理の価格帯を上げることで、その雰囲気を醸し出すことができます。

リピート客を獲得したい場合は、季節やイベントに合わせて限定メニューや価格を設定することで、新鮮さをアピールできます。定期的に市場調査や競合分析を行い、価格設定の最適化を図りましょう。

市場調査を行う

市場調査は、競合店や近隣の飲食店の情報を収集し、自分のお店の価格やサービスがどのように位置付けられるかを把握するために実施します。市場調査にはいくつかの手法があります。

インターネット調査:インターネットを活用して、競合店や近隣の飲食店のウェブサイトやSNSを調査し、メニューや価格帯、サービス内容などの情報を収集します。

実地調査:実際に競合店や近隣の飲食店を訪れて、メニューや価格帯、店内の雰囲気、サービス内容などを直接確認します。

アンケート調査:ターゲットとなる顧客層にアンケートを実施し、ニーズや希望する価格帯、サービス内容などを把握します。

市場調査を通じて得られた情報をもとに、お店のメニューや価格設定、サービス内容を決定することで、競合店との差別化が図れ、成功しやすいお店づくりができます。

開業資金の調達

飲食店を開業する際には、まず資金調達が必要です。資金調達は、自己資金や創業融資など、さまざまな方法があります。

この項目では開業資金の目安や、コストを抑える方法、創業融資を受けるためのポイントをまとめました。

初期費用の目安は1,000万ほど

飲食店の開業にかかる初期費用は、物件の賃料、内装工事費、厨房機器の購入費用、開店準備費用、営業許可申請費用などが含まれます。

都内と郊外で、それぞれ10坪の飲食店を開業すると想定したモデルケースで試算します。具体的な内訳を見てみましょう。

【都内】
物件の賃料:敷金・礼金・保証金(3ヶ月分):500,000円 x 3 = 1,500,000円
内装工事費:1坪あたり30万円 x 10 = 3,000,000円
厨房機器の購入費用:2,000,000円
開店準備費用:1,000,000円
営業許可申請費用:50,000円
運転資金(人件費、生活費含む):3,000,000円
合計:10,550,000円

【郊外】
物件の賃料:敷金・礼金・保証金(3ヶ月分):300,000円 x 3 = 900,000円
内装工事費:1坪あたり20万円 x 10 = 2,000,000円
厨房機器の購入費用:1,500,000円
開店準備費用:800,000円
営業許可申請費用:50,000円
運転資金(人件費、生活費含む):2,500,000円
合計:7,750,000円

運転資金には、人件費や原材料費、光熱費、広告費など、営業を継続するために必要な費用が含まれます。また、オーナーが生活するための資金も含めています。

これらの費用を加えた場合、都内での開業は約10,550,000円、郊外での開業は約7,750,000円となります。

試算を見ると、開業資金において、賃料は大きな要素となることがわかります。都内と郊外で賃料が異なるため、開業資金にも大きな差が生じています。また、内装工事費や厨房機器の購入費用も、事業規模や立地によって変動するため、総額に影響を与えます。

ただし、これらの金額はあくまで目安であり、実際の費用は物件や内装の具体的な条件、人件費や生活費などの個別の状況によって変わります。開業資金を正確に把握し、適切な計画を立てることが、事業成功の鍵です。

コストを抑える方法

飲食店開業において、コストを抑える方法を検討することは重要であり、資金の節約は、事業運営を安定させるための基盤となります。以下に、飲食店の開業時にコストを抑えるための方法をいくつかご紹介します。

・立地選び

家賃は開業資金の大きな要素です。都心部ではなく、郊外や周辺の副都心を選ぶことで、家賃を抑えることができます。

また、駅から離れた立地や2階以上の物件を選ぶことでも、家賃が安くなる可能性があります。ただし、集客力とのバランスを考慮しましょう。

・家賃交渉

物件を借りる際には、家賃を交渉することでコスト削減が可能です。物件の条件や周辺の相場を事前にリサーチし、適切な金額を提示することが大切です。また、契約更新時にも家賃交渉が可能な場合があります。

・内装・設備のリース・リユース

内装工事や厨房設備は大きな費用がかかりますが、リースやリユースを利用することでコストを抑えることができます。中古の厨房機器や家具の活用や、リースの利用などで初期投資を減らすことが可能です。

