会社経営を続けていくうえで大切なことのひとつに、支払いに必要な資金をショートさせないことが挙げられます。資金がショートすると融資の返済などが滞ってしまい、倒産につながってしまいます。
とくに起業して1年目は資金ショートになりやすく、いかに資金を確保したうえで事業を続けていくかが重要です。
今回は、資金ショートが発生する原因や、予防策について詳しく解説します。これから起業を考えている人や、起業して間もない人はぜひ参考にしてください。
資金ショートとは
資金ショートとは手持ちの現金がなくなり、企業経営に必要な資金が足りなくなってしまうことを指します。会社を運営するために、銀行への融資の返済や取引先への支払い、従業員への給料の支払いなど、さまざまな場面で資金が必要です。
資金ショートに陥ってしまうと支払いができなくなり、事業の継続が不可能となってしまいます。また、売上が伸びていても、支払いができないと倒産のリスクが高くなります。
不動産や売掛債権など、現金価値のあるものを持っていればよいわけではありません。こうした資産はすぐには現金化できないため、支払いに対応するための資金をあらかじめ確保しておく必要があります。
起業1年目はとくに注意
起業するために必要な資金はあるものの、資金の回収までに発生するコストの支払いができないケースが1年目にはよくあります。起業に必要な資金だけではなく、会社の維持に必要なコストを計算し、計画的に資金繰りができるかを考える必要があります。
会社を維持するために必要な資金は、半年〜1年分を用意しておくのが理想です。しかし、かなりの額になる可能性があるため、ある程度売上でまかなえる場合は、4〜5か月程度用意できるとよいでしょう。
資金ショートを防ぐためには、起業する前に十分な自己資金の確保が大切です。どのくらいの借入が必要かを考える前に、自分で用意できる資金はどのくらいかを見積もりましょう。
起業を決意した段階から貯金や積立投資を始めるほか、退職金や不動産の売却など資金を作る方法はさまざまです。
開業後まもない資金ショート防止に創業融資を活用すべき
開業時に利用できる融資は、日本政策金融公庫の創業融資、または民間金融機関の信用保証協会付融資のどちらかのみです。
なかでも創業融資は日本政策金融公庫や銀行などで利用できます。日本政策金融公庫には新創業融資制度があり、事業を始める人や事業開始から税務申告を2期終了していない人が対象です。
最大3,000万円(うち1,500万円が運転資金)まで借入できるほか、無担保・無保証人である点も特徴です。制度の利用において、自己資金の要件は以下の2点です。
自己資金の要件
- 新しく事業を始める、もしくは事業開始から税務申告を1期終了していない
- 創業時において、創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる
あくまで新しく事業を始めたときや、事業を始めてから必要とする運転資金や投資資金に用途が限られるので、注意が必要です。
資金ショートに関する知識
資金ショートについてより詳しく知るために、以下の項目について解説します。
資金ショート
- 債務超過との違い
- 赤字との違い
- 黒字でも資金ショートするケース
- 資金ショートが起こるとどうなるか
事業を続けていくうえで把握しておくべき部分なので、参考にしましょう。
債務超過との違い
債務超過とは、資産よりも負債が上回っている状態を指します。会社の在庫や資産をすべて換金しても、支払いきれない状態です。
しかし、債務超過に陥ったからといってすぐに倒産するわけではありません。金融機関から融資を受けている会社も多く、融資額が会社の在庫や資産を上回っているケースもあります。
売上が伸びていても、経費が大きすぎて利益がない場合や、負債の利息しか支払いができていない場合も債務超過に該当します。債務超過に陥った場合会社の信用力が落ち、融資を受けられにくくなるなどのリスクもあるでしょう。
起業してからしばらくは、債務超過に陥りやすい傾向があります。設備投資をした際、利益を上げられるまでに時間がかかる場合があるためです。少ない資本金で起業した場合もまた、赤字額が少なくても債務超過に陥りやすくなります。
