株式会社とは?仕組みや設立の手順を分かりやすく解説

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株式会社とは?仕組みや設立の手順を分かりやすく解説

2023年4月14日

会社設立を考える際にまず必要なのは、会社形態をどうすればよいのかという問題です。日本では株式会社が一般的でなじみがありますが、2006年の新会社法施行によって、新しく「合同会社」も認められるようになりました。

しかし、現在においても株式会社が多数派であり、新規会社設立の70%以上は株式会社形態です。そこで、ベーシックな会社形態として株式会社の設立やその仕組みについて今回解説していきます。

株式会社の仕組みを学べば、他の会社形態にも応用できます。しっかりと知っていきましょう!

株式会社の意味と仕組み

株式会社は、「発行した株式を買ってもらうことで資金調達を行い、その資金で得られた利益を株主に還元しながら事業運営する会社」という形態になります。

上場会社の場合、第三者が証券取引市場で株式を購入し、その対価として、株主総会に出席し、会社の意思決定に参画することや配当受取を行うことができます。

ポイント

  • 会社に利益が生じたときは、株主は配当として出資(株式購入額)に見合った対価を受け取る
  • 株主は株主総会を通じて保有株式に応じた株主総会の議決権を持ち、会社の経営に参加できる

の2点が特徴的です。会社は株主に株式を発行して資金調達できますが、持株比率に応じた議決権を株主が保有することを理解しましょう。

株式会社と合同会社の違い

2006年の新会社法で新しく設立が認められたのが合同会社です。Amazonなど外資系有名会社の中には、日本法人の設立に際して合同会社形態を採るところも少なくありません。

合同会社は株式会社より安く設立できること、経営と所有が分離されないことが大きな特徴で、会社設立においては、初期費用が株式会社の設立については約30万円かかるのに対し合同会社は約10万円で設立可能のため、、費用が抑えられる理由から人気の設立方法になっています。

そのほか、株式会社と合同会社の違いを表にまとめました。

株式会社合同会社
代表者の名称『代表取締役』『代表社員』
資本金1円以上1円以上
出資者と経営者異なる場合がある同じ
重要事項の決定株主総会の議決社員全員の同意
事業における決定方法取締役の議決
(経営者は『取締役』)
社員の過半数の同意が必要
(経営者は『社員』)
最高意思決定機関株主総会社員総会
業務執行者取締役業務執行社員あるいは社員全員
責任の範囲有限責任有限責任
役員の任期2年ごとに更新(最大10年)なし
定款の認証必要必要なし
出資者への利益分配株式の保有割合に応じて配分社員間の合意で自由に配分
株式の譲渡定款の定めによる社員全員の同意が必要
社会的な認知度高い低い
株式の公開できるできない(「株主」がいない)

株式会社と有限会社の違い

かつての会社法では小規模な会社、家族経営の会社として「有限会社」が認められていました。

有限会社は株式会社より資本金の制約があり、社員数にも限りがあります。そこまで大きい規模で経営しているわけではない会社が有限会社となります。現在は新規の設立は認められておらず、合同会社が有限会社の代わりとして登場しました。

当時の有限会社は「特例有限会社」として存続しています。しかし、新規の設立はできません。会社設立を考えている方は、有限会社については選択肢にならないので注意してください。

株式会社と有限会社の違いを表にまとめました。

違いの内容株式会社有限会社
代表者の名称『代表取締役』『代表取締役』(任意)
資本金1円以上300万円以上
出資者と経営者異なる場合があるほぼ同じ
重要事項の決定株主総会の議決社員総会の議決
事業における決定方法取締役の議決
(経営者は『取締役』)
取締役の議決
(経営者は『取締役』)
最高意思決定機関株主総会社員総会
業務執行者取締役取締役
責任の範囲有限責任有限責任
役員の任期2年ごとに更新(最大10年)なし
定款の認証必要必要
株式の譲渡定款の定めによる自由
社会的な認知度高いやや低い
株式の公開できるできない

経営と所有が一体化しているので、家族経営や小規模企業に向いた仕組みになっています。

株式会社のメリット・デメリットを比較

現在、新規に設立している会社は株式会社と合同会社で99%を占めます。合名会社や合資会社もありますが、実質株式会社と合同会社の2択になります。

その中で株式会社を設立するメリットは何なのでしょうか?その仕組みを理解しながら考えます。またデメリットについても押さえておきましょう。

株式会社のメリット

まず株式会社のメリットについて考えます。

会社がどれだけ大きくなっても続けることができる

株式会社の資本金は青天井です。増資することで、資本金を1億円にも10億円にもできます。会社の規模を拡大し、世界的企業にしたい場合、株式会社の方が有利です。

株式を発行することで、出資者を募り資金調達ができる

株式会社は株式を発行することで、資金調達ができます。
会社の株式を購入し、配当や株主総会への参加を目的にしている投資家や企業から出資を受けることで、多額の資金調達をすることが可能となります。