・人件費の削減

人件費は運営コストの大部分を占めます。家族など身内でスタッフを構成することで、人件費を抑えることができます。

また、パートやアルバイトを活用し、効率的なシフト管理を行うことで、人件費のコントロールが可能になります。

・メニュー

飲食店開業において、メニューの選定もコスト削減につながります。原材料の仕入れコストを抑えるためには、季節に合った食材を活用したメニューを考慮しましょう。

また、シンプルで調理が容易なメニューを提供することで、人件費や調理時間の削減にもつながります。

・効果的な広告・宣伝

広告費を抑えるためには、SNSや口コミを活用した宣伝が効果的です。SNSを駆使することでターゲット層にリーチしやすく、低コストでの宣伝が可能になります。

また、よいサービスを提供することで口コミが広がり、自然な集客が期待できます。

創業融資を受けるためには

創業融資は、日本政策金融公庫の「創業融資」や民間金融機関の「信用保証協会付融資」が利用できます。

創業融資を受けるためには、事業計画書の作成が必要です。また、事業計画書以外に以下の書類が求められることが一般的です。

事業計画書以外に必要なモノ

  • 試算書表
  • 確定申告書(3期分)
  • 損益計算書
  • 貸借対照表
  • 資金繰り表
  • 銀行取引一覧表
  • そのほかの書類

創業融資は起業時に申し込める融資ですが、審査は厳しいため、事業計画書は根拠に基づき数値化されたものが求められます。また、自己資金がない場合は、自己資金がない合理的な理由説明ができなければ融資が通ることはないでしょう。

飲食店における融資・資金調達について、こちらの記事もご覧ください。

飲食店開業に必要な資格

飲食店を開業するにあたって、必須となる資格は食品衛生責任者と防火管理者です。これらの資格を取得しなければ、そもそも開業することができません。

食品衛生責任者

食品衛生責任者は、飲食店を開業する際に忘れてはいけない資格です。食品衛生法に基づき、飲食店で提供される食品が、衛生的な環境で調理・提供されることを確保する目的があります。

食品衛生責任者には、食品に関する法令の知識や衛生管理の方法、食中毒発生時の対応などが求められます。

資格取得には、各自治体で開催される講習会の受講、通信講座や専門学校での講習を受講し、試験に合格することが必要です。まずは、お住まいの地域で開催される講習会の日程や費用を調べ、申し込みを行いましょう。

防火管理者

防火管理者も、飲食店開業においてなくてはならない資格です。消防法に基づいて、火災の予防や避難設備の整備、火災発生時の適切な対応などを担当する役割を持ちます。

とくに、厨房設備がある飲食店では、火災リスクが高いため、防火管理者が配置されていることが求められます。

防火管理者の資格取得には、消防署が実施する講習会に参加する必要があります。消防署のホームページやお住まいの地域の自治体のホームページで講習会の日程や費用を調べ、申し込みを行いましょう。

講習では、火災予防法や消防設備の点検・整備、火災発生時の適切な対応などを学び、講習会の修了後、修了試験に合格することで資格が取得できます。

飲食店開業に調理師免許は必須ではない

飲食店を開業する際、調理師免許は必須ではありません。調理師免許は料理のスキルや知識を証明するもので、飲食店開業に必ずしも取得すべきものではありません。

いっぽうで、飲食店営業許可は必要です。飲食店営業許可は衛生面や安全面を満たしていることを示すもので、飲食店を開業する前に取得する必要があります。

調理師免許を取得しておくメリットは?

必須取得ではないものの、調理師免許取得のメリットは多岐にわたります。

まず、食品衛生や衛生管理知識を習得することで、お客様に安心して食事を提供できるようになります。これは、食中毒や衛生問題が発生しないように配慮することができるため、お客様の信頼性が向上します。

また、食品衛生責任者資格が同時に取得できることから、従業員に食品衛生責任者を任命する必要がなくなり、人件費の節約につながります。さらに、調理師免許を持つスタッフはほかの従業員への教育や指導がおこなえるため、全体のスキルアップに貢献できます。

調理師免許は、一般的に料理の技術や知識が豊富であると認識されているため、お客様からの評価が高まることが期待できます。結果として、リピート率や口コミによる新規顧客の増加が見込まれ、飲食店経営において大きなメリットとなります。