起業して間もない頃は会社の信用も低く、資金調達の手段も限られるため、資金集めに苦労すると事業の継続も難しくなるでしょう。
債務超過は、倒産までにある程度の猶予があります。しかし、資金ショートは手元に資金がなく支払いができないため、倒産リスクは資金ショートの方が高くなります。
赤字との違い
赤字は、売上から原価を差し引いたときに、利益がマイナスになってしまう状態を指します。債務超過と同じように、赤字になってもすぐに倒産するわけではありません。
赤字となる企業は珍しいことではなく、設備投資をした際に減価償却費が増えるため、赤字になる可能性が高くなります。設備投資をした年だけを見ると赤字となっているものの、翌年に売り上げが伸びて原価や経費を上回ると黒字に転換できます。
資金ショートの場合、経営の立て直しとは関係なく、そもそも手元の資金がない状態のため、支払いができません。赤字は、将来的に黒字に転換することを見据えている場合もあるため、資金ショートとは意味合いが異なります。
黒字でも資金ショートするケース
商品の売れ行きがよく、売上高が黒字になったとしても、手元の資金がない場合は資金ショートに陥ります。黒字でも資金ショートで倒産することを黒字倒産と呼びます。
資金が減少しても借入金の返済が終わるわけではありません。利益と返済額のバランスが偏っていると資金が底をつく危険性があるため、注意が必要です。
資金ショートを防ぐためには、経費のほかに借入金を返済しても手元に資金が残るには、売上がどのくらい必要か、正しく把握しなくてはなりません。
企業間で取引をしている場合、現金を受け取るまでに数か月を要するケースもあります。現金を受け取るまでの間に、人件費や融資の返済などが必要になるときは、資金ショートのリスクがあるでしょう。
反対に、急激に売上が伸びた場合、売掛金や在庫が増えて帳簿上では黒字であるものの、資金繰りが間に合わずに倒産してしまうケースもあります。
資金ショートが起こるとどうなるか
資金ショートが起きると、仕入れ代金や従業員の給料の支払い、銀行への返済ができなくなります。手形取引があった場合は、不渡りを出してしまい、倒産するリスクも発生します。
資金ショートを起こした際は、余剰資産の売却や支払いに優先順位をつけるなどして、現金の確保が必要です。
また、銀行融資で補填できるケースもありますが、必ずしも融資を受けられるとは限りません。あらゆる手段を講じても資金ショートを回避できない場合、倒産を考える必要もあるでしょう。
資金ショートの発生で、取引先からの信用の低下や従業員の退職、企業経営そのものの停止などが起きてしまいます。
資金ショートが起きる原因
資金ショートが起きる原因は、主に以下の5点があります。
資金ショートが起きる主な原因5点
- 売上の減少
- 取引先の入金遅延・倒産
- 高額な支出
- 資金管理不足
- 自然災害など予期せぬトラブル
資金の枯渇を防ぐためにも、原因の予防策を講じて事業継続につなげましょう。
売上の減少
売上が減ってしまうと、売掛金も減少し、資金ショートにつながってしまいます。売上が減少する主な原因は、以下のとおりです。
売上現象の主な原因
- 会社の商品の評判が急激に下がった
- 競合他社の商品の売上が急激に伸びた
- 会社のトラブルや不祥事で信用が下がった
- 不正が発覚してユーザーからの信用が下がった
売上は毎月安定するわけではないため、短い期間の売上高減少にも耐えられないような資金繰りは、避けなければなりません。売上の減少はいつ起こるか予想できないため、支払いに対応できるように、資金の確保は優先的に行う必要があります。
売上が減少したときは、なぜ売れなくなったのか分析が必要です。競合他社の商品が売れた場合は、自社との違いはどこにあるのかを分析し、商品の改善に役立てます。
トラブルや不祥事に対しては、未然に防止するための対策を日頃から考え、実行できる環境を構築するように努めます。
トラブルが発生した場合は、事実の公表と謝罪を行い、再発防止に向けた対応が必要です。迅速に進めることで、信用の低下を最小限に留められる可能性が出てきます。
取引先の入金遅延・倒産
取引先からの入金の遅れや、倒産して売掛金が回収できなくなることも資金ショートが発生する要因です。商品を取引する際に発生する代金は、すぐには受け取らず、後日入金されるケースが一般的です。