個人事業主、合同会社よりは社会的な信用がある

「個人事業主の〇〇さん」という評価よりも「株式会社〇〇代表取締役△△」の方が圧倒的に社会的信用は高くなります。
また、合同会社は近年できた制度のため、株式会社と比較すると社会的な信用は一般的には劣ります。

個人事業主より節税しやすい

個人事業主と比べて株式会社は経費として認められる範囲が大きく、結果として節税につながる場合があります。

例えば、スポーツクラブの会費は株式会社の場合「福利厚生費」で経費計上できる場合もありますが、個人事業主の場合はそれができない可能性が高いです。

株式会社のデメリット

一方で株式会社の仕組み上、デメリットもあり、合同会社あるいは個人事業主を選んだ方が良い項目もあります。

会社設立登記費用が高い

株式会社の設立については約30万円かかるのに対し合同会社は約10万円、個人事業主は0円と設立に関する費用がかかることは株式会社設立のデメリットとなります。

役員に任期を設定しなくてはならず、定期的に見直す必要がある

株式会社の役員には任期があり、定款に定められている期間毎に再任が必要です。取締役の再任は株主総会によって決定される為、上場会社等の大規模の会社になると手間とコストがかかります。

合同会社の役員(社員)には任期がなく、一度選任すればそのまま継続できます。

資本金の額で信用が左右される

2006年の新会社法によって、仕組み上最低資本金制度がなくなりました。「1円会社」も可能になりましたが、資本金が少ない株主総会は自己資本が足りず、経営が苦しいのだとマイナス評価になります。

資本金額の多い少ないによってある程度、信用が左右されてしまいます。

決算を開示しなくてはならない

株式会社を設立すると、決算公示の義務が生じます。

決算公示とは、各期の会社の売上、収支や財務状況を株主などに公開することです。

決算公示義務は株式会社のみの義務で、合同会社ではその義務はありません。

株主は持株比率に応じた議決権を持つ

株主総会では所有している株式の比率に応じて議決権があります。もし、株主が株式の一定以上を所有していた場合、その株主の意向が会社の方向性を株主総会にて決定します。株式の保有割合に応じ、役員の選任および解任から会社の合併の有無や会社の解散など、重大な意思決定が株主にゆだねられてしまい、結果として経営への介入を許すことになります。これは株式会社が経営と所有を分離している構造であることから生じるものでM&Aなども、この構造により生じます。

株式会社を設立する際に準備するもの

このように株式会社にはメリットとデメリットがあります。それを踏まえて株式会社設立を決めた場合に準備するものを確認します。

設立資金

まず、株式会社設立手続きにかかる費用、資金は以下になります。これらは、公証役場での定款認証や登記の際の印紙代など、株式会社設立の事務手続き上必要な法定費用になります。

また、会社の社判(実印)を新規に作成し、印鑑登録を行う必要があります。

項目費用
定款認証代資本金が100万円未満の場合「3万円」
資本金100万円以上300万円未満の場合「4万円」
資本金がそれ以上の場合「5万円」(定款を認証する際の手数料)
定款印紙代40,000円(公証役場で紙の手続きの場合)
0円(電子認証の場合は定款に貼る印紙代は無料)
登録免許税150,000円
定款謄本代2,000円
会社の実印等約20,000円
資本金1円以上
合計約240,000円+資本金

次に設定した資本金を調達します。資本金を会社に入れる人は、発起人と言われ、定款に明記されます。自分ひとりが発起人となるのか、他者も発起人となるのかは、今後行いたいビジネスの内容や、必要な資本金等から検討していくことが必要となります。

法務局での登記完了後、会社名義の銀行口座を作り、資本金を振り込みます。個人事業主の場合、個人口座と仕事用口座兼用もできますが、確定申告上あまり行わないほうがいいでしょう。法人化すると会社名義の口座が必要となるため、また会社の資本金を会社口座に振込しない場合、役員への貸付という処理になるので注意が必要です。

必要書類

株式会社設立を法務局に届け出する場合に必要な書類は以下になります。

株式会社設立の法務局届け出書類

  • 定款
  • 発起人の同意書
  • 株式申込書
  • 払込金保管証明書
  • 創立総会議事録
  • 設立時代表取締役を選定したことを証する書面
  • 設立時取締役(及び設立時監査役)の就任承諾書
  • 印鑑証明書
  • 本人確認証明書
  • 設立時取締役(及び設立時監査役)の調査報告書並びにその附属書類
  • 資本金の額の計上に関する設立時代表取締役の証明書