さらに、将来的には調理師免許を活かして、自分の店だけでなく、ほかの飲食店で働くチャンスが広がります。免許があれば、より高いポジションや待遇で採用される可能性が高まるため、キャリアアップにもつながります。

調理師免許取得には、調理師養成施設や専門学校で学ぶか、2年以上の調理業務従事期間が必要です。

飲食店開業に必要な届け出

飲食店を開業する際には、さまざまな手続きや届け出が必要です。これらは、飲食店開業時に必要なものばかりですが、適切に届け出を行い、法令を遵守することで、安全で信頼できる飲食店経営が可能となります。

各種手続きや届け出は煩雑ではありますが、事前に準備を行い、スムーズな開業を目指しましょう。

飲食店営業許可

飲食店を開業する際、まず必要となるのが飲食店営業許可で、都道府県知事の許可を受ける必要があります。

実際の申請手続きや審査は各都道府県の保健所が行っているため、まずは保健所に必要書類を提出し、審査を受けることになります。

審査が終わり、許可が下りた場合、都道府県知事の名前が記載された飲食店営業許可証が交付されます。この許可証を店舗内に掲示することが求められます。

防火管理者選任届

消防法に基づいて、建物内の火災予防や避難設備の管理を担当するのが「防火管理者」です。消防法や関連法令に精通し、消防設備の管理や運用に関する技能・知識が求められます。

従業員を含む収容人員が30人以上、延べ面積が300平米以上の火を使用する飲食店であれば、法令に基づいて防火管理者の選任が義務付けられています。

防火管理者を選任した後、所轄の消防署に防火管理者選任届を提出することで、法令遵守の手続きが完了します。選任届には、選任された防火管理者の氏名や住所、資格情報が記載されます。

防火対象設備使用開始届

飲食店では多くのケースで火を扱う設備があることから、防火対象設備の使用開始7日前までに「防火対象設備使用開始届」を提出することが求められます。

これは、消防設備の適切な設置と管理が行われていることを確認するための手続きです。届け出を行うことで、消防署が店舗の安全対策をチェックし、適切な指導やアドバイスが受けられます。

火を使用する設備等の設置届

調理用のガス器具やボイラーなど、火を使用する設備を設置する際には「火を使用する設備等の設置届」を消防署に提出しなくてはなりません。

この届け出は、火災リスクを把握し、適切な対策を講じるための手続きとなります。設置届を提出することで、消防署による検査や指導を受けることができ、火災のリスクを軽減することができます。

また、適切な設備管理が行われることで、安全な環境が整備され、お客様に安心して利用してもらえる飲食店となります。

個人事業の開業届

個人事業主として飲食店を開業する場合、税務署への「個人事業の開業届」の提出が必要です。この届け出は、開業にともなう所得や経費の申告・納税をスムーズに行うための手続きであり、正確な税務管理が求められます。

個人事業主として開業した後も、確定申告や青色申告の選択、消費税の納税など、税務に関するさまざまな手続きが必要となります。

そのため、開業前に税務署や税理士など、専門家のアドバイスを受けることが望ましいです。適切な税務管理を行うことで、飲食店経営の安定化や、信頼性の向上につながります。

社会保険の加入

飲食店を開業する際には、社会保険への加入を忘れてはなりません。社会保険は、労働者の福祉を守るための制度であり、飲食店経営者や従業員が安心して働ける環境を提供するためのものです。

社会保険には、主に健康保険、厚生年金保険、介護保険の3つがあります。飲食店経営者の場合、従業員が加入する社会保険を選定し、適切な手続きを行うことが求められます。

加入手続きには、最寄りの社会保険事務所に所定の書類を提出することが必要です。また、保険料の納付も重要な義務であり、遅滞なく支払いを行うことが求められます。

適切な社会保険加入は、飲食店経営の安定化や信頼性向上につながることを覚えておきましょう。

特定の飲食店営業時に必要な届け出

特定の飲食店営業には、深夜営業や風俗営業に関する許可が必要です。これらの許可は、都道府県の公安委員会に申請することで取得できます。

それぞれの営業形態によっては、追加の届け出が求められる場合もありますので、開業前に確認をしておきましょう。

深夜酒類提供飲食店営業

バーなど、深夜0時以降に主として酒類を提供する飲食店の場合「深夜酒類提供飲食店営業許可」を管轄の警察署へ届け出ます。言い換えれば、0時までに閉店する店舗や、レストランなど食事をメインで提供する店舗の場合は、この届け出は不要です。