取引で発生した売掛金を回収するまでの間に、経費などの支払いが発生することもあります。そのため、入金と出金のタイミングで資金が足りなくなる事態も想定されるでしょう。
取引を行う際は、代金が支払われるまでの期間である支払いサイトを企業間で取り決め、受け取りを翌月や翌々月などに行うこととなります。そのため、受け取りのタイミングが長くなるほど、手元に残る資金が少なくなっていきます。
取引先が倒産した際も、売掛金が回収できなくなるので、資金ショートの可能性が高くなります。入金遅延や取引先の倒産は事前の予告なく起こってしまうため、自社も倒産のリスクに巻き込まれる危険性も出てくるでしょう。
高額な支出
原材料の価格の高騰したことによる仕入れ代金の増加や、従業員を新しく雇用した際の人件費の増加によっても手元の資金は減少します。主な高額な支出は、以下のとおりです。
主な高額支出
- 訴訟を起こされた場合の費用
- 問題が起きた商品のリコール費用
- 損害賠償の支払い
- トラブルや故障による設備の修繕
- 設備投資
- 営業車の購入
規模の大きい案件を受注し、先行投資が必要になった際も資金ショートに陥る可能性があります。高額な支出に耐えられるように、手元の資金を多めに持っておき、ゆとりを持たせることが大切です。
資金ショートを防ぐために、保険や共済への加入もおすすめです。とくに取引先が倒産した際、掛け金の10倍の金額を無保証・無担保で借入できる「経営セーフティ共済」が利用できます。
掛け金は5,000円から20万円まで自由に設定が可能で、加入中でも掛け金が変更可能です。自由に解約できるほか、掛け金を12ヶ月以上納めている場合は掛け金総額の8割が、40か月以上納めている場合は全額戻ります。
取引先が倒産していない場合でも、早急に資金が必要な場合に、解約手当金の最大95%を借入できる一時貸付金制度も利用可能です。
資金管理不足
普段の業務に振り回されていると、資金管理まで手が回らないことがあります。目先の利益ばかりに注目してしまうと、支払うべきもののバランスが崩れて、資金ショートが発生してしまいます。
経理を担当している社員に資金管理をすべて任せ、経営者自身がまったく把握していないと、帳簿のミスや横領などの不正に気づけません。資金繰りは経理だけでなく、経営者自身もしっかりと把握しておきましょう。
事業を継続するためには、手元の資金を確保しておくことが重要で、トラブルによって資金ショートに陥らずに事業を続けられます。普段から自社の資金の流れを把握しておくことは、安定経営をするための必須事項とも言えます。
日頃の業務から資金管理を徹底し、不安がある場合は、すべての支出の見直しをおすすめします。人件費や接待交際費など、支出が多く発生している費用を洗い出し、改善できる部分がないか考えてみましょう。
自然災害など予期せぬトラブル
会社を経営していると自然災害の被害を受け、売り上げが急激に減少してしまうケースも十分起こり得ます。たとえば、自社工場が災害に見舞われ、工場が動かせない事態になると、製品の製造・出荷が出来ずに商品が売れなくなります。
自然災害はいつ起こるかまったくわからないうえに、完全に防ぐのは困難を極めます。いつ起こっても対応できるように、資金の確保が大切です。
自然災害のほかにも、感染症の拡大やサイバー攻撃も予想しにくいトラブルに挙げられます。感染症の拡大による発注の減少や停止、サイバー攻撃による被害で業務が滞るなどといったことも資金ショートの原因となります。
手元に資金がないと倒産してしまうリスクもあるため、余剰資金をしっかりと確保しておくことは、リスクヘッジにつながります。
資金ショート予防の5項目
資金ショートを予防するために、以下の予防策を紹介します。
資金ショートの予防策
- 資金繰り表の活用
- 余分なコストの削減
- 在庫の回転率上昇
- 請求漏れや未入金の確認
- 売上金の回収タイミングの再考慮
資金繰りをうまく行うためにも、日頃からコストの見直しや、在庫状況の確認を行いましょう。
資金繰り表の活用
資金調達を未然に防ぐために、資金繰り表の作成をしましょう。資金繰り表は、現金の入金や支払いがいつ行われるかを記載する表です。記載する大まかな内容は、以下のとおりです。