事業計画書

どのような事業をしたいのか、開業後の売り上げ見込みなどをまとめた事業計画書は、株式会社を設立する上でに必要はないないですが、設立後に業務を行っていく流れをスムーズにし、1日でも早く売上を計上するためにも作成しておいた方がより良いです。

なお、「創業融資」などの融資制度を開業時に活用したい場合は、金融機関向けに提出する事業計画書が必須になります。

株式会社を設立する手順

金融機関からの融資

株式会社を設立する流れは以下になります。

事業プランを確定させる

どのようなビジネスをどのようなスケジュールで行うのか、投資金額はどの程度必要か、創業メンバーはどのようにするのか、場所やサービス形態はどのようにするのか等々の事業プランについて固めます。

定款の作成と認証する

定款の中では大きく以下の項目を決定します。

定款の決定項目

  • 社名
  • 事業目的
  • 本店所在地
  • 株式の取り扱い
  • 株主総会の取り扱い
  • 取締役の取り扱い
  • 取締役会の取り扱い
  • 決算期
  • 発起人

株式会社の場合、定款認証も必要なので、公証役場に行き公証人から認証を受けるか、電子定款について法務省システムを使って認証します。

法人登記申請書の提出する

上記で記述した必要書類を本店所在地の管轄である法務局に提出します。

法人設立が完了

書類の審査が無事に通れば株式会社の設立が完了し、法人番号が発行されます。書類提出から完了まで10日〜半月程度かかります。

株式会社の設立で知っておいた方がいい知識

株式会社を設立する場合、知っておいた方が良い知識を紹介します。

所得に対する税率が異なる

株式会社を設立し所得が生じた場合、法人税がかかります。

個人事業主の税率を表にまとめました。個人事業主と会社の税率は異なるため、どちらが今行う予定のビジネスにふさわしいのかの判断基準の参考にしてください。

 

個人事業主
所得税

会社
法人税
課税される所得金額 税率

1,000円 から 1,949,000円まで

5%

一律23.2%
一部中小企業法人は課税所得800万円まで15%、超えた部分は23.2%

1,950,000円 から 3,299,000円まで

10%

3,300,000円 から 6,949,000円まで

20%

6,950,000円 から 8,999,000円まで

23%

9,000,000円 から 17,999,000円まで

33%

18,000,000円 から 39,999,000円まで

40%

40,000,000円 以上

45%

株式の取り扱いには注意しよう

上述のように株式保有割合に応じて株主総会における議決権が決まります。

株式を第三者に半分(50%)以上所持されてしまうと、会社の株主総会における決定権の多くが経営者から失われてしまいます。俗にいう「乗っ取り」は経営者が会社の所有に関わる権利が失われた状態を表しています。

「経営資金を出す代わりに株を51%保有させてくれ」等の提案は、十分な検討が必要になるため、慎重に検討をしてください。

社会保険への加入は必須

会社を設立した場合、役員と社員は全員社会保険への加入が必須になります。1人の会社だとしても、国民健康保険ではなく社会保険への加入が義務となります。

株式会社の仕組みや設立方法についてまとめ

株式会社は、合同会社に比べるとやや手続きが複雑になります。

株式会社の仕組みやメリットとデメリットもしっかり理解し、どの会社形態がベストなのか判断してください。

株式会社には会社法で定められた義務や、経営と所有が分離している構造から、個人事業主や合同会社と比較すると、社会的信頼があることや、増資を始めとする事業プランの選択肢が多くあります。そのメリットを上手く活用するためにはまず仕組みを知り、しっかり検討し、準備することが大切です。

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記事・コンテンツの監修者

起業創業開業の資金調達コンサルタント

株式会社ファイナンスアイ(経済産業省M&A支援機関登録済)
代表取締役 田中 琢朗(たなか たくろう)

大手の金融機関・上場企業の財務部門責任者などを歴任し、2014年にファイナンスアイを創業。業界歴30年・創業10年のベテラン。中小企業・個人事業主・起業家と一緒に、現場で泥臭く汗をかいて靴をすり減らして財務を軸に経営者を支援し続け、のべ10,000人以上の圧倒的な実戦経験を持つ。ノウハウを「ファイナンスアイ式メソッド」として確立。中小にはびこる悪質なM&Aの被害をなくすために、M&A支援も本格化。売手・買手のいずれの立場からも真のM&Aを提供。現在も毎月150件以上の新規相談に対応し、毎週セミナーも開催中。日本経済のために今日も邁進しています。

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