注意点として、深夜酒類提供飲食店営業許可の前に、飲食店営業許可を保健所に申請していることが必要です。

風俗営業許可申請

キャバクラやスナックなど、接待を含む風俗営業に該当する飲食店を開業する場合は、管轄の警察署に「風俗営業許可」を申請する必要があります。前項で述べた、深夜酒類提供飲食店営業許可と同時に届け出ることが一般的です。

従業員を雇う場合必要な届け出

飲食店で従業員を雇う場合は、労働基準監督署やハローワークに関連する届け出が必要です。

労災保険の加入

従業員を1日・1名でも雇う場合、管轄の労働基準監督署および公共職業安定所(ハローワーク)で、労働者災害補償保険(労災保険)に加入する義務があります。

労災保険は、従業員が業務中の事故や職業病により負傷・疾病・障害・死亡した場合に、治療費や補償金を支給する制度です。飲食店においても、調理中に火傷や切り傷が発生する可能性がありますし、繁忙期や業務負荷が高い時期に過労で体調を崩すことも考えられます。

保険料は事業主が負担し、従業員の労働条件に応じて算定されます。対象となる従業員はパートやアルバイトも含みます。

雇用保険の加入

雇用保険は、従業員が失業した際に一定期間の給付を受けられる制度です。飲食店で従業員を雇い入れる場合、雇用保険法に基づいて加入が義務付けられています。

ただし、労災と異なり、加入するための適用条件は以下のように定められています。

・31日以上継続して雇用されることが見込まれる

・1週間の所定労働時間が20時間以上である

雇用保険料は、事業主と従業員が共同で負担しますが、保険料率は事業所の業種や従業員の雇用形態によって異なります。雇用保険への加入手続きは、最寄りのハローワークや、雇用保険加入事業所通知書の郵送でも行えます。

また、雇用保険の適用を受ける従業員は、労働条件通知書や雇用保険被保険者証を受け取る必要があります。

まとめ

飲食店の開業を考える際、まずは事業計画を立てることが重要です。5W1Hの考え方に基づいて、具体的なターゲット層を設定し、資金調達よりも先に物件選びを済ませておくのを忘れないようにしましょう。

物件が決まったら内装費や什器・設備費などが把握できるようになるので、開業にあたって具体的に必要な金額と資金調達方法を事業計画書に記載することができるようになります。

開業資金については、自己資金を準備していても、開業後の運転資金も含めて、全てを賄うことは容易ではありません。そうした場合の資金調達方法としては、創業融資がおすすめです。

日本政策金融公庫の「創業融資」と民間金融機関の「信用保証協会付融資」は起業時に利用できる制度融資です。申し込み条件が緩和されているため、審査は厳しいですが、数値的根拠に基づいた事業計画書が用意できれば融資を受けやすくなります。

忘れてはいけないのは、開業はスタートでありゴールではありません。事業計画に則って事業運営をおこない、利益を上げて返済計画に沿って滞りなく返済をしていきましょう。

自分だけですすめるのが不安な方は、プロに相談をすることもおすすめです。その際、資金調達のことだけではなく、開業後の健全な運営計画についても相談できる業者を選ぶことが大切です。

これから飲食店の開業を考えている方は、ぜひファイナンスアイへご相談ください。

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記事・コンテンツの監修者

起業創業開業の資金調達コンサルタント

株式会社ファイナンスアイ(経済産業省M&A支援機関登録済)
代表取締役 田中 琢朗(たなか たくろう)

大手の金融機関・上場企業の財務部門責任者などを歴任し、2014年にファイナンスアイを創業。業界歴30年・創業10年のベテラン。中小企業・個人事業主・起業家と一緒に、現場で泥臭く汗をかいて靴をすり減らして財務を軸に経営者を支援し続け、のべ10,000人以上の圧倒的な実戦経験を持つ。ノウハウを「ファイナンスアイ式メソッド」として確立。中小にはびこる悪質なM&Aの被害をなくすために、M&A支援も本格化。売手・買手のいずれの立場からも真のM&Aを提供。現在も毎月150件以上の新規相談に対応し、毎週セミナーも開催中。日本経済のために今日も邁進しています。

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