資金繰り表の記載項目
- 前月からの繰越金
- 当月の現金の収入・支出
翌月への繰越金
資金繰り表の作成で、当月に入金される額や支払額が把握できるため、どのタイミングで資金が不足するかの予想が可能です。将来的な資金の不足を把握することで、早い段階から資金調達を行い、資金ショートの防止につなげます。
資金繰り表を作成せずに直感的な運用では、気づいたときには資金ショートが発生し、一切の対応ができない事態に陥ります。会社を安定的に運営するために、最低でも半年先までの現金の入出金を予測しておくとよいでしょう。
資金繰り表を作成するメリットはほかにもあり、資金繰りの実績値を分析すると、資金繰りが悪化している原因の究明が可能です。資金繰りの悪化は、長期的な要因で発生することが多く、根本的な原因を究明しないことには、状況の改善が見込めません。
資金繰り表を用いて、収支を細かく分析することで、資金の流れに起きている問題を特定できます。
余分なコストの削減
コストの見直しを行い、不要なコストの削減で資金ショートのリスクが軽減できます。見直すべき部分は、会社運営をするにあたって発生する経費を指す、販売費および一般管理費で、主に以下のものです。
販売費及び一般管理費のコスト見直し
- 家賃
- 水道光熱費
- 人件費
- 通信費
- 仕入れ代金
- 税金
- 保険
- 旅費・交通費
家賃を見直す場合、都市部から郊外への移転で家賃を下げられます。また、長期契約にすることでも賃料の値下げ交渉ができる可能性もあります。
さらに、仕入れ先から購入量を増やす代わりに、単価を下げてもらうよう交渉を行うことでも、仕入れコストの削減が可能です。
人件費は、費用のなかでもとくに大きな支出です。しかし、急なリストラを行うと従業員からの信用低下につながるおそれもあるため、人員削減は慎重に行う必要があります。
ひとつの項目から削減できる金額が少なくても、複数の項目をトータルで見た場合、大きな金額になる場合もあります。そのため、できるだけ無駄を削って、現金を確保するようにしましょう。
在庫の回転率上昇
商品の在庫を多く抱えていると、在庫を保管する倉庫の維持費などのコストがかかってしまいます。不要な在庫を抱え続けることは、赤字を出し続けていることと同じ意味合いです。不要な在庫を売却して、商品の回転率を上げることで余分なロスを削減できます。
食品など賞味期限が設定されているものは、売却先が決まるまでに時間を要するため、過剰な在庫は大きな損失につながります。賞味期限がないものでも、商品そのものの需要がなくなり、売却ができないといったケースもあるでしょう。
とくに流行のアイテムや食品は、旬が過ぎるとまったく売れなくなってしまいます。売るタイミングを逃さないためには、ある程度の在庫を持つことも必要です。
過剰在庫を防ぐために、どのくらいの在庫を持っておけばよいかを割り出して、適切に管理することが大切です。
請求漏れや未入金の確認
請求漏れや未入金があることも、資金ショートに陥る原因のひとつです。取引先が多くなると、管理の手間が増えて請求のし忘れが発生するほか、取引先が入金をしていない事態も考えられます。
未入金が発生していても、取引先へ連絡しない限り、いつまでも振り込まれないケースもあります。まだ売掛金を回収していない場合は、できるだけ早めに取引先へ連絡して、入金してもらいましょう。
取引先が忘れている場合だけでなく、意図的に支払っていないことも想定されるため、注意が必要です。請求漏れや未入金を防ぐために、取引先ごとに売掛帳を作成して、請求や入金を済ませているか細かく管理することも大切です。
請求しているにも関わらず未入金が発生している場合、取引先に請求書が届いていることを確認したうえで、先方に連絡を入れます。未入金の主な原因は、ただの支払い漏れや、請求書の紛失が多いです。
しかし、先方に連絡をしても意思疎通がうまくいかない場合は、取引先へ内容証明を送ります。内容証明を送付する場合、入金までに日にちが開くため注意が必要です。
内容証明を送っても入金がない場合、簡易裁判所へ申し立てを行い、先方への支払いを求める手続きを行います。裁判所からの督促に対して異議申し立てをしない場合、債権者は強制執行の手続きが可能です。
売上金の回収タイミングの再考慮
取引がスムーズでも売掛金の回収まで時間がかかる場合、手元に資金がない期間が長くなり、資金ショートに陥りやすくなります。取引先にとっても、支払日が後になると支払いを忘れてしまう事態にもなるでしょう。
取引先に売掛金を回収するタイミングを変更してもらうことは、簡単なことではありません。取引先も、すでに組まれている支払いスケジュールの変更は、ほかの企業への支払いにも影響を及ぼす可能性があります。
そのため、変更をお願いする際は、取引先が納得できるだけの理由を述べる必要があります。説明が不十分だと、取引先からの信頼を損なう可能性もあり、今後の取引に影響してしまうので注意しましょう。
新規で取引する企業に対しては、回収までの時間が長くなりすぎないよう、入念に調整して資金ショートを防ぐようにします。
資金ショートが起きたときの対処法
万が一資金ショートが起きた後でも、以下の方法によって倒産のリスクを軽減できます。
資金ショートが起きた時の対処法
- 返済のリスケジュール検討
- 取引先への支払い遅延交渉
- 納税や保険料の支払い遅延相談
- 個人資産・遊休資産の売却
- 融資での資金調達
上記の方法を活用し、冷静に資金ショートへの対応を行うようにしましょう。
返済のリスケジュール検討
銀行などからの借入金の返済が難しくなった場合は、リスケジュールで返済額や返済期間の見直しを行います。リスケジュールの実施で資金繰りの悪化を軽減でき、資金ショートのリスクの回避が可能です。
ただ、一時的な返済額や期間の変更で終わらせないように、今後の返済計画をどう進めていくかを詳しく説明する必要があります。返済計画がないままリスケジュールを行っても、問題を先送りしただけで、再度資金ショートに陥る可能性があります。
リスケジュールをせずに返済日を過ぎた場合、遅延損害金が発生し、資金繰りがさらに悪化するおそれがあることを覚えておきましょう。
リスケジュールの期間は、半年から1年間が一般的です。リスケジュール期間中に経営の立て直しを行い、本来の返済条件に戻さなければなりません。
経営を立て直すには、役員報酬カットや従業員のリストラなど、企業にとって痛みをともなう手段を取ることもときには必要となります。
立て直しができず再度リスケジュールを行おうとしても条件は厳しく、最低でも経営改善計画の8割ほどを達成する必要があります。未達成の場合は、リスケジュールに応じてくれない場合もあるため注意が必要です。
取引先への支払い遅延交渉
取引先への支払いが期日までに難しい場合は、支払いの延長ができないか交渉してみることも手段のひとつです。注意しなければならない点は、交渉によって取引先との信頼関係に影響を及ぼす可能性があることも考慮しなければなりません。
支払いの延長を打診すると、取引先は資金繰りが悪化していると思い、取引量の減少や、取引の停止に発展する場合もあります。遅延交渉を検討するタイミングとしては、ほかの対策を講じたうえで、資金繰りができなかった場合の最終手段とした方がよいでしょう。
支払いの延長をお願いする際は、資金繰り表などの資料を使って支払いの目処がどのくらいついているのか、具体的な説明が必要です。取引先にとっても本来の予定に入金されないことで、資金ショートを招きかねない事態にもなります。
自社の状況説明と支払い計画の提示は、必ずすべきと考えましょう。支払い交渉を行う際は、取引停止など最悪の事態を想定して、新しい取引先を見つけておくことも重要です。
納税や保険料の支払い遅延相談
税金や保険料の支払いはかなりの負担になりがちですが、資金ショートが発生してしまうと支払いが厳しくなってしまいます。税金の支払いが滞ると会社に催促の通知が届き、応じない場合は、差し押さえに発展します。
税金や保険料の支払いが厳しいと感じた場合は、税務署や自治体の窓口で相談しましょう。窓口では資金繰りが厳しいことを説明し、そのうえで支払う意思はあることを伝えます。
会社の現状を正直に伝えることで、支払いの分割や一時的な保留などの対応が可能です。現状でどのくらいの金額が支払えるのか、支払いが可能な時期はいつなのかなど、計画を立てる必要があります。
相談のタイミングは、催促の通知が来てからではなく、資金繰りが厳しいと思った時点で相談しましょう。
個人資産・遊休資産の売却
個人資産や会社で所有している遊休資産を売却して、現金を確保する方法も検討しましょう。主な遊休資産は、以下のとおりです。
主な遊休資産
- ゴルフ会員権
- リゾート会員権
- 投資目的で購入した不動産
- 利用していない土地
- 利用していない機械設備
- 個人で所有している株式
遊休資産とは、事業用の資産として取得したものの、何らかの理由で利用や稼働を停止した資産を指します。
遊休資産は、固定資産税の対象なので、持っているだけでも費用がかかってしまいます。利益をもたらすものではないため、資金繰りが厳しくなった際は売却も検討しましょう。
個人資産や遊休資産を売却することで、手元に現金を確保できるだけでなく、固定資産税や管理費などのコスト削減にもつながります。売却しても問題のない資産かどうかを精査し、必要のない資産は積極的に売却しましょう。
融資での資金調達
金融機関から融資を受けて手元に資金を持っておくことで、資金ショートのリスクが軽減できます。融資を受ける際は、資金が不足している理由を詳しく説明しなければなりません。担保にできる資産を持っている場合は、融資を受けられるでしょう。
注意すべき点は、資金繰りが厳しい状況で融資を受ける場合、審査の通過は厳しいことを考慮しなければなりません。審査に通ったとしても、資金が調達できるまでに時間を要するため、融資がおりるまでの間に資金ショートに陥る可能性もあります。
融資を受ける前に、自社で抱えている在庫の売却や売掛金の回収を早めるなどの対応が先決です。現金を調達するために、自社でできることをせずに融資を行うのは問題の先延ばしに過ぎず、結局資金ショートに陥ってしまう場合があるので注意が必要です。
安易な資金調達を利用しない
資金調達をする際に安易な方法を用いても、すぐに資金ショートに陥る危険性があります。ここでは、以下の資金調達方法について紹介します。
注意ポイント
- ファクタリングの利用
- 手形割引の利用
- ビジネスローンの利用
資金調達がしやすい分、取引先との信頼関係に関わることもあるため、利用すべきか慎重に検討する必要があります。
※「ファクタリング」は一種のドーピングのようなものです。できる限り使用しない事をお勧めします。ファクタリングを使用する前に、ファイナンスアイに相談ください。何かしらの解決策を御提案します。
ファクタリングの利用
資金が不足している状況で銀行の融資を受ける場合、審査を通過しても資金の調達までに時間がかかります。できるだけ早く手元に資金を増やしたい場合、ファクタリングの利用が可能です。
ファクタリングとは、売掛金をファクタリング業者に売却し、手数料を差し引いた分の現金を受け取る手段です。法律上は債権の売買契約にあたり、ファクタリングの利用によって、売掛金を本来の受取日前に回収できます。
ファクタリングには、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの2種類があります。2社間ファクタリングは、利用者と業者との間で契約を進める方法で、取引先にファクタリングの利用が知られない点が特徴です。
取引先に売掛金を売却する事実が知られない一方、取引先から売掛金を回収した後は、業者に手数料を支払う必要があります。さらに、手数料が高めに設定されている点に注意が必要です。
3社間ファクタリングは、取引先も交えてファクタリング契約を行う方法です。この場合、取引先にも売掛金を売却することが知られるため、資金繰りが悪化していることが知られます。そのため、今後の取引に影響を及ぼす可能性があることを考慮しましょう。
取引先がファクタリング契約に応じない場合、利用者にとっては資金繰りが厳しい状況が知られるだけになる可能性もあります。しかし、取引先を交えて契約できるため、ファクタリング業者としては回収しやすいことから、手数料は安く設定されています。
金融機関と比べて現金化は早いものの、契約には審査が必要なため、契約後すぐに現金が手に入るわけではありません。書類の用意や審査などに時間を要するため、事前に入金はいつになるのか確認する必要があります。
手形割引の利用
資金調達をする場合、手形割引を利用する手段もあります。手形割引とは、企業が保有している約束手形を支払い、期日までに金融機関や業者に買い取ってもらい、現金を調達する方法です。
本来、手形は期日が来るまで換金できません。しかし、手形割引の利用で、手数料が差し引かれても現金を受け取れるため、早急に資金調達をしたい人に適しています。
手形割引を利用する際に発生する手数料は、手形手数料と呼ばれ、金融機関や手形割引業者によって割引料は異なります。手形割引の手数料は以下のとおりです。
- 銀行:2%
- 信用金庫:2.5〜4.5%
- 手形割引専門業社:2.5〜15%
売却をして現金を調達する点においては、ファクタリングと似ていますが、手形割引の場合は償還請求権が発生します。
償還請求権とは、手形が不渡りになった場合に、銀行や業者が利用者に対して回収した手形を請求できる権利です。請求された利用者は、手形金額に利息を加えた分を支払わなければなりません。ファクタリングは償還請求権がないため、支払いが発生しません。
ビジネスローンの利用
ビジネスローンとは、事業者が利用できるローンのことです。法人の契約者と個人事業主が利用でき、借入金は設備投資や取引先への支払いなど、事業に関する資金に活用できます。
ビジネスローンは、銀行での融資や公的融資と比べても審査にかかる時間が短く、1週間から10日の融資が可能です。さらに、ノンバンク系のビジネスローンは、最短で即日融資が可能なケースもあります。
ビジネスローンは、無担保・無保障での借り入れが可能な点もメリットのひとつです。しかし、法人の場合は代表者を連帯保証人とする必要があるため、注意が必要です。
ビジネスローンは総量規制の対象外です。総量規制は年収の3分の1以上は借り入れができませんが、ビジネスローンの場合審査に通ると、3分の1以上の借り入れができます。
利用する際の注意点は、ビジネスローンの利用歴があると、金融機関などから融資を受ける際に不利になる可能性があります。金融機関や公的機関で融資を行う可能性がある場合、ビジネスローンの利用は慎重に行いましょう。
ファクタリング、手形割引、ビジネスローンのいずれの資金調達方法にも言えることですが、安易に利用したことで資金ショートを防ぐどころか、更なる悪化を招いてしまう可能性があることは留意しておきましょう。
まとめ
今回は、資金ショートに陥る原因や予防策などを紹介しました。資金ショートとは、手持ちの現金がなくなり、事業の継続に必要な資金が足りなくなってしまうことです。
資金ショートに陥った場合、銀行への借入金の返済や従業員への給料が支払えなくなり、事業を続けられなくなってしまいます。資金ショートが発生してしまう原因は、売上の減少や取引先からの入金遅延、倒産などが挙げられます。
これから事業を始める人や、事業を始めて間もない人は、創業融資の活用がおすすめです。創業融資は銀行や日本政策金融公庫などで利用でき、無担保・無保証人で利用できる点が魅力です。
企業経営をするうえで大切なことは、資金ショートを起こさないように資金運用を行うことです。しかし、資金計画を立てるのが難しい場合、プロへの依頼も検討しましょう。
ファイナンスアイでは、資金調達コンサルタントが、プロの視点から創業に向けての融資や、創業後の資金調達の支援を行います。
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記事・コンテンツの監修者
株式会社ファイナンスアイ(経済産業省M&A支援機関登録済)
代表取締役 田中 琢朗(たなか たくろう)
大手の金融機関・上場企業の財務部門責任者などを歴任し、2014年にファイナンスアイを創業。業界歴30年・創業10年のベテラン。中小企業・個人事業主・起業家と一緒に、現場で泥臭く汗をかいて靴をすり減らして財務を軸に経営者を支援し続け、のべ10,000人以上の圧倒的な実戦経験を持つ。ノウハウを「ファイナンスアイ式メソッド」として確立。中小にはびこる悪質なM&Aの被害をなくすために、M&A支援も本格化。売手・買手のいずれの立場からも真のM&Aを提供。現在も毎月150件以上の新規相談に対応し、毎週セミナーも開催中。日本経済のために今日も邁進しています。